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ふらり旅

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ふらりと旅した時の一瞬を、切り取って綴っています。
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#詩

ふらり旅#6(島根)

塩素の匂いがした。 備え付けのシャワーで髪を洗おうと、蛇口をひねった。勢いよく飛び出してきた水は、肌に痛みを残し床に向かって流れ落ちていった。 桶を床に置く「かこん」という軽快な音が、湯けむりで少し霞んだお風呂場全体に響き渡る。 真夜中近くの露天風呂は、あかりに照らされた湯気がその向こうに広がる闇によく映えて、別の世界のようだった。 吹き付ける風に連れられて、水面を滑るように進む湯気。 無色透明なお湯に、たっぷりと浸かる。不意に触れた肩が、いつもよりつるりとして

ふらり旅#3-1(京都)

4月28日 急に目が覚めた。 カーテンの向こうで、登り始めた朝日が輝いているのが布団の中に居てもぼんやりと確認できた。 日中は夏のような日差しに初夏を感じるが、やはり朝方はまだ寒いようで、首に巻いたストールとカーデガンの隙間から、冷たい空気が肌に触れた。 前日に慌てて詰め込んだバッグを連れて、私は旅にでた。 地元の小さな駅からでもキャリーバッグをひいて電車に乗る人が目につく。 世はゴールデンウィークの初日だった。 太陽が熱烈な視線を送る中、京都にて2つのお寺をみて回った。