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散文詩的な呟き

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日常の一コマを短い映像のように切り取っています。
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2020年1月の記事一覧

真夜中

どこか宙を漂っているかのように、ふわふわと浮く。 それでいて、頭には鈍く響き渡る鈴がつく。 軽いはずの身体が、ずんと引っ張られている。 重い夜を海月のように漂って、 重力など気づかないふりをして、 どこまでもどこまでも、落ちて行く。

静寂

目の前が揺れて ぐにゃりと曲がる 横になれば身体が じんわりと沈む どこまでも深く 落ちていく 光が暗闇に飲み込まれて 何も見えなくなって 何も聞こえなくなって ようやく吐き気は止まった

香水

小瓶がカラになった。 琥珀色の液体が、数年という時間をかけて空中へ消えた。 柔らかく甘いあの香りはすでに私のものとなり、そして彼の香りだ。 手渡されたあの日には、こうなることなどまるで見えてはいなかったのに。 私の人生から手を離した彼が、香りの奥に漂う。