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退去 #15

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怒涛の数日だった。旅行から帰ってきて、終わりの見えない引っ越し、待たされ続ける手続き関係、ピカピカに晴れた卒業式、大学最後の朝までの飲み会。そしてやっと退去の日が今日。引っ越し間に合って本当に良かった。

四年間生活したものたちをダンボールに詰めていく作業はなかなか楽しいものだ。まるで大学生の思い出たちを整理していく、そんな気分になる。

ひとりさみしい夜を彩ってくれたピンク色のキャンドル、一週間で挫折したギター、友達とノリで買った使ったことのないピコピコハンマー、なんとなくとっておいた日々言葉を連ねたノート。新居に持っていくには思い出のものたちが多すぎて、迷った挙句必要最低限のものを持っていくことにした。

すっからかんになんにもなくなった部屋は思ったより声が響く。四年前、入居した日の自分とは違う自分が今ここにいる。全く知らない土地で不安だったけれど、今となっては離れることが惜しいほどの思い出と友達と静岡の好きなところがいっぱいできた。

ここからの社会人生活、何十年とつづくと思うと少し嫌なような、それでもわくわくするような。ほどほどに頑張ろう、と何万回も閉めてきた部屋のドアを最後にそーっと閉じた。

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