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ムギと王さま、天国を出ていく


こんにちは、ももはです。

今日はエリナー・ファージョン作『ムギと王さま』『天国を出ていく』についてのおはなしです👑🪽



『ムギと王さま』と『天国を出ていく』


岩波少年文庫082
『ムギと王さま 本の小べや1』
岩波少年文庫083
『天国を出ていく 本の小べや2』

作 ファージョン
訳 石井桃子

岩波書店、2001年出版



児童文学を学ぶわたしが卒業論文の題材として選んだ作品は、石井桃子さんの『ノンちゃん雲に乗る』です。


今日無事に卒業論文を提出できたということで、石井桃子さんのお気に入りの作家であったファージョンの『ムギと王さま』と『天国を出ていく』の記録をつけてみます。


あらすじ

『ムギと王さま』には表題作にもなった「ムギと王さま」をはじめとする14編が、『天国を出ていく』には13編が収められています。


旧版には一冊に11編の短編が収められていましたが、2001年の文庫の刷新により全27編が二冊に分けられ出版されました。


ここでは「ムギ王さま」のあらすじをご紹介します。

村にウィリーという名の少年がいました。
ウィリーは校長先生の息子で天才児でしたが、10歳になると好きだった本も全く読まなくなり、めったに口もきかなくなりました。ですが、一度なにかの拍子口を開くと、とめどなく話し続けます。

数年後、村を訪れた女の子が青年に成長したウィリーと出会いました。するとウィリーはエジプトの王とムギの話を語り始めます……。


物語のカケラ

1編、2編と読み進めてまず、美しい物語のカケラの魅力にとりつかれました。


これはわたしの感覚的なお話なので、なかなか言葉に表しにくいですが、短いお話の中心となるモチーフの一つひとつがとにかく美しいのです。


恋人同士の太陽と月、金魚、ラブ・レター、レモン色の子犬にハチミツ色の子ネコ、おいしく煮たくだもの……。


単に美しいものだけを選んで書かれたおはなしなら、きっと、ごてごてでくどい陳腐なおはなしになっていたと思います。


太陽も月も、生きものも、わたしたちの身の回りにいつもある存在です。


しかしそれらが「この世の素敵なもの」として無造作に箱の中に詰め込まれ、作者のファージョンによって選び出されたことにより、不思議な魅力を放っているような気がします。


そんなカケラとともに健気で無垢で愛らしい子どもたちが描かれることで、物語が踊るように動きだします。



電車のなかで読み始めたのですが、次の駅で降りなければいけないのに、しおりを挟んでページを閉じるのが惜しくて、ぎりぎり席を立つことができませんでした。


こんなにうれしい気持ちになれる本との出会いはひさしぶりです!


名作と出版の問題

残念ながらこの二冊は書店で購入することはできないと思います。


特に、『天国を出ていく』は岩波の販売サイトでも売り切れになっていて、手に入れるのが難しい本になりつつあります。


先に『ムギと王さま』を読み、「これは後編も買わなくては!」と意気込んで探したのですが、正規品として各書店やネットショップでは取り扱いがなく、「新品」と書かれていたものをAmazonで購入しました。


新品だったのかもしれませんが、ずいぶん長い間忘れ去られていたのかカバーは黄ばんでいました。(正規品よりもかなり高値で購入したからちょっとショック💸)

電子書籍版は簡単に手に入るようです↓




全七冊のファージョン作品集もぜひ手元に置いておきたいのですが、絶版になっていて、中古のものを買うしかないです。


全集は高価ですし、ネットだと状態がわからないだけにかなりのギャンブルでなかなか購入には踏み切れませんが、いつかきっと本棚に揃えたいです。


本国イギリスでは「イギリスのアンデルセン」とも呼ばれ、ファージョンの名を冠した文学賞もあるようですが、遠く離れた日本では忘れ去られていく作家になっていくのかもしれません。


でもきっと、ぽつりぽつりといる愛読者たちがいる限り、物語の灯火は消えないはずです。


全集は近所の図書館にもあるみたいなので、時間がある学生のうちに少しずつ読み進めてみようと思います。



今日のおはなしはここまで。

また次の作品でお会いしましょう。


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