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俳句と暮らす


今回は小川軽舟さんの「俳句と暮らす」。


この方、なんとサラリーマンと俳人の二足のわらじなんです。
新卒で入社した銀行でずっと働かれているそう。

神野 紗希さんの句集を数年前に読んだ際、漠然と「俳句って良いな。」と思っていました。

年月を経てまた俳句に興味が湧き、この著書の俳句の入門書を読んだときに、小川軽舟さんの俳句がいくつか出てきました。



小川軽舟さんの「俳句と暮らす」の中では、7つの章に分かれて、日々の生活の中で生まれた句が紹介されています。

1.飯を作る

2.会社で働く

3.妻に会う

4.散歩をする

5.酒を飲む

6.病気で死ぬ

7.芭蕉も暮らす



例えば、「会社で働く」の章で紹介された次の句。

・冬薔薇や 賞与劣りし 一詩人 (草間 時彦)

昭和29年作の句。

祖父に名門中学の校長、父に鎌倉市長を持つ徳彦は、高校生の時に胸を病み退学したまま終戦を迎えた。31歳でやっと製薬会社の三共に勤めるサラリーマンになったが、略歴に「学歴なく、病歴多し」と自嘲気味に書いてあるから、会社での地位もおおよそ想像がつく。

同僚に比べて自分の評価が劣っているという事実が賞与の金額として突きつけられる。
サラリーマンとしては劣るかもしれないが、自分はサラリーマンが全てではないことが冬薔薇に込められている。

冬薔薇のつつましくも気高い姿は、時彦の矜持そのものである。



特に好きだったのが「病気で死ぬ」の章。

・おい癌め 酌みかはさうぜ 秋の酒(江国 滋)

小説家の江國香織のお父さんで、エッセイストとして人気だったそう。
その傍ら、俳句も相当の腕だったのだとか。
このままのタイトルの著書もあるようです



食道癌を発症し、闘病する様子が綴られているようです。


・残寒や この俺が 俺が癌

・三枚に おろされてゐる さむさかな


これも江国滋の句で、一句目が癌を告知された時のショックをストレートに詠んだもの、二句目が手術を受けた印象を表現したもの。


・約束の 寒の土筆(つくし)を 煮て下さい(川端 茅舎)


結核で亡くなった茅舎が、亡くなった年(昭和16年)に詠んだもの。
残り僅かな時間の中で、夫人に対しての親しみ、素直な甘えが切なく表されています。



会社での処遇、身近な人間関係、病気、介護、子育て・・・・・

日々精一杯やっていても、大人には消化出来ない出来事が次から次へと降りかかりますよね😢



「なぜ自分がこんな目に・・・?」

「この人は信用していたのに、こんな言葉をかけられるなんて・・・」

「これだけやったのに、もっと報われても良いじゃないか・・・」



見方によっては悲劇も喜劇になりうるのに、疲れが溜まっていると状況判断すら難しくなります。
取るに足らない言葉や出来事を何ヶ月も引きずったりして。


俳句に限らずですが、「これをネタにしてやろう」というストレスの逃し場所を用意しておくことは、ままならない日常を乗り越えていく支えになるのかな、と。

私にはまだ「言葉」が足りない。

30歳を迎えて、状況を言語化する為の「言葉」をより多く獲得したい、と改めて決意しました👊



最後に、この本の中で1番気に入った俳句を。


・死ぬときは 箸置くように 草の花(小川 軽舟)



ご飯を食べ終えて「ごちそうさま」と箸を置くように、自分が生きてきたこの世に「ごちそうさま」とささやかに感謝しながら死んでいく。

草の花のようにささやかな人生であっても、満ち足りた気持ちで終えられるように。



おしまい


読んでいただきありがとうございます🌸







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