バスクのチーズケーキ

朝起きてベランダで伸びをする。芋を洗いリンゴを切ってメイクをする。コーヒー。朝ごはん。いつもと同じ朝。

ただ1つだけ違ったことは、今日、先月受けた入試の結果が出るってことだった。それすら友達にいわれるまで忘れていた。マヌケである。

一次試験通過者が載るサイトを開いて、自分のだと思われる受験番号を見つけたとき世界が止まった。大げさではなく本当に。最近始まった工事の音とか、教室の男子の喋り声、友達の「おめでとう」という言葉でさえも耳に入らなかった。

思い返せば私の成功体験は、勉強に限定しなくとも中学一年になる春休みで終わっているように思われる。中学受験で所謂成功を勝ち取って以来、無 だった。「おめでとう」に返す言葉も、「私、ダメだった〜」と言う友達に返す言葉も忘れてしまって「ありがとう。〇〇ちゃんのぶんまで二次試験頑張ってくるよ」としか言えなかった。

幼いときから抱いていた夢にやっと指先が触れた。まだ『合格』を得たわけではないけどそれでもやはり触れている。

今年に入って模試の成績が上がってきて、勉強をしている意味がわかった。勉強を楽しく思った。昨日より今日、今日より明日、自分が賢くなるように毎日を過ごしてきた。でも模試の判定でどんなにいい判定を見ても、親や先生に成長したねと言われても、鏡の前で私は賢くなってると自分に言い聞かせても、どこかで「これはただの運なんじゃないか。実際の試験ではボロボロのままなんじゃないか。」と思う『自分』がいた。そんな『自分』をコントロールできない日もあった。

その『自分』が今ものすごく喜んでいる。心のどこかで嬉しくてソワソワしてる『自分』がいる。

そんな『自分』にチーズケーキを買ってあげた。昔食べたとき甘ったるくて甘ったるくて、『自分』を満足させるために買ったのに、自分まで気分が悪くなって泣きそうになったチーズケーキ。

とても美味しかった。思わず頬が緩むような。

「まだ終わってないよ。これからが勝負。」と『自分』に言い聞かせながら。