L.Durey 《Le printemps au fond de la mer》

やっとヴェルディとの戦い(いつか述)が終わったので、再開します。

デュレ(1888-1979)
19のときにドビュッシーの《ペレアストメリザンテ》をみて作曲家を目指し始めたので、ほかの5人と違って音楽への開花は遅い。ピアノとか和声とかは先生に習ってたけど、作曲と指揮は自力で身につけてる。(ロシア…!!!)
すぐにサティに見出されて、6人組の前身である「新しい若者のためのグループ」に名を連ねる。
そのあと6人組になるんだけど、割とすぐサヨナラ。6人組でつくった《エッフェル塔の花嫁花婿》も完成の直前でまさかの離脱!なんなんや…。
と思ったら、後年人民音楽連盟に加入してのちに代表者にまで上り詰める。なのでわりとレジスタンス思想的な作品もでてくるように。そういう作曲家たちのリーダーになったりもする。
作曲始めた頃くらいはドビュッシーの影響がすごかったけど、そのあと、1914年にシェーンベルクを知ることで作風は一転、そこから自分の作風が確立されていくようになる。声楽が入ってる作品を好んでて成熟期にもたーくさん作られてる。
後年にはアマチュアの合唱団のための作品だったりアレンジがたくさん。(やっぱり政治色は強い)
6人組のなかでもわりと庶民寄り、みたいな一生なのでした。だから合わなかったのかもかも?

そして音楽はというと。

https://music.apple.com/jp/album/le-printemps-au-fond-de-la-mer-op-34/444047742?i=444047757

ききやすい!ききやすいね〜。ディズニーのよう。

最初、雰囲気はいいけどなにしてるのかぜんぜーーんわからなくて、もやもやだったのですが。
歌詞みたらね、あーー、なるほど。みたいな。
もうまるで音で描く絵画。すごいイメージつく。フランスの《魔王》みたいな。描写的な音型がたくさん見つかるので、「はい、じゃあこの曲から思いつく絵を描いてください〜」って言われたら80%くらいがおんなじ絵を描きそうなくらい。
シューベルトと違うのはやっぱり色彩感ですかね。《魔王》は物語があってその進行に音型も一役買っているわけですが、《海の底の春》では歌詞の情景に色を載せていく感じがある。そういう意味では印象派の流れにあるといえるのかな?
でもそう言い切るにはだいぶデフォルメされているかもしれない…。

あとデュレさん、まじで音源がみつからんとです。


以下に歌詞を載せます。

e fond de la mer a ses saisons.
Comme sur la terre, le printemps est une des plus belles.
Le corail bourgeonne et les éponges respirent l'eau bleue à pleins poumons.
Une forêt de cerfs rouges écoute un bruit d'hélice.
Il arrive de très haut dans les cieux de la mer.
Quelquefois, un aeronaute tombe des cieux de la mer.
Il tombe lentement et se roule dans le sable.
Les fleurs dorment debout et il y en a une foule qui disent adieu.
Les poissons manchots se posent dessus.
Ils donnent de gros baisers à la mer.
À cause de l'éclairage et du décor on se croirait souvent chez le photographe.
Un panache de globules gazouille dans le coin.
Il s'échappe du petit robinet qui change l'eau salée.1
C’est le printemps au fond de la mer.

海底にも四季があり、地上同様最高に美しいのは、やはり春。
珊瑚は蕾をほころばせ、肺いっぱい海綿は真っ青な水を吸いこむ。
赤鹿の住む森が、海の空、高いあたりに鳴っている、プロペラを聞きつける。
時として、海のその空から落ちる飛行船。ゆうゆうと落ちて来て砂にころが
る。
花たちは立ったまま眠り、おおぜいが別れの挨拶を交わしている。
手棒の魚は無い腕を敷いて眠り、口いっぱい、接吻を海としている。
光線と背景のせいか、写真館にいるような気持ちに時々なる。
片すみに泡の噴射がもくもくと出ているが、海水の入れ替え作業の栓の由。
堀口大學訳

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