死ねなかった。

自殺未遂の未遂をした。

未遂と呼ぶには余りにもお粗末すぎたので、その未遂と呼ぶことにする。
なんだか死にたくなっちゃって、あー死のう、という感覚で、コードをまた首にかけた。けれども結びが甘くて結局床に座ってしまった。また首を吊るのには失敗した。

過呼吸が再発した。数日前にも、今夜にも。最近元気だったのは、きっと躁だから。そしてたぶんまた鬱がくる。その前兆かのように違和感と過呼吸が続く。

今自分が死んだら、ラインを続けている推しや、好きな人が、心配するかもしれない。会おうと約束している人が、会えなくて心配するかもしれない。悲しむ人が、いるのかもしれない。そう思うことが死ぬことを止める。そう思ってしまうことが、また死への恐怖を生む。そう考えることが、もう少しだけ生きようか、迷わせてくれる。

死ぬのはある意味簡単だ。用意さえできて仕舞えば、一瞬だ。その用意が、まだうまくできないらしい。何回もつけたコードの跡が、首に残っている。覚悟のなさが、手首に残っている。簡単なことができない自分が嫌になる。けれども、簡単で難しい、それをできなくてよかったと思う瞬間もあるのかもしれない。

死ねなかった証の、生きている証の、跡。手首の無数の傷。首に残ったコードでくぼんだ線。そこにそっと手を当てて、まだ生きている、と言い聞かせる。鏡で見て、あのときの自分を優しくなでる。他人からすれば醜い傷跡、気持ち悪いもの。それでも、わたしにとっては大切な傷跡。今を生き抜くための跡。どうかそれを、わたしだけは肯定してあげて。

自殺未遂の未遂をした。
傷跡がまたひとつ増えた。生きている証。死にたかった日の思い出。死ねなかった自分。大切な人がいること。まだ息をしている。まだ、生きている。

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