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もう好きでも、なんでもない。

7月22日で、別れてから一年が経つ。
元恋人と出会ったのは、三年前の7月6日のことだった。

6月30日にkoboreのライブがあった。恋人になるきっかけだったバンドのひとつ。「隣にいる人を大切にしろよ」だったっけ、赳さんの言葉。
それも今はもう過去のこと。あれからkoboreは新しいアルバムを出したし、わたしたちはひとつずつ歳をとった。きっかけのもうひとつだったハンブレも、アルバムやシングルを出したし、大きいところでいくつもライブをしている。彼はわたしの好きだった土地を離れ、他の誰かを思いながら生活している。

お金がないからといってライブは控えるのにグッズをたくさん買っちゃうところはたぶん前から変わらない。遅刻する癖はなおらないしバスもだいたいギリギリだ。Twitterやライブのおかげで新しい交流が増えたし大好きな子もできた。

何度も行った回転寿司はあれから一度しか行っていない。関西はライブでしか行かなくなったし明石海峡大橋ももうずっと見ていない。教えてもらったバンドも思い出しちゃうからって最近は全然聞いていない。ライブも少しずつ行かなくなってしまった。

わたしは変わらないまま、変われないまま、必死で大学に通っている。
そっちはどう。


写真はずっと前に自分が写っている数十枚を残して消した。動画も消した。手紙も捨てた。バングルも捨てた。ノンホールピアスも捨てた。トーク履歴も消した。ラインは非表示にした。Twitterもインスタも見ていない。

あの日もらった香水は、まだ本棚においてある。扇子は夏になると使っている。Tevaのサンダルは愛用している。もらった一番好きだったバンドのTシャツは結局一度も着ていない。好きだった香水の名前は忘れない。

たくさん捨てたし、たくさん消した。まだ残っているものもある。一年経ったのに、まだ残っているって、執念感じる? そんなつもりはないよ。まだ香水を扇子に振りかける、たまにだけど。サンダルは使い勝手がいいから使っているだけ。香水は、あれ廃盤になっちゃってたんだね。好きだったよ。そういえば、一度だけ振りかけてくれたことがあったっけ。


でも、もう、たぶん好きでもなんでもない。

きっと思い出になっていくだけだ。死んでしまった人が、そうであるように。そう、わたしの中で元恋人はいなくなったのだ。これから先、思い出が増えることもないのだから。

確かに好きだった、過去形。好きあっていた、美化。今でも一緒に過ごしたことは鮮明に思い出せる。けれど、どんな顔だったっけ、どんな声だったっけ、どんな匂いだったっけ、どんな。
永遠に溶けない綿菓子がそこにあるように、思い出そうとすると遠く感じる。

忘れることは、できないだろう。人間は忘れることのできる生き物だけれど、同時に覚えていられてしまう生き物だから。少しずつ、思い出の箱の中に閉まっていくのだろう。大事に大事に。


koboreの曲、やっぱりいいよね。2nd LINEでライブ見たの覚えてる。カラオケで歌ってたの覚えてる。動画もわざわざさ。

ヨルノカタスミ
幸せ
スーパーソニック
涙のあと
おやすみ
GOLD

なんで曲に思い出が付き纏うんだろうね。

赳さんが、ライブで言ってたよ。「もう聞いても何も思い出さない」って。
わたしは、その時ほんの少しだけ思い出してしまったけれどね。
そうなれた? なれたら、よかったね。


プレイリストの名前は変わらないまま
「こぼれないで」




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