見出し画像

SNSと誹謗中傷について知ったこと・考えたこと

先日のクローズアップ現代プラスのテーマは「ネットのひぼう中傷」だった。

膨大なデータと、実際に誹謗中傷をした人/された人へのインタビューを通し、なぜ誹謗中傷はなくならないのか、という問題に迫る内容。

色々知ったり考えたりしたので、備忘録として残しておこうと思う。

なぜ人は誹謗中傷してしまうのか

例の事件で実際に誹謗中傷した人はインタビューでこう語った。「ドラマ内で彼女は芸人になりたいというルームメイトに対し『人生なめてる』と言った。それを観て自分の人生も否定された気がして腹が立った。また『その言動は間違っている』と言いたかった。変な正義感があった」。つまり誹謗中傷の根源は「怒り」と「正義感」である。インタビューを受け専門家の山口真一氏はそう述べた。

自分だけが正しいと思い込み、それにそぐわないものに腹を立てたり正そうとしたりするところから誹謗中傷は始まる。

私は人を馬鹿にする態度が嫌いだ。以前そのような記事を書いた。それはその向こうに「自分こそ正しい」という考えが透けて見えるからである。そうした態度は誹謗中傷のタネになりうると考えている。

もちろん人は自分が正しいと思って生きているし、SNSの発言もそれに裏打ちされたものである。それは当たり前だ。ただ発信する前に、実際の敵、もしくは仮想敵を作ってそれを「言い負かそう」「正そう」とする気持ちがどこかにないか、一度考えてみることが誹謗中傷をなくすことにつながるのではと思った。

人はネガティブな方にひっぱられるということ

SNS上ではネガティブ・攻撃的な発言をするユーザーほどアクティブになるということ。人はポジティブよりネガティブな方に引きずられてしまうということ。それゆえ攻撃された人は、自分の周りは敵ばかりだと思ってしまうこと。番組ではそれらが事実として報道された。

実際、自殺した女子プロレスラーの彼女に対する誹謗中傷ツイートのうち14%は同じ人が複数回していたものだったという。誹謗中傷の数が多いと、それだけ敵も多いと思い込んでしまうのだ。

これらが一個人の見解ではなく、データに基づく事実として述べられたことは大きいと思った。誹謗中傷されて傷つくのは当たり前。された人の心が弱いからではないのだ。このことを知っているだけで少しは心が楽になるかもしれない。

負の感情を利用したエンタメやビジネス

この事件には、人間がネガティブな方にひっぱられる習性を利用するビジネスやエンタメが当たり前になりつつあるという背景もある。

今やテレビもSNSに左右される。トレンドに入るためには、多くの人につぶやいてもらわないといけない。そこで「SNS上ではネガティブ・攻撃的な発言をするユーザーほどアクティブになる」という特性を利用する。

「こいつなら叩いてもいい」と観客に思わせる演出をし、攻撃的なツイートを生み出させる。強い言葉は良くも悪くも人を引きつける。ツイッターでも人をバカにしたり過激な発言をする人ほどフォロワーが多かったり変なシンパがいたりする。そうやって攻撃的なツイートは連鎖していく。

そのような手法がテレビという大きなメディアで取られている。それゆえ「強い言葉=正しい言葉」という図式が世間に浸透しているのではないかと私は感じる。

誹謗中傷に言い返したら「煽り耐性がない」とバカにされ、悲しんだら「SNSなんてやめたらいい」と慰められる。そんなSNSの雰囲気はこれからもリアルの世界に広がり続けるのだろうかと思うと悲しくなる。

想像力をはたらかせる

私はツイッターでニュースキャスターをフォローしている。それをみていると、ただの日常ツイートにも誹謗中傷や批判や皮肉がリプでついていることが多々あり驚く。例えばこんなリプもあった。

オーバーシュート、クラスター、エビデンス、アラートなど横文字発言、表記を報道は改めるべき。

そのような表記を使っているのは制作者の意図であるし、必ずしも報道が主導で使い始めたわけではないだろう。このような、それはキャスターに言っても仕方ないのでは?というようなものもわりと多い。SNSの普及した現在は、そんな発言をキャスターが直接受け取れてしまう。

今回の件も、この例と似たようなものだと私は思っている。物事の背景(この件でいうと、テレビの中の彼女は虚像だということ)を想像せずに感情的になりあらぬ方向へ怒りをぶつける。

文章でなく画像で、画像でなく動画で。また文章も動画もより短く。人の思考はより感覚的になってきている。それとこういった物事の背景を想像せず目についた人に不満をぶつけることは、なんらかの因果関係があるのではないかと個人的に考えている。

話がそれてしまったが、想像力(と少しの知識)を持つことも誹謗中傷をなくすことにつながるのではと思った。

おまけ

欠かさず観ているyoutubeチャンネルがある。それは「ロザンの楽屋」という、ロザンのお二人がシンプルにトークをする(最近は歌ったりコントしたりもしている)番組だ。

なおこの番組でも誹謗中傷の問題が取り上げられている。

時事問題に対する意見そのものも面白いのだが、それ以上にお二人の意見の交わし方が大変参考になる。反対の意見でも「これは反対の意見やな」「そうやなあ~」「それはなんでそう思うん?」と、組み伏せず・(咄嗟に)言い返さずの姿勢に、世界にはちゃんとこんな人がいるのだと安心する。

コロナでタイムラインが殺伐としはじめ、滅入ってしまったときもこのチャンネルを観ることで冷静になれた。SNS疲れに効く。

二人のような物事の受け取り方をできる人が増えたら誹謗中傷も無くなるのになと思う。

読んでいただきありがとうございました。サポートしてくださると本づくりが一歩進みます。