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しあわせの種類がふえただけ

先々週、子どもを同居人に預けて、授乳と授乳の合間をぬって梅田へ出かけた。

阪急電車に乗って座席に座る。ベロアのコートの上を、毛羽立ったセーターの上を、影が滑っていく。スマホを覗き込むピンクの唇をした女の子たち。小さな子どもはいなかった。

それは子どもが生まれる前の世界だった。

私は世界を二つ持ったんだと思った。二つは次第に溶け合って分からなくなるんだろうと思う。それはいいことだけど、今のこの感じも嫌いじゃない。
二つの世界を行き来するこの感覚は、今しか得られない。

忘れないようにしようと、私は今日もエディタを開く。変わっていく梅田の街をいく。こんななんでもない風景が、有難いことだった。だからといって子どもができたことは不幸なことではない。しあわせの種類が増えたのだ。「大阪梅田」の駅名表示をみながらそう思った。

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