見出し画像

届くことのない手紙


お元気ですか。

私はそれなりに過ごしています。

2年前、私の人生で初めての彼氏になった貴方と出会ったのは大学だったね。
当時貴方には2年半付き合っている年上の彼女さんがいたし、私と貴方は歳が2個離れていたから、まさか付き合うだなんて思っていなかったよ。

だからかもしれない。
顔もスタイルも合理的な考え方も”手に届かない存在だからこそ”の輝きを放っていたから、途端にそれが自分ごとになったとき、私はそれを処理できなかった。

憧れの先輩とすることと恋人がすることでは明らかな違いがあった。

それにすぐ馴染めなかった私は、恋人らしい行動を求める貴方の思うようにはいられなかった。
キスもその先も、違和感をこえて気持ち悪さを感じてすらいる自分がいた。

友だちに戻ろうと言われたとき、私は電話口ではひどく動揺していたけど、実際のところほっとしていた。それでも、もう【先輩と後輩】という人間同士としての繋がりすら保てないのは悲しかった。人間でなく、男女として関係を築く”一線”を超えることの残酷さにひどく傷つけられた。



あれから2年が経ったね。

私は当時の貴方と同じ社会人1年目になって、2年前に貴方がこぼしていたことに共感したりしなかったりしています。

研修は楽だけど早く現場に出て働きたいと言っていた貴方。
都会は人が多いから嫌いだと言っていた貴方。

大学生で田舎者でまともに恋愛をしてこなかった私は、とにかく貴方を大丈夫だよ、と励ますことしかできなかった。
そんな私は貴方からみたら「何も知らないくせに偉そうなことを言っている」ように見えただろうね。実際それは事実だったし。

でもそれが当時の私の精一杯だった。
2個違う歳をどうにか縮めたくて、いまもどうすれば当時の貴方を超えられるか挑戦する毎日です。めっちゃ未練あるみたいで嫌だけど(笑)

全部はじめてだったから仕方ないよ

これでも私も2年分は大人になったんだよ。
良くも悪くも。
貴方と別れてから色々な人に会って沢山傷ついたし傷つけた。世間的には疎まれるような遊び方をして、自分の価値を性に見出したときは毎日しにたくなった。

今はちょっと休憩して自己研鑽しようと思って、2年前の貴方を超えることを目標にしてる。
いつまで経っても、歳の差は埋められないし、経験の差も知見も価値観も越えられないような気がしているから、それを打破したいんだ。
へりくだってバカにされるのを許して、自分の価値を地に貶めるような年上コンプレックスはもう嫌なんだ。

あと、私は貴方以来、恋人という存在ができなかったよ。
それは多分貴方の存在のせい、というよりは私のセクシャリティのせいじゃないかって最近思う。

私は男女問わず簡単に人を好きになったり遠ざけたくなったりする。
性的なことを嫌悪してはいないけど、生理的に受け付ける人受け付けない人がいる。
下心で近づく人間関係を楽しめる。その反面、長期的な心の繋がりを求め始めてしまう。

きっと、いまの時代ならセクシャリティに名前をつけて分類して仲間を見つけることもできるんだろうけど、敢えてそれをしたくない自分がいる。
個性と病は表裏一体な気がして。


…全然まとまらないけど、いまの私の世界はこんな感じでまわっているよ。

貴方はこの2年間何があった?
誰かと恋をした?
大切な人はできた?

私は23歳、貴方は25歳になる今年、
2年前に交わした電話の約束を間に受けていいか最近よく考えます。

ただ、どちらにせよ2ヶ月後の8月までに私は、貴方の前で「いまの私はこんなにも強くなったんだ。1人で生き生きと過ごしているんだ」と胸を張れるようにいまを生きるよ。






なんて思っても無駄だって知ってる。
いまの私は思い出をドーピングしてるんだから。


思い出をドーピングしても
心は痩せ細っていく
いっそ血を流すくらいに
カミソリみたいに生きようか
でも本当はわかっている
愛にはなにも勝てやしない

日日是好日/藤巻亮太

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?