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友だち以上の彼らと

年が明けると、目まぐるしく時は過ぎ去ってしまって、
色々追われているうちに残すは卒業というところまで来てしまった。

自宅で親戚を迎えて正月のお祝い。
運転を褒められて気分上々の初詣。
帰省が明けてひたすらバイト卒論バイト卒論。
つかの間の誕生日パーティー。
気が付けば2月スタート。
なくなく卒論提出しぶしぶ物件探し。
どたばた内見めらめら卒論発表会。


そんなこんなでくるくると日々を渡り歩いては
友人と思想を交わし、
先輩から教えを乞い、
先生から叱咤激励され、
理不尽なお客に陰で涙し、
ブラック研究室にいる友人を鼓舞し、
むしゃくしゃする日々を暴食で洗い流してみたり、
新しい音楽に心躍らせてみたりして、
結局私は私なのだからと自分を肯定した


それらがひと段落した今日。


午前中は雨だったから、オンラインで会議に参加し、
発表にじっと耳を傾けてはあふれ出る質問をしたい気持ちと独り闘った。
結局、知的好奇心が抑えられず、質問をしてただ満足して、
お昼に友人Aと気まぐれ大食い同好会を開催した。

久々にAと2人で出掛け、いつしかのように他愛もない会話を交わす時間が心地よかった。
でも、一線を引いたり引かなかったりのAにはほとほと困惑してしまい、私ばかり周りを気にしているようで、自分にAへの好意が残っているのではと不安に駆られた。

私とAは、確かにお互いいちばん長い時間共にした。それぞれ長続きしない恋愛を味わった。言いたいことを言い合い、ぶつかりあって傷つけあった反面で、沢山の美味しいものも美しい景色も知識も共有した。
でも私は、グループで仲良くするために特別な感情を一生持つことができない。

その後、学校まで送ってもらい、Aと別れて研究室へ向かった。
研究室に着くとM2の先輩がいて、午後急に現れた私に驚きの表情だった。

学校に着いた私は、4月からの新生活に備えてライフライン開栓の手続きを各所に連絡しなければならず、せっかく学生室でゆっくりしようも電話が何度もかかってくるものだから、何度も部屋を出て手続きを進めた。
「令和だというのに何が代行だ電話契約だ」と独り毒づきながら部屋へ戻り、しばらくしてM2の先輩と談笑することにした。

来月大学院を修了する彼女の今後。
博士に進むことも考えながらも、民間で働くことを決めたときのこと。
この数年間、我が子のように育てた研究をどこで手放すか。
ライフステージへの不安と希望。
この研究室の今後と私の同期のこと。
彼女が先生と築いてきた信頼関係と代償に負った受け皿的状況。
知的好奇心だけではうまくいかない研究と先生への尊敬。
男女の友情と大人の人間関係の難しさ。

にこにこと私に微笑みながら語りかける裏で、彼女はどんな苦労を重ね、ときに楽しみ、この2年間を送ってきたのだろう。
卒業目前のいまになって自分の知的好奇心がみなぎってしまい、卒論研究を諦めきれなくなってきている私を肯定してくれた彼女はきっと素敵な研究者になるのだろう。
私はもう自分の敷いた道を進むしかなくて、残された時間を友人たちのために、そして未来の自分が後悔しないために使わなければならないのに。
いまの友人関係が、研究内容が、毎日通ったこの学び舎が愛おしくて、もう卒業しなければならないのだと思うと耐え難い苦しみを感じてしまう。

これまで小・中・高と、友人たちと道が分かれる度に、自分の価値観を更新しては、これまでの仲を疎遠という言葉で一新させてしまう私は、これから何を頼りに生きていけばいいのか。

私は何かを間違えてしまったのだろうか。


先日、そんな悩みを友人に打ち明けたとき、小中学生のときからのグループで未だ関わりがあるという彼は、この年になって生まれたグループ内での不和に苦しみながらも、私にこう言ってくれた。

「じゃあ俺がそれ壊してやるよ。俺は変わらないから。」


グループで行動していると、自分に与えられた役割がわからなくなって、ひとり消えてしまいたいと願ってしまう癖がある。
その癖して、しばらくすると寂しくなってひとり写真を眺めて回顧する癖もある。

何癖難癖ある私だけど、あと少なくとも数年は友人たちと今の距離感を保っていたい。
そして彼らと定期的に語り合って、互いを鼓舞し合えたら最高。

そんな思いを巡らせながら、男女の垣根を越えてもはや好意すら向けられない、否、向けてはならないような関係性になりつつ彼らと、あとちょっとだけ、私は友だち以上ごっこをしたい。


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