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ジャイアンツ

阿佐ヶ谷スパイダース「ジャイアンツ」観劇。
20231124

【あらすじ】 ”私”は歩いた。“あいつ”が暮らした街をあてどなく。この街はかつて私も暮らした街。やがて歩き疲れた私の目の前に立っていたあいつ。あいつは私を、家族が住む家へと誘う。餃子とビール、それからわさび漬けを振る舞われた私は、翌日お礼を持って再訪した。するとその部屋はすっかり違う人間のものになっていた。混乱する私のもとに目玉探偵が囁く。「あなた、目玉を失くしましたね」。私は“あいつ”を探す奇妙な冒険へと誘われていく。(公式サイトより)

初めての阿佐ヶ谷スパイダース劇団公演観劇。
作品の世界観に迷い、溶け込むような感覚。ふいに出会う言葉たちに胸を突かれ、「自分」を見つめる。「あの日」を思い出す。
「自分」「あの日」それは、どれも曖昧で不確かなものかもしれない。見失ったもの、忘れてしまったものがあったとしても、私は私でありたい。世界を見つめる私の目は、私のものでありたい。

親子の物語をタイムリープしながら描いていく。過去を辿りながら実際とは違う出来事が起きる中で、私(あいつの父)のあの日、伝えきれなかった、知らなかった、気づかなかった思いを感じた。
彼のやるせない思いがまるでくれなずむ夕暮れのようで、少し感傷的な気持ちになった。

タイムリープを繰り返す不可解な世界が、曖昧で不確かな人間模様と相俟って目眩のようだった。
三面のパネルがステージに奥行きを持たせたり、壁や塔に連想させたりと自由自在なステージング。
パネルの間を通る動きから、人物たちが世界に迷い込むような、戸惑うような心情も感じられて素晴らしかった。



村岡希美さん演じる隣の大島のセリフ「普通」「どこにでもいる?私は、ここにいるのに?」に大きく頷いた。私は、私しかいない。他のどこでもないここにいる私が私。
そして、これは全ての人がそうなんだって思う。かけがえのない大切な「私」大きく一括りになんてしたくないし、されたくない。

伊達暁さん演じる目玉探偵の「名乗るたびに自分であることを確かめる」(ニュアンス)もすごくわかる。
たくさんの人の意見や思い、感情に触れる度に私はすごく感情移入して思想思考さえも揺らいでしまうから、私は、どう考えるのか、どう感じているのかと自分と向き合う時間をつくるようにしてる。
社会的な立場を考えたり、他者を思う気持ちが大きくなりすぎることで、自分を見失いそうになるけど、私は、私だということを忘れたくないな。

李千鶴さん演じる緑秘書の「何かわからない曖昧なものになるより、必要としてくれる誰かのためにいたい」も切なくなった。
自分が何のために存在しているのか不安になる気持ち、わかる。移ろいゆく彼女の姿を見てもそう感じた。
自分を必要としてくれる人は、自分に自信と安心をくれる。私自身にも思うけど、私の大切な人たちが、自分を大切な存在だと思えたらいいな。誰かのためではなくて、自分のために。自分を愛してほしい。

この緑秘書のセリフとあいつのセリフに通ずるものを感じる。
「捨てるだけで、何も生み出していない。電気になりたい。」
あいつは、ゴミと自分を重ねるように見ていた。
ゴミを出してしまうことに罪悪感を感じていたけど、焼却されるゴミを見て救われる。ゴミは、燃えることで電気になるから。自分も電気になりたいと想った。

自分という存在がわからなくなったんだと思う。人生に迷い、不安さえも「ゴミ」のように感じていたのだろうか。

富岡晃一郎さん演じる隣の遠藤は、あいつが住んでた部屋に今住んでる人。いつもスプラトゥーンをしている。
声も動きも本当に美しかったです…!笑いの部分も美しくて好きな演者さんだな、と思いました。
遠藤の表情から淡白そうなイメージを持ちつつ、感情が溢れるような瞬間、お隣さん同士のやりとりを見ると遠藤の情に触れたような気持ちに。内見のシーン、その後を想像して切なくなりました。

遠藤は、私、大島とタイムリープを共にする中で、いつも手にしていたスプラトゥーンを失ってしまう。
しかし、自分自身では何を失ったのか、何を忘れてしまったのかわからない。思い出せないということは、そんなに大切なものでは無い。断捨離だと言われるが、「失ったことが苦しい」。
何かわからなくてもこの苦しみは、それ程までに自分にとって大きな存在だったのだと思う。
大切な何かを失う苦しさがよくわかるので、遠藤に感情移入してとても苦しかった。

本当に大切なもの、自分にとって影響を与えるもの、自分を安心させてくれるもの、自分自身のこと、様々あるけど、それは気づかぬうちに失ってしまうものかもしれない。
それは、大きな、巨きなもの。
見失わないように、惑わされないように、遠く離れて行く前に、自分の目で見つめていたい。


不思議な世界の中にも人間愛を深く感じる作品でした。自分の解釈にも自信がないけど、私が受け取ったことですᝰ✍🏻


バックステージツアー参加させていただきました。
富岡さん担当回…!うれしい!
トークも秀逸で楽しい時間でした。ステージに上がった時、イス座って客席見てもいいよ〜って時に「ちょこん!」って言ってユラユラ左右に揺れてるの可愛すぎてにこにこ…♡
個人的にご挨拶もさせていただけて、幸せでした〜、、!

シアタートップスの奈落を覗いて大興奮…!高さ1.5メートルで中腰で移動したり小道具を出し入れしてるんだとか。奈落に繋がる階段は、蓋で閉じていて(超アナログ)、できるだけ奈落から出入りしてるように見せたくなくて、穴を小さく、可動する蓋の裏は黒塗りになっていました。

ステージ上のイスに座らせていただいたり(ふかふかでした)、小道具を見せていただいたり!ビールも全部手作りで、ASAGAYAってラベルでした。細やかなところまで作られていて、愛を感じました!

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