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デカローグ プログラムE


デカローグ プログラムE観劇。

とある団地の住人たちの物語。人物の心情が揺らぎ変化していく様や本質にあるものが垣間見え、人間の愛しさを感じる。
観劇中の緊張感、苦しみが終演後には不思議と晴れやかに。

9話「ある孤独に関する物語」

40歳の外科医ロマンは、同業の友人から性的不能になったと診断され、若い妻であるハンカと別れるべきではないかとほのめかされる。夫婦は診断結果を話し合い、お互いに別れる気はないことを確認するが、実はハンカは若い大学生マリウシュと浮気をしていた.....。

ハラハラするシーンが多くて気が気じゃなかった…!心中ジェットコースターのようだったけど、人物たちの表情一つ一つから気持ちが伝わってきて切なく苦しい時間でした。愛、幸せを考えた。

人それぞれ幸せの形は違うのに、自分のものさしで測ってしまう。
自分の心が求めるもの、満たしてくれるものに代わりなんてない。
多くはいらない、少しだけでいいのに。誠実に向き合い信じたいのに、それが簡単にはいかない。折り合いをつけようとするけど難しくて、相手を想うほど、すれ違う心がさみしい。このさみしさも愛なのにな。

万里紗さん演じるハンカと伊達さん演じるロマンの夫婦がすごく素敵だった。
片想い同士の夫婦。
性的不能になったことで、全てが終わるかのようなロマン。愛があるから大丈夫。それが全てではないとハンカ。
こうでなければハンカをもっと幸せにできるのに。自分でなければ。というようなロマンの気持ち、わかる気がする。それでもいいと言われても、自分がそれじゃダメなんだろう。どこか不幸を感じてしまう気がして。

「他の人を探したらいい、若くて元気な人を」
⇧地雷ワード!悲観的になって自ら捨てられにいくのやめな?これで別れても可哀想な俺なんでしょ?可哀想なのどっちだよ〜。この言葉を言われた時のハンカの気持ちを考えるだけで涙出る。

けど!すでに大学生と浮気してるハンカーーーッ(泣いちゃう)(公演概要とか何も見ずに観劇したからビックリした)

「もっと強く抱き締めて」と言うように、どこか不安で寂しい人なんだと思う。
浮気相手のマリシュウと一緒にいても、浮気から帰宅後も心苦しそうにするハンカの顔が忘れられない。旦那が埋めてくれない分、他の人で埋めようとしても、ハンカが愛しているのは、ロマン。ロマンにしか満たせないよ、と思った。

ロマンの病院に入院してる女の子もそうで、お母さんは娘に全てをあげたいと思っているけど、本人が欲しいものは、少しだけ。何もかも手にすることが幸せとは限らなくて、一人一人違う幸せの形があるよね。

笠井日向さんの歌声が美しくてもっと聴いてたかった〜。お上手でビックリしました。客席もわぁ…!って雰囲気になってたよね。素敵でした。

ハンカの表情からさみしさ、哀しみ、焦り、苦しみ色々なものを感じたけど、その根っこにあるのは、ロマンへの想いだと思う。
いつも心の中にいるような気がして、後ろめたさもあるんだろうけど、ハンカはいつまでもロマンに恋をしてるんだろうなって。

ロマンもハンカを愛してる。愛してるからこそ、別れを考えたし、信じたり疑ったりするんだと思う。
夫婦になっても、人と人が両想いはありえなくて片想いなんだなあ、と。

ロマンが、ハンカの浮気に気づいてアレコレ嗅ぎ回っている姿、ハラハラしたけど、どうしても笑ってしまうというか、悲しいけど愛しく感じてしまう。
ハンカがマリシュウに別れを告げた時、隠れてシクシクしてて悲しいのに客席から笑い起きてるの何とも…!(みんなの好きな伊達さんだったよね、わかります🫶)

ロマンにもハンカにも幸せでいてほしいから、ハンカがマリシュウに別れを告げてくれてホッとしたのもつかの間、ハンカを追いかけてきちゃうマリシュウ……!
別れを告げられても「結婚しよー!」とか、愛の絵葉書送っちゃうとことか、愛の勢いがすごい(笑)

距離を置こうとなったけど、ハンカとマリシュウが一緒に出掛けてると思ったロマンの激走🚲
性的不能になった時も車で暴走してたけど、どちらも心臓バクバクして怖かった。事故になって2階からぶら下がった状態の自転車は、かなりショッキングでした……。
(車の時は、プロジェクトマッピングの効果で豪雨の中走ってる感じがすごかったな)


10話「ある希望に関する物語」

パンクロックグループのリーダーである弟のアルトウルは、コンサート会場にやってきた兄イェジから、疎遠になっていた父が亡くなったことを告げられる。父のフラットを訪れた兄弟は、彼が膨大な切手コレクションを残していたことを知る。父のコレクションに計り知れない価値があることを知った兄弟は次第にコレクションへの執着を募らせ、偏執的になっていく.....。

突然始まるパンクロックのステージ!ビックリした〜!

疎遠になっていた父の遺品である切手コレクションに価値があることを知り、切手を守り、一層価値のあるものにしようとコレクションを揃えようとする。

切手に価値を感じていなかったのに、価値のあるものだと知って、家族、仲間、生活、自分の身体を手放してまで切手を手に入れようとする。
ギャンブルとかもだけど、そのもの自体に価値を感じているというより、この状況に興奮してるだけなんだよね。人間の愚かさ、滑稽さに自戒した。

最終的に事件に巻き込まれ、殆ど何も無い状態に。何もかも失ってしまい、切手が盗まれたのは、兄、弟はそれぞれ相手を疑う。
けど、疑う気持ちを反省し、自ら切手を集め始め、立ち直る姿に光を感じる。

9話も10話も笑えないのに笑ってしまうし、悲しく苦しいのに、人間、人生が愛しく感じられた。


あと、10話は、特に「!!!」ってなるシーン多い。
犬さん!ビックリした、可愛かったな〜🐕
けど、あの犬さんの出演はどういう意図が…?と思ったのも正直な感想……!


デカローグ、他の回も観てるのに感想書いてない(今気づいた)
この舞台セットが本当に面白くて好き!奥行も高さもあって、シーンごとに色んな部屋になる。演者の動きで、部屋の中が見えてくるのも良い。

最前列〜2列目の席で観たけど、プロジェクトマッピングも多く取り入れてたから後方席でも観たかったなあ。


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