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再会②

あれは高校生の時に出会った。数学の証明とか教材やらでごった返した部屋の掃除より気持ちを整える方が断然難しかったあの頃。それもそのはずで、その当時の私には大切な恋人がいたのにその人の存在が1番大事だったからだ。この状況を誰にも相談できず、そして恋人と別れる決断もできずにいた。

そんな中、その人から誕生日に一冊の本と名前のイニシャルが入ったブックカバーをもらった。誕生日プレゼントなんて初めてだった。本は橋本紡さん著書の「流れ星が消えないうちに」であり、初めて知る著者の本であることとその人から本をプレゼントされたことで嬉しくてたまらなかった。ただひとつだけ、人からもらうものを自分が好むとは限らないと知っていた私は大丈夫かなって不安だった。けれどそんな不安なんてあったかなと思うぐらい好きな作品だった。もらったブックカバーをかけてお守りのようにどんなときも持ち歩くようになり、これまで以上にその人の存在が大きくなっていった。

私の誕生日が過ぎた後、もらった本の物語と似たような作品を探すようになった。その人の誕生日に送る本として。その人の誕生日は少し先だったので私はあえてネットで検索かけずに自分の足でみつけることにした。地元には何店舗か本屋さんはあったけど、大きなお店に行くには、電車で大きな街に出かけるか自転車で何十分もかけて行くしかなかったが、それでも見つけたい、渡したい気持ちでいっぱいだった。本の後ろに書いてあるあらすじを読む日々。そのおかげで色んな著者や小説を知ることができた。そしてやっと見つけたのが「君が降る日」だった。

本のタイトルになっている「君が降る日」は交通事故で恋人を亡くした女性の話だ。交通事故で亡くなった時に車を運転していた恋人の友人と哀しみを分かち合い、最後にはそれぞれ新しい場所へと歩み出すまでの物語だ。プレゼントでもらった本も事故で恋人を亡くした女性の話であり、テーマが同じならばきっと喜んでくれると思っていた。しかし結局、その本はその人に渡さないままになってしまったのだ。

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