【短編小説】 冬、邂逅
冬が電車に乗って行った。
ぼくは「ああ、行ってしまったな」と思ったので、駅のホームにジャケットを脱ぎ捨てた。
ぼくの乗る予定の電車がホームに入ってくる。
冬を連れ去った電車が走っていった方向から。
降りてくる人の群れに逆らって、ぼくは電車に乗り込んだ。
座った席から、ぼくのジャケットがホームの駅に座っているのが見えた。
「じゃあね。」とそいつが言うので、ぼくも手を振った。
扉が閉まり、ゆっくりと電車が動き出す。
がたんがたん。
ぼくはこれからこの電車がどこへ行くのか確認し