介護が嫌なんじゃない、お前が嫌いなんだ。

ある身体障害者の住宅介護バイトを1か月ほどやっている。今のところ介護という仕事は嫌いじゃない。だが、この男が嫌いだ。正確には彼の一面が嫌いだ。彼は昔の思い出に囚われている。暇ができると郷愁に浸って湿っぽい空気を出し始める。もう毎日のように思い出して擦りまくっているから、一切の感動もしていない(たぶん)。そうやってもう絶対に戻らない、死んでしまった過去ばかりずっと見て、自分の寿命が尽きるのを待っている。生きる屍である。だから嫌いだ。

彼がこのノスタルジックモードなときに介護をすると、彼が彼自身の時間やエネルギーを捨て続けているのに、僕も同じくそうさせられているように感じる。例えるならば、どうせ食わない、捨てると分かっている人のためにご飯を作っている気持ちになる(こんな経験はないけど)。そして僕はこの感情がすごい嫌だ。なんでこんな奴のために、と思ってノシノシとイライラがつのる。僕が介護の仕事を選んだ目的はどんな気持ちになるのか知ることだったので、こんな気持ちになるのか・・・、と同時に、早く死んでしまえよ、と思っている。介護をお金のためにしている人ならば、とんでもなく虚しくなると思う。

もちろん彼がノスタルジックモードじゃないときもある。そのときは早く死んでしまえ、なんて思わないし、介護も苦ではない。むしろ洗髪をしたときなんかは徐々に頭皮マッサージみたいになって、相手が少し気持ちよさそうにしていたので、中年のおやじとこんなこと・・、とも思ったが少し嬉しかった。同じ相手でも、相手の状態によって平気だったり嫌だったりするのだ。僕には新しい発見だった。介護という仕事が楽しいかどうか面白いかどうかは、かなり相手に依存する。なんでこんな奴のために、となればクソ仕事だが、こいつ最高だ、と思えるなら良い仕事になる。

僕は働き始めたばかりで、まだやれていない介護の動き? などもあるので引き続きこの仕事を続けていく。

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