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日記

早起きできたので青空文庫で横光利一の「純粋小説論」を読んだ。純文学と通俗小説を兼ね備えた純粋小説(なんやねんそれ)が文藝復興の一手となるんでないかというはなし。わたしが通っていた大学のコースの、一期生の卒業制作講評会でライトノベルは小説なのか小説じゃないのか議論が勃発したのだけれど(それは二〇一一年二月のことで、いまのコースはライトノベルに対してすごく寛容になったとおもう)、これは小説でこれは小説じゃないとか、これはよくてこれはよくないとか、いつの時代もやりあっていたのだなあとおもった。そういうのは、ほんとうは個人の好みの問題で済ませればいいのだけれども、全体の波として捉えたときに日本の文芸の質が下がってみえるのが嫌というひとも中にはいて、意見が対立してしまうこともあるよね、しょうがないよねともおもう。人間(登場人物)にリアリティを与えるのは行為と思考の中間にある部分だ、というところがすごくよかった。たぶん横光利一もじぶんで書いておいてちゃんとはわかっていないとおもうのだけれど、感覚でわかる気がするし、横光利一が書いた人間がみんな人間くさいから説得力がある。もともと目当てにしていた人称のはなしも、それを新しい人称として制定するかはともかく、一人称小説(主人公視点・主人公語り手)でもその一人称を観察しているなんらかの眼差しがあるよねというはなしが面白かった。ここまでツイッターのフリートで書いて、noteの日記で書けばよかったかもしれないとおもってnoteにコピーペーストをして、文章をすこし直した。ひさしぶりに日記を書こうとおもったので書きはじめる。
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ひと月まえに佳日があったことに、いまだに驚いたり、嬉しくおもったりする。詳細に書き残したいきもちと、胸のなかにずっととどめておきたいきもちとのあいだで揺れていて、とりあえずいまのところはどうするとも決めずにいる。記憶は使い古してしまう、と書いたのはたぶんじぶんで、いつか懐かしむこともおもいだすこともなくなってしまうかもしれないから、せめていまだけはすぐにおもいだせるような鮮やかさで憶えておきたい。佳日のために一年半くらいずっと伸ばしつづけていた髪は切って縮毛矯正をあてて、毛並みがよくて嬉しいのでよく触る。電話ちゅうに困るとあたまを触る癖があることにじぶんでも気づいていて、たぶん、三月に退職された上司も気づいていたのだろうなとおもっていたことをなんとなくおもいだした。わたしがそれをやると、代わろうか、と目で言われているような気がしていた。
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しいたけ占いに、疲れやすいよ、と言われていた六月は、六月一日を迎えた途端になにもかもにやる気が出せなくなってほとんど五月病みたいに過ごしている。なんか虚無、と感じたら本をひらくようにしていたところ、今月は七冊読んだらしい。宿久理花子さんの『からだにやさしい』という詩集でだいぶ元気になったので、そろそろ動きだせそう。そういえば自宅の近所にあったコンビニでありブティックも兼ね備えていたドラッグストアが潰れて、コンビニがわはごはん屋さんになったのだけれど、ブティックがわもついに工事がはじまった。水道だかガスだかわからないけれどなにかしらの設備の台のようなものに、乗らない ×のらない×のらない× のらない、と書かれたテープが貼ってあって、よっぽど乗ってほしくないらしかった。
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出町座さんで『アンモナイトの目覚め』を観た。愛は世界を救うかもしれないけれど、愛に超えられないものがあるとすれば、そのひとの領域のようなもの、なのだとおもう。すきなひととすべてを共有したいひともいればすきなひとにさえも触れられたくない部分があるひともいて、そのあたりの兼ねあいというか、融通というか、難しいよねとおもう。映画がおわったあとはコロッケを買って、鳶による強奪がこわいので橋のしたで隠れてたべた。ジャズの演奏をやっていた。たべおわったあとは音楽を聴きながら鴨川沿いを五条大橋まで歩いた。鳥がたくさんいた。このあいだ友人もおなじところを歩いたと言っていて、そのときは川床が出ていなかっただろうからまた機会があれば見にきてほしいなとおもう。二月の末に夫の祖母の葬儀をした会館のまえで映画『RENT』の「Finale B」が流れ、バス停のまえではメレンゲの「バスを待っている僕ら」が流れて、ウォークマンのシャッフル再生がやりすぎだった。学生時代、ひとに対する苦手意識がうんと高まってしまったときに買ったウォークマンはバッテリーがへたってきているらしく充電がすぐになくなってしまう。
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なよなよと過ごすなかに、やってやるぞ、のきもちもあり、この一歩を踏みだせばきっと夏。かき氷の似合う夏がいい。ほんとうは味の違いなんてない、カラフルでぬるいシロップをかけて、すぐ溶けて水になってしまうような、安いかき氷がたべたい。

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