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7 Days to End with Youをプレイする②

ことばは誰かに伝えるためだけではなく、己が思考するためにも存在している。そうおもうと、なにも知らない状態から一体いつの間に物を考えられるようになるくらいにことばを獲得していたのだろう。わたしには物心がついたころの記憶が明確にあって、そのときにおもっていたのは「きょうは起きている日」「きょうもまた起きている日」「起きている日の間隔が狭まってきている」で、つまりすでにいろいろなことばを知っている状態だった。わたしのあたまのなかにはいつでもことばがあって、とめどなくなにかをおもいつづけている。

いちからことばを得る感覚に対する想像の難さをおもいながら、2023年3月20日にNintendo SWITCH版の「7 Days to End with You」の2周めをプレイしました。1周目のプレイについてはこちらをご覧ください。

※注意
ネタばれを含みますので、プレイする予定のあるかたはまたの機会にお読みいただけましたら嬉しいです。おそらく前知識のないまっさらな状態で、じぶんなりにプレイするのがいちばん面白いです。また、プレイ済みのかたはこのひとはこう解釈したのだなあと温かく見守ってくださると助かります。


2周めをプレイするまえに

1周めのプレイについて書きおえたあと、いくつか言及していなかった事柄があることに気がつきました。

①鏡
1階に鏡があるのですが、割れていて、主人公の姿がうまく映りません。プレイヤーに没入感を与えるために主人公を透明化しているともとれますが、もしや主人公はじぶんがおもっているとおりの姿をしていないのではないかという想像も掻きたてられます。“目の前の人”とまったくおなじ姿をしているとか、想定していた性別ではなかったとか、云々。(寝室の本棚に置かれている新聞に顔写真が載っているのですが、何度見ても主人公の顔なのか“目の前の人”の顔なのか忘れてしまう……。でも、主人公だとしたら“目の前の人”とかなり似ている気がします)

②タイトル画面
タイトル画面に描かれている“目の前の人”はなぜふたりで、左がわのひとは逆さをむいているのか。主人公と“目の前の人”は双子なのだろうか、と一瞬おもってみたり、さすがにそれはないかなあともおもってみたり、気になるイラストです。また、左手を出しているポーズは誰かに指輪をはめてもらうときの仕草、あるいは誰かが差し伸べた手をとるときの仕草なのかなと想像しています。タロットカードでいう逆位置ともとれるかもしれません。

2周めの感想

まず、オープニングの台詞がけっこうわかるようになっていて感動しました。やはりこのゲームは繰り返しプレイするのがよいようです。エンディングは1周めよりも“目の前の人”の台詞の量が減ったくらいでほぼ変わりませんでしたが、1周めでは起こらなかったできごとがあったのでストーリーとしてはかなり変化がありました。けっこうびっくりしました。

2周めで気づいたこと

①回想するのを忘れていた
言語リストのことばを選択するとそのことばが使われていた場面を回想するという機能があるのですが、最初に説明があるにも関わらずすっかり忘れていました。今回はしっかり使って、回想を見比べながらことばの意味を考えていきました。このことばは一度しか出てきていないから意味がとりづらいな・ということはまだ見ていない場面があるのかなという予測もたてられたのでとても便利でした。また、前回使いそびれていた色分け機能は夢で出てきたことば(=意味が確定できる)に使用して、これ以上意味を考えなおさなくてもいいという印にしました。これも便利でした。

②“目の前の人”がいないときにできること
1周めのプレイちゅうに引っかかっていたのが、“目の前の人”についてきてもらうかリビングにいてもらうかという選択肢があること。“目の前の人”の付き添いがなければ物を選択してもなにもできないからひとりになる必要はないのにどうして、とおもっていたのですが、そういえばひとつだけ「あげない/それ/駄目」みたいなことを言われる品があったのをおもいだして見にいってみたらビンゴでした。そして物語は一気に姿を変えます。今回はこの要素に気づいたおかげか、1周めでは出てこなかった場面に遭遇してとてもスリリングでした。

③カレンダーをめくる
寝室のカレンダーらしき表(しかし曜日や8、9、0の数字はない)の右下に紙がめくれているようなマークがあることに気がついて選択してみると、これも1周めでは見たことのないものが現れました。“目の前の人”に尋ねてみるとあまり教えたくはなさそうな素振りで、なんなのかはわからないまま。ただ、丸が7個あることと、日を追うごとに左の丸から順に横線が引かれていくことから推測すると、主人公の体調を示すものなのかなとおもいます。(数字といえば、1~8までは言語リストに載っているのですが、9と0はまだ出てきていません。いつか出てくるのかしら……)

2周めでも謎のままだったこと

1周めではわからず、2周めをやればわかるかなあとおもっていたのにわからないままだったことがいくつかありました。

①料理の材料がひとつ足りない?
リビングで大きな鍋を選択すると料理ができるのですが、何回やっても成功しないレシピがありました。それはなにか(現状の言語リストでは8の次に表示されていることば)を鍋に入れるというものなのですが、そのなにかにあたることばの意味がまだ解読できていません。そのうえ、表示されている材料はすべて解読できているので、そもそもそのなにかが材料として表示されていないのではないかと想像しています。考えられるのは暖炉の上に置いてある白い瓶なのですが、でもこの材料のことば、先述の気づいたこと②をいろいろとやったあとに“目の前の人”と話していると出てくることばでもあるので、たべもの関連のことばではなさそうだなあとおもっています。

②写真が破られている?
2周めをプレイしていてふと気になったのが、研究室・実験室らしき部屋にある写真。写っているのは神殿のような、神聖な雰囲気のある場所なのですが、よく見ると真ん中の部分しかなくて右と左が破られています。もしかしたらどこかに破られた右がわ・左がわの写真が隠されているのかもしれません。紙上のものを隠すなら紙のなかということで本のなかが怪しそうですが、先述の気づいたこと②を進めると調べられなくなるところに本が置いてあるので、次回プレイするときはそのあたりを注意深く調べていきたいとおもいます。

③植物を育てることの意味は?
植物を育てている部屋に行くと4種類の植物に水と肥料をあげることができるのですが、これはなにか意味があるのだろうかと不思議におもっています。先述の料理の材料が足りない点は植物を育て終えると解決する、ということも考えられなくもありません。ただ、料理もですが、無限にできてしまうので終わりがなさそう。水を肥料を与えるときの説明でこの場面くらいでしか出てこないことばがあるので、単にそのことばを習得するだけの場なのかもしれませんが気になる要素です。

2周めを終えての考察

①主人公と“目の前の人”の関係
これは1周めと変わらず、恋人関係(だった)とおもいます。そして奇妙なのが、気づいたこと②をいろいろとやるときに出てくる文言。主人公はオープニングの時点でなにやら負傷しているのですが、もしかして一度死んでいるのではないかとおもってしまいます。あるいは、主人公の記憶がないことをいいことに、主人公の名前と“目の前の人”の名前が入れ替わっている可能性も考えられます。(そういえば、恋人関係=男女というわけではないし、男性の一人称=ぼく・おれというわけでもないのですが、主人公の一人称がなにになっていたかを見るのを忘れていたなあとおもいました。恋人関係だったということを説明される箇所で一人称が出てきていたような気がするので次回はよく見てみます)

②この世界の状況
1周めでは新聞から判断して戦争がはじまった・現在戦争が行なわれていると解釈していたのですが、新聞に書かれていたことばの意味を習得してみると戦争は終わったのほうが正しいようです。この部分は、夢のなかで「戦争」にあたることばをおもいだしていることと、エンディング後に表示される「END」の下に書かれていることばが「終わり」にあたるはずなので、この解釈で合っているのではないかなあとおもいます。だとすると、主人公が家を出ようとしたときに強くとめられる理由はなんなのでしょうか。

③この家で行なわれていること
1周めの時点でなにか怪しい実験をやっている気がするとおもっていたのが、気づいたこと②のおかげでほぼ確信となりました。たぶん、“目の前の人”は主人公を救うための、理解ある医療の研究をしているわけではない。もっと倫理や禁忌に触れるような、非人道的なことが行なわれている気配が一気に強まりました。そして、主人公が夢のなかで「罪」ということばをおもいだすことから、記憶を失うまえは主人公が研究・実験にいそしんでいて、なにか恐ろしいことをしでかしたのではないかと想像しています。

④2周めで想像したストーリー(2周めでのできごとを織り交ぜています)
死者を蘇らせるという悪魔の実験を行なっていた主人公は、終戦後間もなく姿を消した。研究に対する罪の意識により身を投げたのだ。その死を悲しんだ主人公の恋人は実験室に残されていた蘇生方法を用いて主人公を生き返らせ、まだ眠りつづけている主人公とともに人里離れた家でひっそりと暮らす。
主人公は目をさますと記憶を失っており、“目の前の人”のことはおろかこのひとと話すための言語すら忘れてしまっている。主人公は“目の前の人”を頼り、言語を再習得しながら、日々悪化していく体調から己の寿命の短さに徐々に気がついていく。それまでにすべてをおもいだしたいと願った主人公は、あるとき“目の前の人”の目を盗んで実験室の棚の仕掛けを作動させる。すると棚が動きだし、血なまぐさいにおいとともに秘密の入り口が現れた。中は牢獄のようになっていて、壊れた剣や鎧とともに何者かの血痕が残っていた。
うまく話せるだけの言語をまだ習得しきれていない主人公はこの部屋がなんなのか尋ねることができないまま過ごす。しかしある夜、玄関の扉を叩く音がしたかとおもうと“目の前の人”に隠れるように命じられて一階の部屋にむかう。部屋の扉の隙間から玄関の様子を伺っていると、“目の前の人”は来客となにやら揉めている。かつて恋人だったという“目の前の人”を守るために主人公は部屋を飛びだす。来客はおもいのほかあっさりと引き下がり、“目の前の人”は主人公に感謝する。主人公は“目の前の人”を救うことができたのだと肌で感じたものの、なぜ来客と揉めたのか、なんの話をしていたのかはわからないままだった。
目がさめて7日めの朝、主人公は“目の前の人”にじぶんがあなたを愛しているということをことばで伝えようとしたがうまくいかず、“目の前の人”は主人公に最後の実験をすることを伝え、物語は幕をとじる。

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