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日記

大人になれない僕らよ、大丈夫だ。いくつになっても大人になった実感なんて得られない。ひとは、生まれたときからずっとそのひとであって/そのひとになって、かけがえのない、という語に当てはめられる。そう書いた一月、この続きがおもいだせない。
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年末に見た他人事のニュースが鮮度をずっと保ったまますぐそばまで近づいてきているけれど、目にみえないから実感がない。まだない未来に希望を見上げようとするこの感覚は叶わない片想いに似て、だからひとびとは怒ったり悲しんだりするんだろう。片想いは不健康だ、他者にじぶんの感情をゆだねてこころを乱され、不機嫌になっていく(ドラマの再放送がおわって午後二時/白い天井/なにもないまま午後三時/なにをしようがなにも変わらないのに)。数年前、ニューヨークに戻ることになった恩師に先輩が贈った詩の、〈これからは、晴れた日に「いい天気」とつぶやく人だけをフォローして、〉という一文のことをおもって、新しい仕事のために買った合成皮革のインヒールスニーカーが足になじんだことを喜ぶ平日です。長期休暇のたびにお手入れをして長く履いていこうと、じぶんのためだけのひそやかな未来を愛している。と書いた二月、あるいは三月、この続きがおもいだせない。
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谷崎由依『遠の眠りの』2/18読了
ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』3/13読了
千野帽子『物語は人生を救うのか』3/24読了
W・ゴールディング『蠅の王』4/21読了
そのうちお知らせあります。
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祈るように日々が過ぎ去っていくのを待っている。日常のほうの足が重たいといった感覚はずいぶんとひさしぶりで、前は震災のときで、けれどあのときはいつの間に立ち直っていたのだろう。そのわからなさがすこし怖いなとおもう。〈悲しいのは失うよりもいつの日かまた立ち上がること〉と言い聞かせる。悲しみは癒えることはありませんなんてもう二度と書かないと誓いながら、悲しみを通り過ぎていくことに怯えている。なんやろ、きょうはナイーブですね。時は燃えるように経過して、じりじりと痛みを残す。あのときは書けもしないのにあかるい小説を書こうとしていた。いまはうまく書けないながら瘡蓋を何度もめくってしまうような小説を書いている。
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四月はやりたいことの照準がうまくあわなくて、ICレコーダーにむかっておなじことを何度も話していた。今村夏子さんの『こちらあみ子』の壊れたトランシーバーのほうがまだ伝わる、ICレコーダーは声を留めるだけだ。話したいことなんてこれといってないのだけれど、たぶん、じぶんが話したいのではなくて、だれかのはなしを聞いていたいから話そうとするのだ。わたしではないあなたという世界がこんなに遠い。お元気ですか、春でしたね。夏が来てしまったらしい。秋になったら会いたいね。冬は寒いのでまた春に。
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「投げキッス飛ばず」
「今週のトレンド」
「届かない愛」
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別なことをして過ごして、目があえば笑うくらいの、ひとりひとりでいるわたしたちを許しあえる仲でよかったね。たぶん、おたがい、溶けるくらいにふたりでいるのはときどきでいい。ほろよいのクリームソーダ味にアイスをのせて食したらものの十分でなくなって、とても酔っ払った。美山行きたい。逆にひと多そう。ピクミンの実況見ててんけどピクミンめっちゃ密ちゃう? ふふ、せやな。友人とオンラインゲーム会をするのにやりはじめたオーバークック2はピクミン3の協力プレイみたいで、隙さえあれば夫の実家に遊びにいっていたことをおもいだした。たった二年まえまではそうしていたのに、もう遠いむかしのことだ。すこしだけ泣いた。

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