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日記

感情の沸騰がなかなかやまなくて暴れている。こんなふうにことばを使うこと、望んでいないよとおもいながら、料理ちゅうに油が跳ねたときみたいなちりちりとした火傷の痛みを覚悟して喋ってみたらこころに穴があいて、他者に見せないようにしている嫌なじぶんが漏れでてしまって、やっぱりなにも言うんじゃなかったと反省する。優しさや穏やかさだけがすべてではないとおもっているけれど、平静なこころでいるほうが快適に生きられるのは間違いなくて、だから、怒りの時間に溺れる必要も憶えておいてやる必要もない。そうわかっているのに、いまはどうも立ちどまってしまっている。
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『ペーパーマリオ オリガミキング』のストーリー1周めをクリアした。6000円もするゲームを1週間でやってしまうのはもったいないようにもおもえるけれど、続きが気になって手がとまらなかった。ペーパーマリオは収集系の細々とした要素をすべて埋めないとトゥルーエンドに辿りつかなくって、それをわかったうえで迎えたノーマルエンドを見ていたらやはり泣いてしまった。インテリジェントシステムズらしいキャラクターたちの口のわるさ・ギャグと寂しいシーンのギャップといったら、もう。プレイヤーキャラクターはあくまでもプレイヤーであって、だからはい/いいえ以外に台詞のないマリオの見つめる先にいてほしいひとがいない空白が、余計に胸を苦しくさせるのだった。一度でもなにかを違えると取り返しのつかないことの多い世界で、取り戻させてくれるペーパーマリオの世界はすごく幸せかもしれない。とはいえ、2周めクリアには時間がかかるからトゥルーエンドはまだ迎えられそうにない。
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「ほらほらほら、足の皮」
「足の皮とパンがおなじ視界に入ったときのきもちよ」
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兄の新居を訪問した。山積みにされた段ボールに囲まれてカラーボックスを組みたてている兄のすっかり禿げてしまったあたまを見て、このひとも大人なのだなあと実感する。じぶんが引っ越したときにも感じたけれど、空っぽの部屋は冷蔵庫を置くだけで家らしくなって生活が灯る。これから兄と会うのはお盆や年末年始くらいなのだなあと考えておもいだしたのは、母方の実家にうちの家族と叔父の家族が帰ってきたときの、大人数でわやわやと騒がしい光景だった。人間の一生は、繁栄は、衰退は、繰り返されていくのだろう。季節になると咲きだす花とおなじで。母は、そんな無理やり結婚せんでもええのに、とやれ婚活だやれお見合いだと出かける兄に対しておもっているけれど、兄はきっと先人たちの歩んだルートとして結婚と家族を求めている。
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「お昼どうする?」
「強力粉あるからピザつくれるで」
「材料揃ってるん?」
「チーズがない」
「はい終了」
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金井美恵子さんの『岸辺のない海』を読んでいる。現実と小説が交錯して、いまはどちらにいてなんのはなしをしているのかがわからなくなっていくけれど、どちらも小説なわけだからわからなくなることすら無駄なのかもしれなかった。金井さんの小説について話すのは勇気がいって、正しく読めていないのではないかと不安になる。それはきっと、金井さんのことばがどこまでも正確で、それ以上に確実な語をあてていくことが困難だからなのだとお風呂に浸かりながら考えた。
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入浴剤を入れて、ふたりでお風呂に入って、風呂あがりにはよく冷えたオロナミンCを飲んで、いい夜だね、と言ったら、せやね、と返事が返ってくる、とてもいい夜があった。それくらいのことをずっと大事に憶えていたい。
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室温の低さでおとづれる日々よ眩めく雨の種類聴きけり

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