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透明な日

目が覚めた。 おはよ。
見慣れた天井。
カーテンの隙間からの光がうるさい。
うつ伏せになって猫みたいに伸びをする。
6時前、いつもの朝。
中高の時に染み付いた朝練で起きる時間。
未だに勝手に目が覚めてしまう。
ぐ~っとお腹がなる。空腹だ。

バターもジャムも塗らずに
6枚切りの食パンを1枚
もっさもっさと頬張る。
特に感情はない。
少し前まではコーヒ豆を挽いていたのに、
最近はそれがめんどくさい。
水。味がないのが取り柄の水。
冷たくて干からびた身体に染み渡る水。

ほっぺたをこする。
手で触るとざらざらするくらいに
ひげが伸びている。
脱毛しようかと何度か思ったが、
じじいになってからひげを伸ばしてみたいという
思いを胸にとどまっている。
仕事の日は、朝ひげを剃る。
めんどくさいという感情が
無くなるほどには慣れた。
出かける予定のない日は、そんな髭も剃らない。
ずっとパジャマ。ちな裸足。

食器を洗う。
冬の水は指に刺さった。
左手の薬指と中指がぱっくりと割れている。
乾燥は敵。負け戦。絶対に勝てない。
第1次世界大戦。ジャイアントインパクト。
飢えを凌ぐかのごとく、
ハンドクリームを塗り、
日々を耐え忍ぶしかない。
痛々しい手が悲惨さを物語っている。

もうすぐ春。そんな戦争も終わる。 
ぶくぶくに服を着る季節から
好きな服を纏える季節になる。
見える景色も豊かになる。
だんだん暖かくなってきた。
ぱっくりの傷も治り始めるだろう。

そんなことを考えていたら、くしゃみ。
1はくしゅん、2はくしゅん、3はくしゅん。
はじまった。休む間もなくはじまった。
世の中のスギよ、駆逐されてくれ。
花粉は敵。負け戦。絶対に勝てない。
第2次世界大戦。セカンドインパクト。
飢えを凌ぐかのごとく、
目薬を何回もさし、
日々を耐え忍ぶしかない。
無限に出てくる鼻水が悲惨さを物語っている。

まだまだ春。
スギシーズン中に新たな敵がやってくる。
ヒノキ。スギの最凶の相棒。
日本中の空が黄色く変色し、
首から上の機能がほぼバカになる。
お皿と同じようにスポンジで、
両の目玉をくり抜いて洗えたら、
鼻から喉にかけて流水で洗い流せたら、
どんなに幸せなことだろう。

歯を磨く。
溜まってるLINEを返しながら、
使いもしないスタンプを手に入れるために
追加した公式アカウントをブロックしながら、
歯を磨く。
歯磨きは物心ついたときから好きだ。
多分小学生の時に定期検診で行ってた歯医者さんが、
歯磨き上手だねって言ってくれたからだと思う。
まったく単純だ。褒められるのが嫌いな訳がない。
歯医者さん様々おかげ様で虫歯は一本もない。
かれこれ十数年歯を磨いてきている。
もうプロと呼んでいい。
歯磨きプロフェッショナル。
口をゆすぐ。ついでにうがいする。
達人ならではの追加行動。
歯磨きエキスパート。


何を言ってんだ自分は。


今日は実は有給休暇。
特に予定がある訳ではない。
ただ仕事したくないだけ。
なにも予定がないっていうのは、
シンプルに幸せだ。
コンタクトを付ける必要がない。
靴下も履かなくていい。
いつもの土日休みとは別の
丸々1日 自由な日。
映画を見たり、
本を読んだり、
ラジオを聞いたり。
自分の好きなことをして
何も予定のない透明な日に色をつける日。
今日はこれから何をしよう。

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