虹のたもと
虹を見るとどうしようもなくうれしくなる。
うちの居間(というか)には東向きに腰窓があって、朝はそちらから日が当たる。少しずつ日が短くなってきている今の時期は、夕方あたりでもまだカーテンをひかずにいる。網入りなので外から覗かれることはない。
昨日は、夕飯のときにその窓がピンク色になっていた。ときどき雨が降る曇り空だったから、少しの夕焼けかなとおもってピンクの空を見たくて窓を開けたら虹がかかっていた。
久しぶりに見た虹がうれしかった。
虹は必ずダブルで出るというのを聞いたことがあって、光の角度や強さによっては見えないこともあるかもしれないけれどそれからは意識的にもう片方を探してしまう。この日も、薄っすらと外側にもう一筋のアーチが見えた。
ピンク色の空にかかる大きなアーチがきれいで、うれしくて、消えるまでずっと眺めていた。
9月11日だ。
2001年のこの日、私は愛知県にいて、理由は忘れたけれど有給を取って仕事を休んでいた。寮の部屋でテレビをつけていて、ワールドトレードセンターにアメリカン航空11便とユナイテッド航空175便の2機が突入する映像が流れ、それをぼんやり見ていた記憶がある。その時に自分がどう感じていたのかとか、なにを思ったのかとか、そういうことは忘れてしまった。テレビで流れている映像は、本当のことじゃないみたいにみえた。つまりすぐには現実だとおもえなかった。
ピンク色の窓が、呼んでくれたように感じた。窓を開けたら虹が出ていて、この日は9月11日だった。それはただの偶然かもしれないけれど、もしかしたら何か意味をもっているかもしれないな、などとおもった。
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