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結局、旧約聖書とは

まずはこちらの動画がとても分かりやすかったので参考までに
https://www.youtube.com/watch?v=ijFegXqy4kg

さて、いきなりこんな記事を書き始めたのにはわけがあります。
最近noteで閲覧しているあれやそれやの関係で、「イスラム」「宗教」「世界三大宗教」「イスラエル」「ユダヤ教」「キリスト教」のキーワードにかかる色々な記事をおすすめされています。

色んな人が、「私はこの宗教を調べた結果、こういう結論に至った!」系の記事を書いています。

そうだ!私も書こう!
というわけで定番(?)の正典である「聖書」について、冒頭で紹介した動画をまとめるという形で書いてみました。
 長くなりましたので、読むのは興味のあるテーマだけでも構いません。

1.旧約聖書の構成


 旧約聖書とはプロテスタントの使用する聖書の前半39巻分の事で、「モーセ5書/歴史書/詩歌/預言書」で構成されています。この分け方はキリスト教独自のもので、古代ユダヤ教の伝統では次の3つに分けられています。「トーラー(教え)/ネビイーム(預言者)/ケトビーム(諸書)」です。それぞれの頭文字をとって「タナク(TaNaK)」と呼びます。 プロテスタントで使用する旧約聖書と並びは違いますが、納められている書は同じです。
 

2.タナク
 

タナク(TaNaK)はそれぞれの書が相互参照する様に三部構成となっています。これは古代イスラエル人の書記や預言者と呼ばれる人たちが何世代にもわたって書物を受け継いできた中で、統一感をもったタナクという形で一つにまとめ上げられていきました。
 著者たちは「聖霊の導き」によってまとめたと記しています。タナクは神が人間の言葉を通して人に語りかけている書物です。紀元前2~3世紀ごろに完成したと言われています。ナザレのイエスもタナクについて言及しています。

⒊トーラー(教え)

 

舞台設定


トーラーは神がこの世界を創り祝福したところから始まります。神はこの世界を人間(アダム)に託し、人間には善と悪を見極める知恵がありました。しかし神への反逆者である蛇がこの人間を騙し、人間は命の源から切り離される事になりました。
 人間は祝福された園から追放され危険な荒野で死ぬ身となりました。その後人間は増え広がりますが、善悪の基準を自分で決めた事から事態は急速に悪化していきました。人間は暴力と抑圧の街を築き、そこはバビロンと呼ばれました。
 ここまでで聖書全体の基本的な枠組みと筋書が整います。神はご自身の創られた世界を愛し、人間を通して治めたかったのですが、この人間たちが問題になりました。人間は自滅の道を歩み続け、それを解決するには、蛇に屈しない新たな人間が必要となりました。神はその新たな1人の人を送ると約束します。彼は蛇の頭を踏み砕き、蛇は彼の踵に噛みつきます。
 

アブラハムの系図と契約


 この後は系図が始まり、1組の男女、アブラハムとサラに神の祝福が託されます。彼らは神が約束された新しい園のような場所を目指して街を去ります。こうしてアブラハムの一族の物語が始まります。アブラハムーイサクーヤコブの3代とヤコブの12人の息子たちの物語です。しかし、彼らも欠けだらけで破滅的な道を歩み、やがて神が約束された土地を追われ、エジプトへと追放されてしまいました。ですが、神は彼らに誠実であり続けました。アブラハムの一族を通して全ての人類を救うと約束し、この約束は契約と呼ばれました。

モーセとイスラエルの民

アブラハムの一族はエジプトに追放された後奴隷となりますが、成長もします。このエジプトでモーセが登場します。彼はトーラーの中のもう1人の重要人物です。神は彼をイスラエルを救う者とし、エジプトから民を導き出し、神の山まで連れてきて神と契約関係を結ぶ者として民を招きます。しかし、約束の地を目指してトーラーが進むにつれてイスラエルの民は次々に過ちを犯し、卓越した指導者(預言者/祭司/王)であるモーセも失敗します。この過ち(契約不履行)は民が約束の地に入った後も続き、モーセはイスラエルの堕落とそれに対する捕囚を予告しつつ、神はイスラエルを救うという希望を残します。こうしてモーセは死にますが、この後タナクをまとめた書記たちのコメントとして、モーセのような預言者はイスラエルに二度とおこらなかった(また現れたらいいのに…)と締めくくられます。

⒋ネビイーム(預言者)

構成

2つに分けられます。後の預言者の視点で書かれたイスラエルの物語である前預言書(ヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記)と未来への希望を記した後預言書です。

前預言書

前預言書はモーセの後継者であるヨシュアの話から始まります。ヨシュアの指導のもと、イスラエルの民は出だしは順調でしたが、やがて徐々に先祖達の辿った自滅の道に陥っていきます。それも先祖達よりも長く血にまみれた物語でした。しかし、一縷の望みもありました。神は新しい人間を通して人類を祝福してくださるという契約を改めて宣言しました。この新しい人間とはダビデの子孫として出る王です。ダビデやソロモンの物語はアブラハムのように神に信頼する一面もありましたが、長くは続かずやがてアブラハムの一族のように約束の地を追放され、バビロンに捕囚として連れて行かれます。しかし捕囚からの解放を示し後預言書に続きます。

後預言書

 後預言書は預言者たちの名前のついた3つの大預言書(長い)と12の小預言書(短い)で構成されています。これはアブラハムの3世代と12人の子供たちと繋がっていて、失敗の中に未来への希望が宿る物語を思い起こさせます。これらの預言書はトーラーと前預言書に相互参照する形でまとめられています。
 ここに出てくる預言者の役割は、モーセのように、堕落したイスラエルの民に対して非難と警告をする事でした。警告はバビロン捕囚という形で実現しますが、預言者は未来への希望も伝えます。
 未来への希望とは、神はご自身の民を清め、新しいイスラエルに作り替えるという契約です。モーセの様な、約束された新しい王の統治のもとで新しい契約を結び、その王は全世界の上に神の祝福を回復します。
 ネビイームの終わりはトーラーと同じ様にタナクの書記たちの注釈がつきます。読者に、新しいモーセの様な預言者でエリヤと呼ばれる人物の登場を期待させます。彼は神がご自身の民イスラエルを清めるという希望を告げ知らせるためにやって来ます。

⒌ケトビーム(諸書)

 多様な書物が含まれています。各書はトーラーやネビイームとリンクする様になっていて、互いにテーマをつなぎ合わせる様になっています。例えば詩篇は、トーラーとネビイームの冒頭につながる様に2つの詩で始まっています。

詩篇


 1篇では、ヨシュアのような新たな人が登場しますが、彼はモーセによって約束された様な王であり、永遠の命の木の様です。2篇ではその人物が特定されます。それはダビデの子孫からでる神の子であり、彼は国々の悪を打ち負かし、再び世界に神の祝福をもたらします。残りの詩篇は、この希望を待つ間どの様に祈ればよいかが書かれています。

知恵の書


 次にトーラーに対応する知恵の書が始まります。箴言では神に信頼することで成功すると説き、伝道者の書やヨブ記ではそれはそんなに単純な話ではないとイスラエルの歴史を紐解きながら書かれています。この3つの書物には、混乱した世界で知恵を持って生きることの意味深い言葉が書かれています。

ダニエル書


 タナクの最後の二つの書はダニエル書と歴代誌です。ダニエル書はイスラエルの過ちと苦しみの歴史を振り返ります。そして、いつの日かトーラーとネビイームに約束された新しい人が来て、彼は悪に傾いた獣の様な人間に踏み躙られますが、その後神によって高く上げられ、神の力を持って世界を治めます。

歴代誌


 歴代誌はタナク全体を短くまとめます。歴代誌の最後はタナクの鍵となる書に繋がる様に書かれています。イスラエルの民の中から神が共にいてくださる方が現れ、エルサレムを回復するために上って行き…という希望で終わります。

⒍タナクとは


 タナクはイスラエルの民と全人類に対して、神の契約に対する一つの物語になるように編纂されています。生涯をかけて読み、人間の言葉が知恵と未来への希望を語る神の言葉として語り続けられています。

以上が冒頭に紹介した動画のまとめです。割愛した細かい情報もありますので、もっと知りたい方は動画を見ることをお勧めします。

⒎旧約聖書とは

 キリスト教では旧約聖書と呼ばれ、旧約聖書とはプロテスタントの使用する聖書の前半39巻分の事で、「モーセ5書/歴史書/詩歌/預言書」で構成されています。ユダヤ教ではタナク(トーラー/ネビイーム/ケトビーム)と呼ばれる39巻からなる書物のことです。キリスト教とユダヤ教では並びが異なっていますが、収められている内容は同じです。
 というわけで、長い時間をかけて編纂されてきた書物でありますので、現代の常識で読むと意味がわからない事も多くある事でしょう。なんせ19世紀に書かれた文章でも意味が分からないことがありますから、何千年も前に編纂されたとなれば尚更です。この訳の分からないところが、昨今話題に上る新興宗教に利用される所以でもあるのでしょう…。



長々となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。

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