見出し画像

小説用エディタを選ぶ基準の考え方

小説を書くツール、多すぎ問題

小説を書く時に使う道具について、この十年ほどで色々なソフトが普及し始めた。しかしその影響で、無料で使えるソフトだけに限っても実に多くのものが存在するようになり、いざ選ぼうとした時に迷ってしまうことも増えたように感じる。
「小説を書くためのツールを調べてみたけど、多すぎて選べない」
「ソフトを紹介してる記事を見ても理解出来なくてそっと画面を閉じた」
「ていうかそもそも自分にどんなソフトが向いてるのか分からない」

そんな迷えるゴリラ諸兄に、今回は「どんな人にどんなタイプのソフトが向いているのか」という説明をしていこうと思う。

ツールのタイプを知ろう

小説を書くためのソフトは、当然ながら「文字入力」に強いソフトである。文字を入力するソフトには、おおまかに分けて以下の種類が存在する。他にも細かい分類はあるが、詳しい方は更にご自分で調べて作風に合ったソフトを探してほしい。

テキストエディタ
「文字入力」に全振りしたソフトである。文書の装飾(ルビや傍点等)や縦書きや組版といった機能は一切ない。しかし、テキストエディタの最大の利点はその「速度」にある。
テキストエディタは、余計な機能を排除した分だけ動作が軽い。つまり入力に対して反映が遅延することはほぼないと言っていい。コンマ数秒の表示遅れであっても、筆が乗りに乗りまくっている時には興が削がれる。まして
「頭の中に文章が次々に出来上がってきて、キーボードを打つ手が頭に追いつかない!」
というタイプのゴリラであれば、画面表示の遅れは致命的にモチベを下げてしまう。
テキストエディタは元々、プログラミング分野での記述に使われていたものが多い。プログラミングやコーディングとは、長時間ひたすら文字を打ち続け問題をあぶり出し修正を続けるという作業だ。したがってテキストエディタは、入力と編集の処理速度に関しては他のソフトの追随を許さない、最速のスピードスターなのだ。
検索や置換機能、ショートカット設定も他のソフトに比べて断然速いし充実している。とにかく書きたい、書くことが多すぎて手が二本では足りない、というゴリラはテキストエディタを選ぶと良い。ちなみに弊ゴリラはテキストエディタ愛好家である。

アウトラインプロセッサ
アウトラインとは「構造」のことであり、アウトラインプロセッサは「文書の構造を編集しやすいこと」に特化したソフトである。このタイプのソフトは、本文執筆用の区画と目次のようなアウトラインリストの区画を並べて確認出来るものが多い。つまり一つのウィンドウで、プロットと本文を見比べながら作業を進められるのだ。アウトラインの項目をクリックすれば本文のその場所に飛べる、という機能も超長編の小説などでは非常に便利である。ビジネス文書やToDoリストなどで使われることが多いだけあって、アウトラインリストの項目を並べ替えたりといった、構造を編集することに関してはまさに王者の風格だ。
「この長編は間違いなく三十万字を超える、伏線が複雑に張り巡らされた話だ!」
というような長編書きのゴリラ、あるいは複雑なトリックを必要とするミステリなどの「構造」が重要な物語を書くゴリラであれば、アウトラインプロセッサを選ぶと良い。

ワードプロセッサ
超有名な「Word」や「一太郎」はここに分類される。文章を書くことではなく、書いた文章を印刷物の形式として紙面を想定して整えることに特化したソフトだ。な○う系ファンタジーや、やたらとルビの多い文体の原作を持つ二次創作などでは、こちらを使用することで最初からルビや傍点の設定などを組み込んで書くことが出来る。また商業誌の新人賞への投稿を目指すような場合は、投稿形式が縦書きに指定されている企業も存在する。
「初めて小説にチャレンジするけど、これを同人誌にしてイベントで頒布したい!」
というようなピチピチの気概溢れるゴリラならば、まずはワープロソフトで書き始めてみると完成図がイメージしやすく編集時も助かることだろう。ワードプロセッサは入力特化でもなく、構造特化でもないが、印刷に至るまでの「文書を物体として完成させる」ということを全般的にサポートしてくれる万能戦士だ。
やりたいこと、やりたい作風が「印刷前提」の場合は、ワープロソフトを選ぶと良い。

実際のソフトの例

これらのソフトの中には、他のタイプのソフトの機能を一部含むものや一部の機能を排して別の機能に特化したものなどもあり、一概に「このタイプだからこの機能がある」とは言えない。そこはお使いになる際に調べてみるといいだろう。
ではここからは、各分類のソフトの中でも有名なものを少しだけ紹介していこう。

テキストエディタタイプ

秀丸
対応機種:Windows
頒布金額:4,000円
縦書き可能なテキストエディタであり、小説書きには長年使っている人も多い有名ソフトである。有料のシェアウェアだが、トライアルの無料試用が可能なので、まずは試してみて気に入ったら購入というのが良いだろう。

TeraPad
対応機種:Windows
頒布金額:-
フリーウェアの中ではそれなりの知名度を持つテキストエディタで、ゴリラはこれを愛用している。とにかく反応が速く、行頭・行末の禁則処理まで設定できる折り返し機能や、アンドゥ・リドゥやドラッグドロップなどの機能が便利だ。

アウトラインプロセッサタイプ

Dynalist
対応機種:全て(web上で動作するアプリケーションのため)
頒布金額:無料プランあり。有料プランは月額7.99ドルから
アウトラインプロセッサの代表的なもの。機種を問わずに使用出来るため、家ではPCで、外ではスマホで、タブレット端末で、というように気軽に作業中の原稿を持ち歩けるのが魅力だ。無料プランもあるのでまずは試してみると良い。唯一のネックは海外製ソフトであるため、設定画面などが日本語ではないことである。

Story Editor
対応機種:Windows
頒布金額:-
フリーウェアのアウトラインプロセッサであり、開発者の方が小説書きであるということで使用者も多い。シンプルな画面で必要な機能を備えており、階層構造の管理が出来る。初めてアウトラインプロセッサを使う方にもおすすめのシンプルなソフト。昔からあるソフトのため現在はサポートを停止しているが、ダウンロード自体はおこなえる。

ワードプロセッサタイプ

一太郎
対応機種:Windows
販売金額:9,000円~30,000円程度
Wordに比べて小説執筆に特化した機能を盛り込んだソフトとして有名。ATOKが同梱販売のため、変換機能が充実している。ワープロソフトであるため、印刷物として入稿するまでの作業を包括的にサポートしてくれる。フリーウェアでは得られない数々の機能のおかげで、マネーという文明の力を存分に使って小説が書けるはずだ。ネックになる点は拡張子が独自のものであるため、他のソフトで開けないという点だ。

縦式
対応機種:iPhone、iPad
頒布価格:-
iOS機種に対応した縦書きワードプロセッサであり、「まだ学生で、パソコンが家族共用だから自由に原稿出来ない!」といった悩みを解決してくれる。縦書きでの執筆作業から組版作業までをこれひとつで賄うことが出来るため、試しに小説本を出してみたいがパソコンを持っていない、という方でも本文原稿を作ることが出来る。

終わりに

小説とは、文字を通して「物語」という架空の世界に読者を没頭させるものである。楽しい映画を見た時や、続きの気になる漫画を読んだ時、「気がついたらあっという間に時間が過ぎていた」という経験はあるだろうか。それが「物語に没入する」ということである。ゴリラに至っては、没入している時には自分がどこにいるのか、何をしていたのか、どんなことを考えていたのか、そんな大切なことでさえも忘れてしまうことがある。小説も物語である以上は、映画や漫画と同じことが出来る。
つまり文字がどんな色か、縦書きか横書きか、どんな媒体に載っているか、などというしゃらくせえこと全てを忘れさせ物語の世界に没入してもらうということが、物語を作る醍醐味のひとつなのだ。没入してもらうために邪魔になる要素(文字色が薄すぎて見づらい、フォントが面白すぎて集中出来ない等)は排除すべきだが、「見た目」に多少の差があったところで「物語のクオリティ」は変わりはしない。
物語のクオリティでもって読者を引きずり込むこと。これが出来るのならば、道具は何を使って書いてもいい。神絵師と呼ばれる人たちは、たとえスマホアプリに指先で描いても「絵がうまい」と誰にでも分かる。小説でもそれは同じだろう。しかし、神絵師だってスマホアプリよりは使い慣れた描画ソフトや絵筆の方がすらすらと絵が描けることは間違いない。だから小説書きゴリラの皆さんも、自分の書き方や作風に合った「自分好みのソフト」を見つけ出せばもっと作業が捗るようになるかもしれない。今使っているソフトにもし不満やストレスを感じる箇所があるなら、それをカバーしてくれるソフトを試しに使ってみる、というのは良いチャレンジだ。各ソフトの機能の解説などはweb上に様々な記事が存在するので、詳細はご自分で調べて頂きたい。大変申し訳ないが、ゴリラも小説書きソフトについてはそれほど多くのものを触ってきた訳ではない。ゴリラに出来ることは、ソフトを選ぶ時に何を基準にして探したらいいのか? という心構えの話くらいだ。
貴方はどんな作品を書きたいだろうか。小説を書いてどんな風に活動していきたいのだろうか。目的に合ったソフトを選んで、バリバリ小説を書いてほしい。ベテランゴリラであるならば、今使っているソフトでは足りないと思っていること、欲しいと思っている機能などはないだろうか。それを実現しているソフトがあるなら、どんどん試してみるべきだ。チャレンジはジャングルにおいて尊ばれるおこないであり、経験したことはいつか貴方の血となり肉となるだろう。新しいソフトを探してみようかな、というゴリラは是非チャレンジしてみてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?