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続・読者の心理を動かす小説の書き方とは?

前回のあらすじ

この記事をお読みのゴリラの皆さんは、既に「読者の心理を動かす小説の書き方とは?」の記事をお読みになってくださったことと思う。前回皆さんには、「読者の心理を操作して狙った沼に叩き落とそう」という話をさせて頂いた。読者の心理を操作する方法は様々であり、やり方もその分類も人によって違うだろうし、コツや工夫といったものを体系的に解説することは難しい。何故なら、扱うものが「心」だからだ。人の心というものは様々な要因で移り変わる。年齢、環境、気候、時勢、その人の人生の中で起きたあらゆることが影響してしまう。ほんの数秒前にはなかった気持ちが突然浮かび上がってくるなどということはまったく珍しいことでも何でもない。だからこそ「こうすれば絶対に上手くいく」という正解はない。だが、ある程度の指針になるものを知っているかどうかが時には作品の出来を左右する。今回は「読者の心理を動かすための指針」についてお話させて頂こう。

狩りの成功率を高めるための「コンパス」

ジャングルは広い。そして危険が多い。このジャングルで戦い、獲物を仕留めるのであれば、装備が武器一本では心許ない。従って今向かうべき方角を示すための、コンパスのようなものが必要になる。これは武器を作り上げる際、自分がどんな獲物を狙うのかという部分でも使うことが出来るので、持っていて損はしない。

武器を作っていると、途中で細かい部分が分からなくなってくることはあるだろう。そもそも武器を作り始める前、設計図の段階でつまづくこともあるだろう。そのような時にはコンパスを見るのだ。これから二つのコンパスを紹介するが、これはゴリラが普段よく使っているものであり、他にも色々なコンパスを使うことはある。コンパスの形や作り方は人によって異なるので、このコンパスだけが正解ではない。ジャングルで暮らすことを決意した皆さんには是非、自分なりのコンパスを探し出し活用して頂きたい。

エモーショナルグラフ

ゴリラがこの言葉を知ったのは、とある海外のゲームの制作資料を見た時だった。そのゲームには、言語が一切登場しない。操作方法の説明でさえ、言葉ではなくピクトグラムとアニメーションで表現されている。小説とはまったく真逆の表現方法で作られた作品なのだ。しかし、ゴリラはその作品を初めてクリアした時、タオルを握り締めて一時間ほど布団に突っ伏して泣いた。一切の言葉を排したそのゲームの中に、それだけ感情を動かされる「物語」があったのだ。

瞬く間にこのゲームのファンになったゴリラは、設定資料や画集の含まれた限定版を海外から通販で手に入れた。ゴリラにも通販が使える、便利な世の中である。その限定版を見た時、初めて「エモーショナルグラフ」というものに出会った。海外のゲームなので当然資料に書かれているのも英語なのだが、おおまかな意図は読み取れた。そのグラフには、自分がゲームをプレイして感じたものに限りなく近い感情の動きが描かれていた。言語の一切ないゲームなのに、そこには明確なストーリーと、ストーリーによってどのようにプレイヤーの感情を動かすかという設計があったのだ。
このゲームはとても素晴らしい作品なので、是非多くの方に知って頂きたいと思う。日本でも話題になった『風ノ旅ビト(原題:Journey)』を制作したThat Game Companyの作品、『Flowery(原題:Flower)』だ。


エモーショナルグラフの実例

ではここでエモーショナルグラフの実例を見て頂こう。これはゴリラがある小説を書いた時に作ったエモグラである。

カタルシスモデル

アルファベットはそれぞれの話のタイトル、数字は話の中の章分けである。グラフの「上」はポジティブな感情を、「下」はネガティブな感情を指す。

緑の曲線は全体を通してのおおまかな感情の変化をどのように持っていくか、という理想を示した線だ。これを「理想線」と呼んでいる。理想線はストーリーの骨子、屋台骨を組む際に必要になる情報である。どんな話にしたいか、どんな印象を持ってほしいか、ということを計画するために必要なのだ。ハッピーエンドの話であれば、最後のシーンを読む時には読者にものすごくポジティブになってもらう必要がある。つまり理想線もラストが一番上になる必要があるのだ。ゴリラはプロットの前の段階、「ストーリーライン」と呼ぶ作業の時にこれを頭の中に据えている。
赤い曲線がより詳細に、話の中で読者の感情が逐次動いていく様子を想定した線だ。話を通して読んだ時にどのシーンでどんな風に感じるかということを細かくグラフにしていく。これを「感情線」と呼んでいる。感情線は実際の本文作業中に必要なもので、本文が書き上がったら完成物を見て修正することもある。その修正に応じて後の展開をまた修正する、というようなこともある。
青い曲線は、この物語でメインに据えられた登場人物の心理を表した線だ。メインの登場人物は一番心理描写も多くなり、読者が共感したり感情移入したりする可能性が高い。従ってメインキャラクターの心理曲線を把握しておくことで、後の展開をより理想線に近い形にすることが出来る。

この話は全三話構成で、それぞれの話が三つの章で構成されている。つまり箱として区切るなら九つの箱を持っている。ある事情で罪を犯し、隔離された二人のキャラクターが、互いのまったく違った価値観や人生をどのようにして見詰めていくのか、というストーリーである。
この小説では、ラストシーンで二人のキャラクターにハッピーエンドを迎えてほしかった。この二人は色々な問題を抱えており、ハッピーエンドに辿り着くには一筋縄ではいかないということは分かっていた。その問題を解決するためには二人の生き方の衝突をどうしても描写せねばならず、衝突が読者の納得のいく形で解消されなくてはならなかった。従って赤色の「感情線」では二人が衝突する箇所でグラフが落ち込むようになっている。
また、物語の構成としてハッピーエンドを目指すのであれば、エンディングのシーンをより強く印象付けるために「ハッピー」とは対比になるシーンも強く印象付けておく必要がある。緑の「理想線」では三話目の始まりはネガティブな印象を持ってもらい、そこからエンディングに向けて気持ちが急上昇するように書く、という計画をしている。

意図した感情を演出するということ

物語を読んだ人がどんな感情を持つか、正確に全てを把握することは出来ない。人の心はどれひとつとして同じものはなく、同じ話を読んでもまったく違う感想を持つこともあるからこそ創作は面白い。しかし、ある程度の予測を立てその予測に基づいて物語を書くことで、意図した印象を持ってもらうことは不可能ではないのだ。
こう書くと、「作為的に操作しているようで嫌だ」「作者の意図通りに操られているようで不快になる読者もいるのでは」という不安のある方もいることだろう。しかし、それは日常生活の中で誰もがごく当たり前におこなっている行為に過ぎない。
たとえば、友人に誕生日プレゼントを選ぶ時。本人に欲しいものを尋ねることもあるだろうが、サプライズプレゼントであれば「相手が喜びそうなもの」「少なくとも嫌がられないもの」を選ぼうと頭を捻るのではないだろうか。相手が本当に心から喜んでくれるとは限らなくても、正解が分からなくても、一生懸命考えるのではないか。そのプレゼントを相手が受け取って、喜んでくれた時、貴方は「思い通りに動かしてやったぜ」と思うだろうか。もし貴方がプレゼントを受け取る側だったら、「操作されたようで嫌だ」と思うだろうか。ゴリラは、大切な友人が一生懸命に選んでくれたプレゼントは嬉しいと思う。それが自分の欲しいものに合致していれば、友人の慧眼に感謝するしより一層喜ばしく感じるものだ。だから心配する必要などない。貴方は自分の小説を読んでくれる人に、「感情」というプレゼントを贈るだけのことだ。喜んでもらえれば自分も喜べばいいし、上手くいかなければ次は趣向を変えてみればいい。たとえ相手が顔も名前も知らないネット上の誰かだとしても。プレゼントを受け取って喜んでくれる人がいれば、それは何物にも代え難い素敵な経験になることだろう。
小説の本文を書いていて、暗いシーンを書かねばならない時、「こんなに暗くて大丈夫か」と不安になることがゴリラにもある。しかしそんな時このコンパス、「エモーショナルグラフ」を確認すれば、これでいい、思い切り暗くしよう、と迷いを振り切ることが出来る。慣れていてもうっかり道に迷いがちなジャングルにおいて、コンパスは戦いを有利に運ぶための大切な装備となるだろう。

「トレス」と「ダイブ」

ゴリラは人物の心理描写が好きだ。というか心理が好きだ。人の心というのは変わるものであり、変わるからこそドラマティックである。そして人間というのは大体「自分」や「他人」の心理に興味を覚えるものである。人類の皆様には例外もあることは知っているが、大多数の人が心の動きというものに少なからず興味を示すのは事実だ。物語においても、登場人物の心の動きを注視する読者というのは少なくない。それはある種の疑似体験だからだ。現代のインターネットは素晴らしいもので、遠い国の有名な観光名所の紹介動画を見て、束の間でもそこへ行ったような気持ちになることが出来る。同じように、小説の中で様々な人物の心の動きを見ることで、その気持ちを自分も一緒に味わったように感じることも出来るのだ。これが心理描写の面白さの一端である。読者に心理の疑似体験をしてもらう、つまり読者に「キャラクターの心理」を深く感じながら作品を読んでもらうには、心理描写にも入念な下ごしらえが必要になる。

人物の心理を書くのであれば、まずその心理がどのように動いているのかを紐解かねばならない。適当にフィーリングでやっていても何とかなるケースもあるが、多くのキャラクターが登場する物語などになると、フィーリングだけではうまくいかなくなってくることだろう。多くの人物がいれば、多くの考え方があるのが当たり前だからだ。自分には分からない心理をなんとなくで書くと、自分はそれで良くても、その心理に近いものを知っている読者からすれば「なんだか違う」とモヤモヤしてしまう原因になりがちだ。二次創作であれば、自分が感じたこともないような経験や考え方を持ったキャラクターが「推し」になることも有り得る。そうした時「トレス」や「ダイブ」を使うことで、ゴリラはキャラクターの心理を可能な限り読者にとっても納得のいく描写に近付けるようにしている。

キャラクターの実在感を高め、読者にキャラクターを好きになってもらうための「思考回路モデル」

先日、マシュマロマガジンさんのインタビューにゴリラの飼い主が答えた際、トレスとダイブについて書かせて頂いた。記事内での該当部分は有料となっているが、ご興味のある方は是非ご覧頂きたい。

思考回路モデルとは、ゴリラがキャラクターの心理を深く描写する際、頭の中に作り上げるもののことだ。簡単に言えば、そのキャラクターがどんな考え方をするのか、という回路のモデルである。
当然のことだが、キャラクターとは架空の人物だ。ある一面だけを強調したり、性格のごく一部を抜粋したようなキャラクターというものも存在する。これを「デフォルメ」という。キャラクターがどのようにデフォルメされているのかは、様々な創作を見れば勉強することが出来る。デフォルメされたキャラクターの場合は、そのデフォルメを裏付ける「人間としての心理状態」がしっかり作られていないと、キャラクターの魅力は活きてこない。イラストの分野でも、デフォルメされた人物イラストを本当に魅力的に描ける人というのは、人体の構造や物の質感などを理解して描き分けることができて、その描き分けを小さなパーツにバランス良く組み込める人だという。
たとえば古来より有名な「ツンデレ」という属性を付与されたキャラクターは、プライドの高さやそのプライドに見合った実力、あるいは素直になれない態度を作り上げた背景などが強調されていることが多い。このような強調された部分がどのように作り上げられているか、どう動作してどんな行動になるのか、ということをシミュレーションすること、シミュレーションのためのモデルを自分の中に持つことで、「ツンデレ」キャラをより鮮やかに魅力的に書くことが出来る。
「べ、別にあなたのためにやったんじゃないんだからね!」
とはツンデレ名言として今も輝く金字塔であるが、似たような台詞を言うキャラクターがどれほどいたとしても、その言葉が出てくるに至った経緯、つまりキャラクターの内面で起きている心理のメカニズムには違いがある。

「な、なななに勘違いしてんのよ……! わた、わたしは別に士郎を気遣ったわけじゃなくて―――!」
『Fa○e/stay n○ght』に登場する遠○凛というキャラクターは、典型的なツンデレである。彼女は学内でも有名な成績優秀者で、容姿端麗な上に品格のある態度で学校では「高嶺の花」のように扱われている、という導入部の描写がある。しかし実際の彼女はその成績に見合うだけの泥臭い努力を重ねており、他人に見せようとしない場所ではちょっとお茶目な失敗もしてしまう、というキャラクター性が後に明かされる。物語の中では彼女が何故それほどの努力家に成長したのか、という部分をじっくりと語ってくれるため、読者は彼女の生き様に憧れ、素敵な女性だと思い、彼女のことを信頼する主人公に感情移入することが出来る。

「だがオレはこいつらに教えてもらった! 下には下がいるという事を!!」
『遊○王デュエ○モンス○ーズGX』に登場する万○目準というキャラクターは、こちらも典型的なツンデレである。成績によってランク付けの存在する学園の中でトップのクラスに所属し、家族は政治家や銀行家であり、自分の出自を鼻にかけて高慢な態度をとることも多い。しかし彼は物語の中で大きな挫折を経験し、ただ高慢な訳ではなく誇り高く力強いキャラクターとして開花していく。彼の挫折と精神の移り変わりがきめ細やかに描かれていることで、読者は彼の強気で嫌味な発言が次第に微笑ましいものだと感じるようになっていく。物語中でも、彼の周囲のキャラクターたちは次第に彼のそうした態度を柔軟に受け入れるようになっていくのだが、そこに確かな説得力があるのは、彼の精神の変容がはっきりと描かれているからだ。

「……お前のためにやったのではない」
『Ap○x Leg○nds』に登場するレヴ○ントというキャラクターは、これまた典型的なツンデレと言われている。彼は怪しい組織によって開催されているバトルロワイヤルゲームに参加している、冷酷なロボットというていのキャラクターだ。周囲の人に対して辛辣な言葉や礼儀知らずな態度を示すことが多く、他のキャラクターからは嫌われている描写が多い。しかし物語が進むにつれ、彼がロボットの体を持っているのは本人の意思ではなく、恐ろしい計画によるものだということが明かされていく。ロボットの体に繰り返し生前の精神をコピーされ、何百年も便利な暗殺者として使われてきたという背景。本当は死にたいと願っているのに自分の本体を壊すことが出来ないようにプログラミングされている、というストーリーは哀愁を誘い、彼の冷たい言葉や捻じ曲がった態度にある種の愛着を持つプレイヤーもいる。これはキャラクターのバックボーンが、他のキャラクターとの関係性に絡めてしっかりとしたストーリーで明示されたからこそだろう。

「ツンデレ」という属性に絞り、その中でも典型的とされるキャラクターの例を挙げたのだが、それでもこれほどの違いがあり、彼らは描かれ方も人としての在り方も異なっている。一人ひとりのキャラクターが違う人生を持ち、考え方を持ち、その結果が「ツンデレと言われる態度」になっている、という訳だ。もしこの三人が「どんな風に考えてツンデレに見える態度を取るのか」というメカニズムの部分を考えずに書いてしまえば、各々の違いを明確に作品に書くことが出来なくなる。そうなればキャラクターは一様で偏平になり、読者にとっては「よくいるキャラだな」ということになってしまうだろう。二次創作であれば、いわゆる「テンプレ○○化」となってしまい、キャラクターに猛烈な好意を向ける人にとっては歓迎出来ない事態だ。オリジナルであれば、過去作の使い回しだと思われたり、下手をすれば過去作とは違うキャラクターだと認識してもらえない場合さえある。

たとえば男性の作家が、女性のキャラクターの心情を深く描写しなくてはならない時。個人差はあるだろうが、女性でなくては中々経験出来ないような環境やそこから生まれる心理を紐解く必要がどうしてもある。これを怠ればキャラクターには「女性らしい魅力」が備わらず、女性の読者から見た時に「嘘くさい」キャラクターになってしまうのだ。逆も然りであるし、性別に限った話でもない。自分よりずっと年齢が上のキャラクター、自分が絶対に経験出来なさそうな荒唐無稽な人生を送ったキャラクター、エトセトラエトセトラである。特定の層に読まれることを禁じるような作品であればそれでもいいのかもしれないが、読む人を性別や年齢(成人向けを除く)で分けるなどというのはこのインターネット社会においてあまり現実的とはいえないことである。一度インターネットに公開したらどんな人が読んでくれるかは分からないのだから、読み手が作品に違和感を持たず最後まで楽しんでくれるよう、努力を惜しんではならない。
キャラクターの思考の道筋を、そのキャラクターのバックボーンや人生から類推し、メカニズムを組み立てること。そのメカニズムがどのような行動として出力されるかを計算すること。これが出来れば、オリジナルでも二次創作でもキャラクターは生き生きと魅力的に動き、読者がキャラクターを好きになってくれる確率は格段に高まるはずだ。まずはそのキャラクターの家庭や幼少期の経験、人生の中で起きたことをメモにまとめてみよう。二次創作であれば原作の描写を読み直し、オリジナルであればキャラクターの設定ファイルを開いて足りない部分を埋めていく。様々なシチュエーションを想定して、そのキャラクターがどう反応するか、何故その反応に至るのかを突き詰めていく。脳内でキャラクターにインタビューをしてみてもいいだろう。あるいはお題サイトなどを利用して、このお題であればこのキャラクターはどう動くのかと考えてみてもいいだろう。必要なモデルさえ組み上がれば、後は必要に応じてモデルの動作を確認すればいい。

キャラクターの性格、心理の動きを想像するということについては、以下の外部記事で初心者の方にも簡単に取り組めるトレーニングを公開している。以下にトレーニングからの抜粋を記載しておこう。

たとえば親しい友人が、好きなキャラクターの新情報や新グッズを見てどんな反応をするか、想像できるという人は決して少なくないのではないだろうか。これは脳内にその親しい友人の「人物像」が細かいところまで作り上げられているからである。オタ友であれば、オタクとしての反応はよく目にしているから、特に詳細なデータが蓄積されていることだろう。
同じことが、二次元のキャラクターに対しても出来る。キャラクターのことをファンがすべて知っている訳ではないが、それは三次元の人間も同じである。知らないことがあっても、想像することは出来る。
「原作のどこどこでこんな風に話していた、だからこのキャラクターはこういう口調のはずだ」

「原作の重要なエピソードでこういう考え方を述べていたキャラクターなので、この場面ではこういう考え方をするはずだ」

「この口調で、こういう考え方なら、このキャラクターのこの場面のセリフはこうなると思う」
このように、キャラクターの外見のみならず性格や思考まで想像力を働かせてくっきりと人物像を脳内に作り上げることによって、より「そのキャラクターらしい」セリフを書くことも出来る。これが「妄想筋を鍛える」ことのメリットである。

より詳しく知りたい方はこちらをご参照頂きたい。

「ゴリラ's ワークシート~誰でも出来る妄想筋トレ~」


キャラクターの台詞を書いていて、「このキャラクターは本当にこんな言い方をするだろうか」と不安になることはゴリラにもある。しかしそんな時このコンパス、「思考回路モデル」を参照することで自分の中で台詞に筋が通り、自分なりの「そのキャラクターらしさ」を書くことが出来る。草木生い茂るジャングルにおいて、コンパスは貴方の道行を定める大切なパートナーになることだろう。
ちなみにこのモデルの動作を自分の心理として体感することを「トレス」と呼び、モデルの外側から他人として観察することを「ダイブ」とゴリラは呼んでいる。これは完全に自分の感覚でやっていることなので、このようなやり方に専門的な名前があるのかどうかも知らないし、一般的にどう呼ばれているのかも分からない。ご存知の方がいればご一報頂けるとゴリラが喜ぶ。

実践に向けて

これでゴリラが伝えられることは一通りお伝えしてきた。世の中には多くの小説技法についての書籍や記事があり、その中でどんなものが貴方にとって必要な情報かは貴方にしか分からない。もしゴリラの話を聞いてみて、小説の技法というものに興味が湧いたのなら、是非ご自分で様々な情報を集めてほしい。ゴリラもそうやって自分なりに学んできたことを、ここで書いているに過ぎないのだ。学ぶことが億劫に感じることもあるかもしれない。しかし好きなこと、やりたいことであれば、きっとそれは楽しく面白い学びになるはずだ。学んだことが役に立たない、というのは大抵の場合、好きでもなく興味もない分野の話である。好きで、やりたくて仕方なくて、ずっと続けていきたいと思えることであれば、学んだことはいつか必ず活きるのだ。
学ぶためには多くの時間や手間を割かなくてはならないし、時には一人で調べ物をするだけでなく、勇気を振り絞って他人に声を掛ける必要のある場面もあるだろう。学んだことが人真似に過ぎないような気がして、学ぶことを敬遠したくなることもあるだろう。勿論盗作や盗用というのは創作の世界で決して許されるものではなく、たとえアマチュアの趣味の創作であっても他人の発想やアイデアをコピーしたような作品は歓迎されないものだ。だが、「ただ真似すること」と「学ぶこと」はまったく違う。
オタクはよく「解釈違い」で悩む。これはオタクに限った話ではなく、世の中ではある事柄についての解釈の違いで国や民族の命運を懸けた戦争が起きることさえある。悲しい現実ではあるが、つまりそれだけ「同じ情報を見ても人が受け取るものは千差万別だ」ということである。そう、同じ物語を読んでも全員がまったく同じ感想を持つ訳ではない。
貴方が調べたことも、見た言葉も、知った知識も、それが貴方の中に取り込まれ正しく消化されていけば、やがて貴方だけのものになってゆく。
同じ記事を読んでも、同じ本を読んでも、そこから何を汲み上げ何を得るのかは人によって違う。だからこそ創作は面白く、そして難しい。どうか忘れないでほしい。
貴方は、何を学んだとしても貴方だ。貴方の書く物語もまた、貴方だけのものなのだ。
貴方が素晴らしい武器を作り上げ、ジャングルでの決闘を勝ち抜き、高らかな雄たけびを響かせてくれることを、ジャングルの片隅でゴリラは願っている。

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