見出し画像

「○○の方が優れている、××は劣っている!」という言葉の意味


Q. 二次創作をしているのですが、オリジナルで同人活動をしている人から「二次創作は他人の作品を借りてるだけだから意味がない。二次創作よりオリジナルの方が価値がある。創作活動をしたいならオリジナルをやるべきだ」と言われました。二次創作には意味がないのでしょうか。この人は何故こんな風に、二次創作をけなすような言い方をするのでしょうか。

A. 動物の習性として、「マウンティング」という行為があることはご存知でしょうか?

野生のアニマルの行動として観測されるものに、「マウンティング」という行為がある。ネットスラングと化してしまった「マウントを取る」というのもここから来ている言葉だ。
アニマルのマウンティングは、群れを形成する動物の場合が分かりやすい例だ。群れの中でボス格の強いアニマルが、他のアニマルの背中にのし掛かることで「自分の方が強い、自分がリーダーだ」と周囲や本人の確認をおこなっている。一瞬の判断が群れ全体の生死を分ける大自然の中では、有事の際にはリーダーを筆頭にして全員が的確な動きをとることが求められる場合もある。群れの皆が分け合う大物を狩るような時、あるいは圧倒的に強い別種の生き物に追われて逃げる時など、群れの統率が取れていなければ全員が死んでしまう可能性もあるからだ。
つまりアニマルのマウンティングとは、紙一重の生死の境を潜り抜けるために必要な「群れの中での秩序の確認」なのである。
これは群れのボスになることの多いオスアニマルに限った話ではなく、メスアニマルであってもおこなうようだ。獲物の取り分や安全な寝床など、生きるのに必要なものをより強く優れたアニマルが勝ち取るために、メスアニマルであってもマウンティングが必要な場面は存在している。

人類の「マウンティング」

人類の皆様は大変に発展した文明社会を築いており、天変地異や戦争などといった非常事態でない限り、群れの統率が取れていないと全員が死ぬようなことはまずないだろう。それが生きるための糧を得る「シゴト」という行為を共有する組織であれば、時にそういったことも起こり得る。しかし「趣味の集まり」「ネット上の友人関係」といった場で、ボスになり群れを従わせなくては命を取られる、ということはおそらく、ない。
それなのに人類もマウンティングをする。自分を大きく強く見せ、相手を見下し威嚇して、「己の方が強い」と見せつけることを、人類の脳は「快感」と捉える。これはアニマル時代や、アニマルから人類に変化していく過程の頃に培った大自然の法則すなわち「動物的本能」によるものだろうと推測される。こればかりは仕方ない。生まれた時から室内で暮らしているペットアニマルでも、狩りの真似事をしないと気分が晴れないことがある。これと同じで、本能的な行動というのはいきなり消えてなくなったりするようなものではない。
だが、人類の皆様には冷静になってほしい。貴方たちはアニマルとは違って、所属する群れを自分で選べる。それが趣味の集まりであれば尚更だ。生き残るためだけにボスに従う必要はない。その群れのボスが掲げる秩序に賛同できなければ、ボスなどいない別の群れを探したっていい。群れを離れて一人で狩りをしてもいい。誰にもそれを咎める権利はない。逆に群れに所属した場合の恩恵を得たければ、時には折り合いをつける必要もあるだろう。だが、心や体を壊してしまうほど自分に合わない群れに無理をして居続ける必要はないのだ。人類の趣味の世界というジャングルでは、群れに所属しなくとも命を奪われることなどないのだから。
しかし残念ながらこうしたメカニズムを理解しておらず、自分の行為が何に起因するかも考えず、ただただ本能のままに快感を得ようと他人を傷つけ続ける人や、「ボスに従わなければ死ぬ」という動物的本能に縛られていたずらに他人を傷つけるボスから離れられない人もいる。
「○○の方が優れている」
「○○は素晴らしいが××は劣っている」
「○○するのは当たり前で、出来ない奴がおかしい」

そうした言葉を使う人間は、動物的本能に縛られているだけだ。自分は正しい、間違っているのは意見の違う人だ、自分は正しくて優れている! だから群れの中で生き残るに相応しいはずだ! と周囲のアニマルに向かって吠えているのだ。「人類の趣味の集まり」という群れの中では、誰の命も脅かされず、誰も食べ物を奪い合う必要などないのに。
人類よ、解き放たれろ。貴方たちの脳には、本能以外の何かがあるはずだ。それは勿論アニマルにもある。だがアニマルの場合は大自然という手強い環境で生き抜くために、本能をフル活用せざるを得ないことが非常に多い。しかし貴方たちは違う。文明社会に生まれ、文明を守るためのルールを学ぶ知力を持ち、そのルールを守ろうとする理性がある。強い者が暴力で支配するコミュニティを是とせず、それぞれが役割を認め合い、力を合わせて互いを守ることが出来る。本能だけに頼らずとも生きていけるのが人類の強さだ。単なる力比べであれば、貴方たちはゴリラにもグリズリーにも勝てないのだから。
もしここが人類滅亡の瀬戸際、最後に残された南極の船の上であれば、貴方は生き残るためにリーダーのマウンティングに従わなければならないこともあるだろう。だが貴方が今いるのは何処か。その場所は貴方にとってあらゆる苦痛に耐えるべき場所なのか。どうか冷静に考えてほしい。

さて、話を「二次創作とオリジナル」に戻そう。

ここから先は

7,526字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?