見出し画像

「設定の説明」を「物語」として書く技術

Q.二次創作で、過去のリアルイベントで発表されたことや設定資料集にしか載っていないこと、ゲームをやり込んでいるプレイヤーにしか分からない設定などをおはなしに登場させる時、どうしたらいいか悩んでいます。設定説明のところだけが小論文のようになってしまって、読者の方がそこで飽きてしまわないかと思うと不安です。

A.キャラクターの「年表」は作っていらっしゃいますか?

オリジナルで創作をされている方は「当たり前のこと」としておこなっている場合も多いだろう。しかし、二次創作の場合もこれは決して作って損になるものではない。むしろ得しかしないので、二次創作をされる方にも是非「キャラクターや世界の年表」を自分なりに作ってみることをおすすめしたい。どんなメリットがあるのか、どう活かしていけばいいのか、それはこれからゴリラが解説してみるので、ご興味のある方は記事を最後までお読み頂きたい。

ゴリラが二次創作で活動しているとある原作は、「過去の歴史や物語に登場する偉人たちが人類の危機を救うために魔術で召喚されて戦う」という設定の大人気ソーシャルゲームだ。ゴリラはこのゲームの元々の原作となるPCゲームの大ファンであり、長年このゲームシリーズを追いかけている。元々このような設定が世界観の根幹としてある物語なので、当然そこには「私たちが生きている地球に残っている書物や物語」という〝史実・原典〟と、「原作ゲームの作中で実はこうだった、と語られる物語」という〝原作設定〟の二つが存在する。そしてこの二つが一致するとは限らない、という特殊なジャンルだ。
例として、このゲームシリーズの顔役を担うあるヒロインの解説をしよう。
彼女は我々の世界に伝わる伝説では男性であり、作中世界でもどうやらそれは同じのようだ。しかし原作の中の彼女は実際の性別は女性で、男装したまま生涯を王として過ごした、という設定を付与されている。大人になったらいくらなんでもバレてしまうのでは、という部分に関しては、「聖なる剣を手にしたことによって、剣の魔力で歳をとらず、いつまでも少年のように若々しく見えた」という設定が作られている。
我々ファンがこのキャラクターについて深く考え二次創作をしようとするならば、「我々の世界に残っている王様の伝説」の知識と、「原作の設定=男装の女性として生きた王様の物語」の二つの知識を融合しなければならない。調べ物をしていくと、原作の設定では書かれていない「史実の知識」から二次創作をすることもあるだろう。その場合は史実の知識を一旦「原作の世界観」に落とし込み、原作者の方であればこの史実をどのように書くだろうか、と考えてみなくてはならない。
ややこしい、と思ったゴリラの方もおられるだろう。そう、ややこしいのだ。このジャンルの二次創作は、とてもややこしい。だから頭の中だけで捏ね回していると自分が混乱してくることもある。そうなると、調べたことや考えたことをメモしていく必要がある。メモを作っていると、原作でこのエピソードがあったのはここだから、自分が調べたことはこの辺りで起きたはず……というように時系列も固まってくる。これを時系列も含めてメモに書くと、それはもう「年表」だ。

ゴリラが年表を作ったのはこのジャンルばかりではない。他のジャンルでは、「作中で何年もの年月を掛けて大勢の人が参加する戦いが描かれ、それぞれのキャラクターにエピソードが存在する」という群像劇的な原作もある。戦記ものや長年連載している作品になると、作中で起きた事件や出来事も膨大になってくるだろう。そういった原作は、自分なりの二次創作のための年表を作って起きたことを整理しておかないと、原作の大切なエピソードとうっかり矛盾してしまったり、自分が納得のいかない話になってしまうことも多い。
少ない情報量で完結している短編作品が原作であっても、二次創作の場合は「年表」があるとより作品づくりがラクになる。二次創作では、原作では描かれなかったことや有り得なかったこと、原作の舞台の「もしも」を考えて形にする作品が多い。その「もしも」を書くには、まず「原作の舞台」を深く理解せねばならない。元々のストーリーあってこその「もしも」なのだ。作中で起きたことやキャラクターのエピソードなどを、自分の書きたい「二次創作」と矛盾のないよう確認・整理しておくことで、自分も読者も納得のいく作品を作り上げることが出来るだろう。

質問者さんは「設定の説明部分だけ小論文のようになってしまう」と言っているが、「小論文のような文章」になってしまうのには理由がある。
その情報を「物語」としてまだ消化しきれていないからだ。
調べたことや知識として知っていることをただの「知識」のまま頭にしまっておくと、それを説明しようとした時も「知識」としてしか言葉に表せない。それを一度「物語」の中に組み込み、自分の好きなキャラクターのストーリーの一部として認識しなおすことが必要なのだ。「知識」が「物語」として心に刻んだストーリーになれば、説明文のような文章になってしまうのはかなり軽減出来るだろう。そして、そのための作業が「年表を作る」ということである。キャラクターの生きた道筋、その中で起きたこと、ひとつひとつを物語として頭の中に刻み込む。この作業を丁寧に行えば設定だけでなく、二次創作のキャラクターそのものをもっと生き生きと書くことが出来るようになることだろう。

「年表」の作り方と「本文」に活かす方法

では二次創作でどのように年表を作れば良いか、ここからは実例をご覧頂こう。また、作った年表をどんな風に「本文」に使っていけば良いのか、具体的な技術を作例で紹介しよう。

まずは年表の実例だ。

ここから先は

6,152字 / 6画像

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?