見出し画像

顧客をロイヤル化へと導く「個」の深層心理を読み解く

〜顧客起点マーケティング Part 5~

TAM(Total Addressable Market = 獲得できる可能性のある最大の市場規模=100%シェアの枠)を定義し、その中での自社プロダクトと競合の立ち位置を俯瞰すれば、どこに成長機会や課題があるかは明確に見えます。しかしながら、それだけで、その成長機会の実現や課題解決の具体的な「アイデア」は見えません。ここでいう「アイデア」とは、対象とする顧客に提供すべきプロダクトのアイデアであり、それは、その顧客が対価を払って購入使用したいと思える「独自性のある便益」です。これが、事業主として明確に見えているが、なんらかの理由で顧客に認知されていないか、そもそも事業主側が、その「独自性のある便益」を見極めていないかです。

このアイデアの洞察と開発こそが、事業成長を大きく左右するものであり、それはTAM内部の顧客1人の中に必ず見出せます。多数の理解は平均値であり、競合にも容易く見えることです。TAMを定義し、主要セグメントを俯瞰し、その中に見出せる名前を持つ具体的な顧客一人一人を深く丁寧に理解し分析することでアイデアにたどり着きます。TAM全体の変化を継続的に把握し、そのTAMを構成する“N1”の継続的な理解と分析を進めることが、全てのビジネスにとって継続的な伸長につながります。
名前の見えない複数の誰かではなく、実在する一人の顧客に会って、自分の仮説を押し付けずに、丁寧に耳を傾ければ、購買行動とその行動を左右する深層心理の関係が有機的に繋がります。その深い理解と共感を通じて、ビジネスを成長させる「アイデア」が必ず見つかるのです。

自社プロダクトのロイヤル顧客の1人が、なぜロイヤル顧客になったのか、どういうきっかけがあったのかを、自社プロダクトとの初めての出会いから、プロダクト体験、意思の変化、使用や購買行動の変化を時系列で分析し、行動変化の分岐点を深く理解できれば、まだロイヤル化していない潜在的顧客に訴求することで、高い確率でロイヤル化を促すことができます。
また、同時に、離反しそうな顧客を早期に見つけて、その深層心理を把握し、事前に対策を取れば、競合やTAM外部に存在する予想外の競合に突然顧客を奪われるリスクを軽減することができます。未購買の顧客に対しても同様にN1分析で深層心理と購買行動との関係を洞察することで、ビジネス成長のアイデアを見つけていきます。

M-Forceが、サポートさせて頂いた多くのクライアントでは、顧客をロイヤル化とした「独自性のある便益」と顧客のデモグラや価値観の組み合わせが複数見つかります。つまり、多くの場合、既に存在するロイヤル顧客セグメントには複数の顧客セグメント(WHO)が存在し、それぞれが高く評価し対価を払っている「独自性のある便益」(WHAT)が複数あるのです。このWHOとWHATの組み合わせを顧客戦略(WHO&WHAT)呼びますが、ロイヤル顧客層に見出された顧客戦略が、まだ顧客化していない非顧客の獲得や離反防止に対しても効果があることが多いです。

--------------------------------------------------------------------------書籍紹介:  たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)1000人より1人の顧客を知ればいい。P&G、ロート製薬、ロクシタンを経て「スマートニュース」をアプリランキングで100位圏外からNo.1へ伸ばした著者が確立した「顧客ピラミッド」「9セグマップ」「N1分析」を全公開。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?