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白い大蛇の話




小学校来の友人。
その母親の体験談を聞かせてもらったのでここで紹介したい。





彼の母親は十年程前まで神戸市内の総合病院に看護師職員として勤務していたという。


その日は朝から立て続けに臨時業務の対応に追われ、なんとか休憩時間を確保出来たのは十六時を回ってからだったそうだ。


昼食もとらず働き続けていたので何か腹に入れようと、棟の一階にある人もまばらな職員専用の食堂へ入った時だ。



食堂のテーブル席が並ぶその奥、外の景色が見える一面の窓の向こう側に、巨大な白蛇が夕暮れの窓の外を泳ぐようにして横切るのを見たという。





大型のしめ縄程のサイズだったらしいが、「大型のしめ縄」と聞くと僕は出雲大社のしめ縄ぐらいしか思い浮かばない。




まるで怪獣だ。



とはいえ本人が絶対に見た!と言う以上、信じるのが僕のスタンスなのでマジでデカかったのだろう。南米のアナコンダも比じゃない。




朱く染まる夕暮れの景色の中を、真っ白な巨体をうねらせた大蛇が悠々と泳いでいく。



友人の母は、その雄々しい姿に強い畏怖を感じ、大蛇の尾の先が窓枠から見えなくなるまで食堂の入口からぽかんと眺めていたという。


食堂内には他に何人かの職員が居たそうだが、誰一人窓の外を気にするような素振りは見せなかったそうだ。








一般的に白い蛇は「神の使いや縁起が良いもの」として扱われ、信仰の対象としても日本各地で祀られている。



友人の母も縁起が良いとされる白い蛇(それも大蛇である)を目の当たりにし、
「これはえらいもんを見たぞ。宝くじなんか買ってみようか?」などと喜んでいた。



そのわずか数時間後のこと。






同じ施設内、備え付けの非常階段で足を滑らせ、そのまま落下。
両足を複雑骨折する大怪我を負ったそうだ。


全治三ヶ月。



幸い病院内での事故であったため、迅速な対応と処置が行われたのだが、不運極まりない。





巨大な白蛇とこの不運な出来事が果たして関連しているのか?までは分からないが、
必ずしも縁起が良いとされるものを見ると良いことが起こる、という訳ではないらしい。




そんな不思議なエピソードを聞かせてもらった。






ネットなどで軽く調べてみると、
俗信として秋田県では「白蛇に出会うと災難が続く」や、愛知県では、「白蛇を見ると死ぬ・祀ると福がある」、紀伊北部では「白蛇にはさわるな」などの言い伝えがある。



これらのように一般的な縁起の良い白蛇のイメージとは違い、悪因、祟りの発生源として扱われるケースも少なからず存在するようだ。







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