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映画『怪物』を見た感想

今年見た映画の中で一番ダメージ食らった作品。


監督は「万引き家族」の是枝佑和。脚本が「花束みたいな恋をした」の坂元裕二。音楽が坂本龍一とビックネームが揃う作品。

学校という中で起こった事件にたいして複数視点で描かれる。
視点がかわるごとに描かれていた内容の側面が浮き上がり、見え方が180度変わる。
視点の変化は大きく3回、シングルマザーの母親、早織(安藤サクラ)、学校の先生、保利(永山瑛太)、事件の渦中にいる少年2人。湊と依里

事件の真相はなんなのか?怪物は誰なのか?
という物語。情報が多いので、3人くらいで見に行って、見終わった後、やいのやいのいいながら意見を交換してるといいかも

また辛い描写が多いので、一人でいくより友達といった方がダメージ分け合える気がした、、出てくる役者さんの演技が上手いのでより辛い描写が引き立つというお話になっている。辛い、、

小学校という舞台での複数視点の怖さ

構成としては「桐島部活やめるってよ」に近い。(見てない人に伝わらなくてすいません、、)

同じ時間経過を別視点で何度も描くことで、その時間に別の人は何をやっていて、実はこうつながっていてという関係性が紐解かれていく。なので2.3度同じシーンを見ることになる。

、、でこの方式が小学校を舞台にするとやばい。まだ事実を自分の主観と客観で分けれない、いいあらわせない子供の証言で描くことでびっくりするくらい怖くなる、、事件の事実がまったくつかめないサスペンス、、

そこに子供を思う親、責任問題を問われる教師の対応、はたまた報道による過熱と週刊誌まで絡んできて膨れ上がる、、

伏線とモチーフ

もうこういう設計にしてしまったら、何が効くって伏線がめちゃめちゃきいてくる。序盤~中盤にかけてはすれ違う証言。親と教師の2人の目線を追っていってもまだ見えない部分が多い(あと辛いシーンが多い、、)のでずっと心がざわざわしてしまう、、

最後の視点変化の事件の渦中にいる子供2人になったとき、はじめて全体像がわかっていく。
「あ!こうつながっていたのね」とパズルが解けるようにピースがはまってくのだけど、そのまま終わらない、、

2人の子供の視点になったときにも、まだ解明されない謎や隠喩的なモチーフが結構でてくるから、こっからは想像力と解釈の世界。

ラストをどう受け取るのかでも大きく違うし、、
ぼくにはここまで視点変えて価値観180度変えながら見させられたら、深読みせざる負えなくないか、、?とおもってしまったのだけどどうだろう?

見るに人によっては救いがあるし、見る人によってはさらに絶望なので判断の分かれるところだと思う

個人的な結末への感想(ネタばれあり)

二人の子供が廃墟になった車両で遊んでいるシーン。辛い作中の中で唯一の救いのようなシーンがこのあたりなんだけど。

車両に星のような飾りを吊るしたり、嵐が来た雨の音に「この電車、動き出すのかな?」のセリフだったり、二人でいう生まれ変わりの話だったりは「銀河鉄道の夜」がモチーフ。

ジョバンニとカンパネルラの作中冒頭の姿が学校内での2人の関係性とかぶる。いじめられる依里、がそれを止めたいけれど遠巻きにみるしかできない湊。

2人が実は同性愛者で依里はそれを父に伝えてしまったことで、虐待を受けている。作中の依里がかく「鏡文字」本当の自分を伝えられないSOS。

湊の方は、自分が同性愛かもと思っていつつも、確信が持てていない。
、、くらいの段階でどちらかというとこの子、他人への共感力がめちゃめちゃ高い子だと思う。

消しゴムでめちゃめちゃに消そうとするのは前にすわっているクラスメイトの癖だし、依里が父親に言われたセリフを自分が先生に言われたといってしまうくらいに他人の気持ちになって考えれる。
相手の感情が自分の中に溢れてきて、暴れてしまう。そんな子供にみえた。

その二人が嵐の中、廃墟の車両が土砂崩れで埋まった後に、下から抜け出して「生まれ変わったのかな?」「生まれ変わったとかはないとおもうよ」と言い合い笑顔で晴れてる空の下、二人走り出すのがラスト。

もうここまでいくとこのシーンがあまりハッピーエンドにみえなくて、、

下から抜け出せるような構造、そもそもあったの?ここでしかでてなくない?
時系列的に夜のはずなのに、外が昼っておかしくない?
銀河鉄道の夜がモチーフって、、



怪物について

早織が校長に言うセリフ「本当に人間なんですか!?」保利先生が同僚の先生からの忠告「親なんてモンスターですよ」依里の父親が訪問した先生に対していう「あいつは怪物ですよ」
子供2人での車両での遊び「怪物だーれだ」

作中に怪物、または想起させるセリフが沢山でるのだけど結局、怪物ってだれだったの?

作品内で視点が切り替わると同時に見え方がかわるように、怪物という存在も人によって変わる。

主題にそっていうなら2人の子供に対しては世界に受け入れられないという不安から自分のことを「怪物」なのかもしれない、、と思ってしまうことが主題に近いかも、、

湊へ校長先生が言うセリフ
「だれかだけが持てる幸せは幸せとはいわない」「だれにでも持てる幸せを幸せという」

そういう世界であってほしい。



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