【香港99日間 #36】アートギャラリーで行われているワークショップに参加してみました
香港に行く前から情報収集のために聞いていたポッドキャスト「香港姉妹のネイホウRadio」にお便りを送ったところ、第119回の放送で取り上げていただいただきました(放送はこちら)。さらに、質問していたおすすめのアートスポットについても教えていただきました。
その中で、香港島側のクオリーベイ(鰂魚涌/Quarry Bay)という駅の近くにある「Para Site」というギャラリーでワークショップがあり、ポッドキャストのパーソナリティのnaokoさんもいらっしゃると聞き、私も早速予約をして参加してみました。
ワークショップは「An Afternoon Stroll in Quarry Bay (午後のクオリーベイ散策)」というテーマで、内容は、1970年代に書かれた詩の中に出てくるクオリーベイ周辺の場所をFrank Tang Kai Yiu (鄧啟耀)さんというアーティストの方と実際に歩いて回り、ZINE(個人や数名で作成する自主出版物のことで、数ページの小冊子のようなもの)の形にまとめるというものでした。
クオリーベイは中環(Central)駅から地下鉄で15分ほどの場所にある、香港島側の住宅用のマンションが並ぶエリアです。山と海に挟まれているだけでなく高速道路も通っており、非常に狭い土地ではあるのですが、公園も確保されています。
ワークショップ会場のギャラリーでは「signals…here and there(瞬息……彼/此)」という展覧会が開催されていました。せっかくですので、少し早めに到着し鑑賞することにしました。この展覧会は25人のアーティストによる共同開催で、6ヶ月の会期の間に3回に分けて展示をするというシリーズものになっています。それぞれの回にテーマがあり、今回はその3回目で「香港の都市としての変容」がテーマでした。展覧会のタイトルにある、「here」と「there」いうのは、香港に「今いる人」と「去った人」のことで、signalsは今いる人から去った人へのシグナルという意味が込められているようです。
ワークショップでは、私たちは詩という形で香港の過去の都市の形を受け取り、さらにZINEという形で未来もしくは香港以外の人々へ受け継いていくという意味が込められているのかもしれません。
いよいよワークショップの始まりです。最初に内容についての説明を受け、簡単な練習をしたあとに実際に外に出てクオリーベイの街を回ります。それぞれの場所で印象に残ったものを各自で記録していきます。記録するものは視覚的なもの以外でもよく、音や匂いなどでもよいそうです。
参加者は全部で15名程度でした。20歳前後の年齢の方が多かったようです。美術系の学生さんでしょうか。活躍されているアーティストの方と直接触れ合える機会というのは学生さんにとっては大いに刺激になりそうです。
テーマとなる詩は1974年に書かれたもので、クオリーベイに住み、働く人々の日常について書かれたものです(詩と日本語訳を記事の末尾に掲載します)。
ZINEは参加者それぞれに配布され、最初ページにはあらかじめ大きな木が描かれています。この木は実際にギャラリーがある通り沿いにある木(航空写真の①の地点)で、これはアーティストの方が描いたものです。ここを起点に参加者自身で描き足していきます。
下の写真はアーティストの方が注目していた、消火栓の場所が記録されているマークです。
詩の中でも登場しますが、この通りには葬儀屋があり、近くには花屋があります。
街路木、消火栓、花屋、これらは日常の何気ない風景ですが、数十年まえから存在し、これからも残っていくのでしょう。
続いて住宅地に入ります(②地点)。写真の建物は普通のマンションのように見えますが、昔は娯楽施設だったそうですが、今はその役割を終え住宅になっています。
この建物の左端に装飾が見えます。夕方になると、この穴から日が差し込み、地面に模様が現れるそうです。
続いて小さな公園に移動しました。Pocket Parkという名前で紹介されていてましたが、ベンチが置いてあり、ゲームをする人々や音楽を聞く人々などがいて地元の方の交流や憩いの場になっているようです。
続いて、海側にある大きな公園に移動しました(③地点)。アーティストの方も言及されていたのですが、ここまで来ると不思議と街の喧騒が急に聞こえなくなります。
クオリーベイエリアにはKing's Roadという大きな道が貫いています。この道は香港島の北側のエリアを東西に伸びているので交通量もそれなりにあります。道沿いは非常に騒がしいのですが、道沿いに立ち並んでいる高層ビル群が音を遮断してるのか、ビル群の裏側にある公園は静寂な環境が保たれているようです。
最後に、ギャラリーのある建物に戻り、屋上まで上りました。詩の最後の一文に「有時奢想飛翔(時々、飛びたくなる)」とありますが、それを象徴しているようです。
ワークショップに参加し、自分にとって主観的に何が印象に残ったかを、書き留めるという作業を通じて、自分が目の前にしたものや、それによってどのような印象を受けたのかを、丁寧に向き合うことができました。
これは普段アーティストの方々でしたら、対象を深く観察し、作品にするということを日々されていて、訓練もされていることだと思います。クオリーベイは一見するとほとんどの観光客にとっては決して面白い街ではないかもしれません。しかし「印象に残ったものを記録して、まとめる」という作業をするだけで、感度が高くなり、これまでよりも自分の中に刻み込まれたと感じ、この街に親しみを感じられるようになるという。非常に貴重な体験をしました。
今回、「香港姉妹のネイホウRadio」のnaokoさんとの交流もありました。素晴らしいワークショップをご紹介いただき感謝していております。(ステッカーもありがとうございます!)
今回のワークショップでモチーフになった詩を紹介したいと思います。
私は広東語は分からないので自動翻訳したものを元に、自然な日本語にしたものを掲載します。作者の意図が正確に伝わっていない可能性はありますが、ご容赦ください・・・。
聽日見!
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