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ザオリク図書館「ズッコケ三人組の未来報告」レビュー

 今回のズッコケ三人組レビューも、タイムスリップエピソードの巻です。過去にドラマCDも出たらしい人気巻ですが、花山第二小学校六年一組メンバーの未来? が描かれる珍しいエピソードです。
 後年作者が書いた、「中年ズッコケ三人組」シリーズの未来とは、やや異なるものの、共通する要素も多く興味深いです。おそらくこの話の未来設定が、後年下地になったと思われます。

 お話は六年一組が、タイムカプセルを埋める記念行事の討論をするシーンから始まり、カプセルを二十年後に掘り出すと聞いたハチベエは、学校からの帰宅途中、ミドリ市の未来予想図を色々と思い浮かべます。
 この本が発売されて(1992)から二十年後、ということですから、もう現在はだいぶ過ぎてますが、的中してるのはコンピューターが発達して、授業が家で受けられるかもってとこぐらいですね。まあこの本でも、実際未来に行くと、まだ普通に学校通ってるんですが(笑)
 未来では働く時間がどんどん減って、レジャー業が盛んになり、ホテルが儲かるというハカセの発想は、現代と共通する予測で面白い。

 そしてその晩、ハチベエは唐突にタイムスリップします! 何の脈絡もなく、二十年後に三十代の親父となったハチベエが、いきなり目覚めるところから始まります。
 大人になった彼は、同級生の安藤圭子と結婚しており、一平と良介なる二人の息子がいます。このへんは後年の史実と同じですねえ。今回の職業は八百屋さんのままですが(史実では八百屋から転職→コンビニ経営)

 そんなハチベエは、小学校同窓会の幹事をやることになり、奈良から一時帰郷するハカセを空港に迎えに行きます。ハカセは今や、埋蔵物研究所の研究員で、古墳や遺跡などを日々調査している身。(史実では中学教師)
 なおモーちゃんは、ミドリ市の一流ホテル「ミラクルホテル」で、フロントマンを務めています。なんと奥さんは、24歳の金髪フランス女性・ジャクリーヌである! 後年の史実シリーズと一番設定が食い違うのは、このモーちゃんかなあ。中年シリーズでは、インテリア会社勤務で、普通に日本人OLと結婚するんだし。

 それはともかく、同窓会の下準備中、開封予定のタイムカプセルを紛失していることが発覚します。どうも掘り出した後、学校の保管庫から誰かに盗まれた可能性が高い。
 困ったハチベエは地元の同窓生たちと小料理屋で話し合うも、盗難事件の真相は藪の中。やむをえず、そのままカプセル無しで同窓会を続行することに。
 またその飲み会では、アメリカの正体不明ロックスター、ジョン・スパイダーなるミュージシャンが、ミドリ市で偶然同時期に、コンサートを開催する話題でも盛り上がります。

 ところがその後、何者かによって、タイムカプセルは無事学校に送り返されてくるのです。
 当初、犯人の目当てかと思われたカラテマン(アニメ)のプレミアカードも、そのまま手つかず。しかしなぜかカプセルからは、アメリカで交通事故により、亡くなった元同級生・長嶋崇の作文や自画像だけが消えていたのでした。
 元クラスメート・長嶋崇君とは、地元の中学を卒業後、東京に引っ越して、高校を僅か一年で中退。その後は音楽の道を志し、アメリカに家出してしまった少年である。彼は数年後に、ロサンゼルスで交通事故死してしまったという。なぜ彼の将来の夢を記した作文だけが、消えていたのか?

 ところで、中盤の盛り上がりどころは、モーちゃんの働くミラクルホテルでの同窓会パーティーです。七十過ぎた宅和先生はじめ、二十年経過して、成長した一組メンバーが次々に登場し、随分にぎやかなイベントシーンとなります。
 いまだ独身のハカセは史実通り、クラスのマドンナ・荒井陽子と親密に接近。ハチベエ×圭子、ハカセ×陽子のカップルは、この頃から作者の中で確定事項みたいです。

 その後、長嶋崇の作文紛失の謎を解くため、ハカセは陽子と共に、世田谷在住の老婦人・長嶋豊美(母)の元を訪ねる。すると崇の交通事故は、ギャング団に襲撃された最中のものであり、さらに何者かから長嶋母に、ジョン・スパイダーコンサートのVIPチケットが送られていることがわかる。
 一体、ジョンと亡くなった長嶋君の間にどういう繋がりがあるのか? ハカセは推理力を働かせ、ある可能性にたどり着いた。

 元同級生の芸能リポーター、鈴木和代の協力を得て、来日したジョンが長嶋崇のことを知っていると確信したハカセは、ハチベエ、モーちゃんらとホテルのフロントに変装、ジョンの宿泊するロイヤルスイートに直接会いに行くのだった・・・・・・というクライマックス。
 はたして謎の男ジョン・スパイダーの正体は? 交通事故の焼死体は本当に崇なのか?

 まあ真相自体はありがちなんですが、最後は親子愛の感じられる暖かなハッピーエンドです。これからもジョンは世界的音楽スターとして、大活躍することでしょう。
 ただし、このお話、ハチベエの夢オチなんですけどね(笑)読んでて、多分こういうオチなんだろうなあ、とは思いましたが、王道だなー。
 実際の長嶋くんが、ロックではなく、演歌志望だったというラストは微笑ましい。




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