見出し画像

血の香りを味わう

始まりはクレーム対応だった。

喫茶店で相手が不快に感じたことをとにかく謝っていた。しかし、相手の怒りはなかなか収まらず、だんだんと怒りはエスカレートし、脅すような言葉使いになってきた。身の危険を感じたので、解決するために交番に行ったのだが取り合ってもらえず…酔っ払いだと思われたのだろうか…

もうすぐ終電時間で、このままだと帰れない。タイミングをみて逃げるしかないと思った。
相手が僕の肩を少し離した瞬間、思っ切り走った。ものすごく全力で走った。大声を出しながら追っかけて来ていたけど、振り向かずに全力で走り続けた。後ろから声も足音もしなくなり、諦めたみたいだった。気付くと、血の匂いがしていた。鼻血かなと思って確認したが鼻血は出ていない。
全力で走り過ぎたので、その衝撃で内臓が壊れたのかと思って驚いたけど、激しく走ると肺を血がどんどん巡ることで呼吸の中に血の匂いが漏れこみ混ざるみたい…

逃げることができてよかったという安堵感が血の香りとマッチして独特の思い出となった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?