香 水

analog records / film

香 水

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    何でもない日を覚えておくための記録

  • essay

最近の記事

20240419

あの時心が動いたはずの作品なのに、もう内容を忘れてしまっている自分に怖くなった。 記憶力は少し良い方だと思っているけれど、沢山見て聴いて触れても私の中に覚えておけることは限られている。 また過去の下書きを見つけて投稿。 何があってこんなことを思ったのか、この時のことを全く思い出せないのが不思議である。 ただ、この気持ちはとても分かる。過去の自分は少し気の合う他人だなと思った。 知人の日記を読んで、急に数年前が恋しくなった。 停滞してしまっているようで焦っていたけれど穏や

    • だからそれはクリープハイプ

      高校生のとき、憧れの女の子がいた。 会ったことはないけれど同じ県内に住んでいて、きっと歳も同じくらい。どうしてその子を見つけたのかは分からないが、当時念願だった携帯を手にしてそこで辿り着いた彼女のブログのようなものを読んでいた。 彼女にはヤンキーちっくな見た目の、変わった名前の恋人がいて、同じ田舎の高校生でも多分少し街の方の高校に通っていた。正確には憧れとはちょっと違うのかもしれないけど、周りにはいないタイプの女の子だったからか、私の目には世界の違う人としてどこか魅力的に

      • ラジオ

        「やってないイベントのやってない思い出にいかがですか〜!」という元気な声にクスッときた。 深夜ラジオのちょっとした広告で流れた、お笑い芸人の中止になったイベントのグッズ販売のお知らせ。 家から出ることができない漠然と不安な日々が続いていた2020年の下書きを開いてしまって、ここから現在。 眠れない夜、気を紛らわすために流していたラジオからの人の声に元気をもらったことを今でもよく覚えている。

        • 20211030

          この場所を都合良く思い出しては記録。 仕事のお昼休憩で外に出た。今日は珍しくあまりお腹が空いていない。ここ数日は忙しいから、午後のためにコンビニで目に入った肉まんを買って、足が向かうのは公園の隣の小さな広場、静かなベンチ。寒い日は続くのに、春みたいな過ごし方をしているのに気付いて嬉しくなる。 少し先で聞こえる子供たちの声や電車の音、通り過ぎていく人の靴と落ちてくる枯葉の乾いた音、時々鳥も鳴いている。風はそこまでなく、晴れた日の木陰が気持ち良い。 1人で良い時間を過ごして

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          9本

        記事

          20210810

          言葉の大切さは理解しているし、好きだし、でも同じくらい言葉にならない感情も大事で、多くを語らずともそれが伝わる魅力だって知っている。 自分のことを聞かれて話す度「好き」を括ってしまっているような感触が残ってずっと気になっていた。奥歯に何か挟まっているような悪い違和感は続く。私は枠に収まりたくないし、誰かの中でそうなるのも嫌なのだろう。せめて周りを気にせずに生きていけたら、どんなに楽だろうか。最近はそれ自体を諦めた方がいいのではないか、とさえ思い始めている。 実は、書きかけ

          20210711

          「好きになりたい」という気持ちは一体何なんだろうか。 今まで自分に好意を寄せてくれる人がいた時、何度かそう思ったことがある。それは、意識を向けると同時に好きになろうとすることに近いような気がして違和感もあった。 雨のことを好きになりたいとずっと思っている。 雨の日の良さを少しずつ頭で分かるようになっても、梅雨が思っていたより早く明けそうなことに、喜びを隠せないどうしようも無い自分がいる。まだまだ時間はかかりそうだ。 夕方、嵐のような文字通りの横殴りの雨が降った。 仕事中

          歯ブラシ立て

          新しい服が欲しくて出かけた日、とことん良い出会いがなかった代わりに何となく気に入った歯ブラシ立てを購入。 今まで使っていた白い歯ブラシ立ても気に入っていたのに、新調してしまった。片方に歯ブラシ、片方にコップがかけられるのが便利で愛着があった。 新入りは歯ブラシが4本立てられるステンレス製。水回りの雰囲気が変わってこれまた良い。 もう既に3箇所が埋まっている。誰もが来客用かと思うが、まさかの全部自分の歯ブラシ。 ブラシの硬さとか長さとか、そういうこだわりで3本持っている訳

          歯ブラシ立て

          20210602

          「時間が経つのが早い、もう6月だ」みたいな話と「日が長くなった」みたいな話ばかりしている。いくらでも言いたい、私にとって大事なことだ。こんな話をできる間柄の、日々会う人たちのことも。 時間は人を不安にさせる。しばらく触れてなかった仕事は手に吸い付くように感覚が覚えているし、しばらく会っていなかった人と前より仲良くなっているような気さえする。良いんだけど、頭ではこんなはずじゃなかったから、良いんだけど。 いつもと同じように警備の人に鍵を渡して、通用口から帰る。 「前に僕、

          20210421

          エレベーターの中で 「カフェラテ、とか飲むイメージ」 「太るのでこれっすね」 斜め後ろから聞こえてくる男性の会話、絶妙な間が良い。何を買ったのか気になっていた。5階で降りる部下らしき人の手にはペットボトルのブラックコーヒー。 「カフェラテって太るのか、そうか」と考えていた、9階に用がある私。 目を瞑っても歩けそうなほど、毎日使う乗り換えの駅にて3択。エスカレーターの左側、右側、あとは階段。エレベーターは選択肢にない。 エスカレーターの右側を登る、前の人の足元から靴下

          20210303

          行っていいのか、言っていいのかの躊躇いは消えずとも、自分で出来ることは守りながら好きなバンドの曲を聴きに。こんな半休の使い方、形だけが大人になったようでどこか落ち着かない。 CDプレイヤーやイヤホンで聴くのも本当は同じくらい好きで、それでも足を運ぶというのは目の前にいるということで。絶対に目を開いていた方がいいのに、時々その場で目を瞑るという贅沢も好きで。 喜びと悔しさを込めた2時間の詰め込みパックは文字以上にあっという間で、ルール上仕方のない呆気ない終わりに、部屋に1人

          20200929

          ほとんど1人で過ごしていた日々から、生活が二転三転している間も、私の中にある感情が溢れてしまいそうになった日の帰り道にはこの場所のことを思い出していた。 残しておきたい些細なことを記していたはずが、後で恥ずかしくなるのはお決まりで、何度も消そうと思いながら家に着くと忘れていた。そんな日々にいながらも、今ふとここに戻ってきているから不思議だ。 向き合う時間がありすぎた春も苦しかったけど、気付けばそんな時間もない日常に戻っていた。生活も落ち着いてきて、向き合おうとした矢先、特

          20200515

          早く起きて布団から出ても眠い日がある。気が付けばうたた寝していて、オンライン飲み会の誘いの連絡が入っていた。あんまり気乗りしないまま、断るのも面倒になって遅れて返信する。会いたい人は沢山いるし、顔が見たいし、話したいけれど、画面が厄介で堪らない。そもそも電話が好きじゃなくて、それなら私が走って会いに行く!という気持ちが常にある。 少しでも気分を上げるために買った、ちょっと良いチーズと適当に選んだワインを自分のためにテーブルに並べる。普段から家で飲まない人間が慣れないことをし

          20200512

          日が長くなってきたのを部屋の窓から、しっかり感じている。これは今まで外で感じていたものだ。カーテンを閉めるタイミングを気にする日々、外で気付いてきた時よりも日の沈む時間の変化を細かく感じとっている。 最近は、豆苗の水を変えるのが日課になった。成長が愛おしい。あっという間に背を伸ばす。窓際を掃除して、部屋の座ったことのない位置に椅子を置いてみる。少し汗ばむのを感じて、まだ春にいる私は季節に置いていかれているなと思った。優しく入ってくる風が首の後ろをすり抜ける。襟足も随分伸びた

          20200505

          友人のバンドのライブ配信アーカイブで、久しぶりに誰かと顔を合わせた気分になった。弾き語りの配信だったようで、明日までの資料を作りながら聴いた。 在学中から好きなバンドで、ライブフライヤーをデザインしたこともあったし、学内でライブがあると足を運んだ。最近は会っていないけれど、卒業してからも名刺のデザインを依頼してくれて嬉しかったのを思い出した。ただ「仲の良い友人の友人」という距離感が長かったこともあって未だにどこか掴めず、会うと少しぎこちなくなってしまう。本人には伝えたことは

          オラファー・エリアソン

          日曜美術館でオラファー・エリアソンの特集が組まれていた。現美で延期になってしまった展覧会のための措置。 好きというには勇気がいる。ここ1年程で気付いたことは、自分で思っていたより、自分はアートが好きだということだった。「詳しくはないけど」を後ろにつけないと、好きだと言えない。 美術館に行くような家庭ではなかったけれど、21世紀美術館にはよく連れて行ってもらった。そこで彼の名前を知っていたから、すごく馴染みがあった。それなのに、彼がこんなにも私たちの未来を、環境のことを考え

          オラファー・エリアソン

          20200501

          あれから、これといった会話はなかった久しぶりの歯科で「スカートなの珍しいですね、可愛い」と若い女性。確かに最近パンツの方が圧倒的に多かった。髪をバッサリ切ったこともあって、何となくスカートに手が伸びていなかったことに気付く。他の患者さんと顔を合わせることも減っていたし、イヤーカフの女性は全く見かけなくなった。ただのタイミングかもしれないけれど。 外は夏が始まるかのように暑い。少し散歩をしようと思ったのに、ドラッグストアに寄って帰ることにした。ちょっとした並木沿いの道で、老夫