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【読書記録】2023年6月25日〜7月1日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 コロナが5類になってまもなく2ヶ月。
 テレビではほとんど取り上げなくなったし、街を歩いていてもマスクをしていない人が多くなってきました。
 確かにワクチン接種も進み、重症化のリスクは減ってきましたが、実のところコロナが無毒化したり、感染力が低下したというわけではありません。
 コロナの特効薬が完成したという話も聞きませんし、一説には5類になる前に比べて感染者が2.5倍という話も。

 私はといえば、今週になって職場でコロナのクラスターが発生し、仕事にならない状況となったため、早めの夏休みをいただいております。
 夏の文庫フェアも始まりましたし、せっかくお休みをいただいたので、一歩一歩、いや一冊一冊積読山脈を切り崩しています。

 …ということで、今週出会った本たちを、毎度の如くざっくりご紹介。

【2023年6月25日〜7月1日に出会った本たち】

⚪️暗いところで待ち合わせ

著者 乙一

【内容紹介】
 視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まったー。書き下ろし小説。

裏表紙より

【感想】
 まず、この書影だとホラーかサスペンスと勘違いしそうですが、読んでみたら純愛ミステリーでした。
 ある駅で起きた殺人事件。容疑者の青年・アキヒロは一人暮らしの目の見えない女性・ミチルの家に入り込み身を隠します。
 アキヒロはミチルに気付かれないように息を潜め、ミチルは気付かないふりをすることで身を守ろうとします。
 孤独な二人の心の距離が徐々に近くなって…。
 最初にアキヒロがミチルの家に入る時、玄関を開けたミチルの横をそっと通って家の中に入るのは「さすがに気づくでしょう」と突っ込みたくなりますが、それを言ってしまうと物語が始まらないので…。
 否定的なことばかり書いていますが、純愛ストーリーとしては申し分なしですし、目の見えない人が街を歩く時どう感じているかなどを知ることができる素敵な物語でした。

⚪️ブラック・コール
 行動心理捜査官 楯岡絵麻

著者 佐藤青南

【内容紹介】
 行動心理学を用いて相手のしぐさから嘘を見破る、警視庁捜査一課の美人刑事・楯岡絵麻。その手腕から“エンマ曜”と呼ばれる。元教え子を8年間監禁した容疑をかけられる美術教師の真相とは。他人のパソコンを遠隔操作して殺人予告を書き込んだ容疑がかかるプログラマーと、彼についた人権派弁護士との対立。そして15年前に絵麻の恩師を殺害した犯人との直接対決など、難事件に挑む!全4話収録

裏表紙より

【収録作品】
イヤよイヤよも隙のうち
トロイの落馬
アブナい十代
エンマ様の敗北

【感想】
 エンマ・サーガの第2弾。
 この物語は、取調室と事件解決後の居酒屋での打ち上げシーンが中心なので、深夜の低予算ドラマにピッタリなのでは。
 物語の中心は、絵麻が警察官になるきっかけとなった15年前の事件。もっと引っ張るのかと思いきや、この巻で事件の真相が明かされます。
 「エンマ様vs大脳新皮質が大脳辺縁系を超える男」というのはドキドキしました。
 一番心に残ったのは、体育祭に爆弾を仕掛けた少年の話〝アブない十代〟この話の緊張感はなかなかでした。

⚪️血の轍

著者 相場英雄

【内容紹介】
 元刑事が絞殺された。警視庁捜査一課の兎沢は、国家を揺るがす大事件の真相に元刑事が辿りついていたという糸口を掴むも邪魔が入る。立ちはだかったのは公安部の志水。兎沢に捜査のイロハを叩き込んだ所轄時代の先輩だった。事件の解決を泣ぐ刑事部と隠蔽を目論む公安部の争いが激化。組織の非情な論理が二人の絆を引き裂く…。胸打つ警察小説!

裏表紙より

【感想】
 元刑事の殺人事件から始まる物語は、刑事部と公安部の縄張り争いへと発展します。
 泥臭く事件を追いかける刑事部と、国家を守るという大義名分を掲げ隠密や暗躍といった言葉がピッタリの公安部はまさに「轍」の如く決して交わることはないのでしょう。
 事件の証拠を先に手に入れるのは刑事か公安か?
 そして最後のお互いの足を引っ張り合う泥試合的な展開はドキドキが止まりませんでした。
 元上司と部下だった志水と兎沢、結局袂を分つことになってしまいましたが、どちらの境遇も切なく…。
 それにしても公安総務課長の曽野の周到さというか狡猾さには驚かされました。

⚪️ヘビメタ中年!

著者 荒木源

【内容紹介】
 梅が岡高校時代にヘヴィメタルバンド・ブラッククローを組んでいたメンバー四人は、三十余年の時を経てバンドを再結成する。当時と比べて、みな外見に変化はあるものの、ヘビメタを愛する気持ちにまったく変わりはないのだ。今は市民病院の医者であるボーカルの江並は、ある日、手術予定の患者・山口から手術を拒まれる。聞けば、ライブハウスで完全ヘビメタ仕様で絶叫する彼のライブ映像を目にしたようだ。代わりに近隣の病院で手術を受けるという山口だったが、その担当医を調べていくうちに、江並はあることに気づく。話は思わぬところまで波及していくー。

裏表紙より

【感想】
 3年くらい前に読んだ〝オケ老人〟の続編的物語。
 懐かしい面々も時折登場します。
 今回の主人公は高校時代に「ブラッククロウ」というヘビメタバンドを結成し、紆余曲折あったものの、現在も仕事をしながら細々と活動を続けている中年男たち。
 自分はこの世代より少し後、パンクロック全盛の時代だったけれど、物語の中に登場するメタルバンドの代表曲くらいは知っていて、思わずニヤニヤしてしまいました。特にラウドネスや、アースシェイカーといったいわゆる「ジャパメタ」バンドがとにかく懐かしい。
 自分も年齢的には主人公たちと同じ世代。なんかまたバンドとかやりたくなってきたゾ!

⚪️時生

著者 東野圭吾

【内容紹介】
 不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追ったー。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。

裏表紙より

【感想】
 宮本拓実・麗子夫妻の息子・時生が不治の病により最後の時を迎えようとしていた時、拓実は麗子に「20年以上前に時生に会ったことがある」と打ち明けます。
 息子が未来から過去の自分に会いに来るというSFストーリーですが、この主人公の拓実が途中で読むのをやめようかと思うくらいのクズ男。
 拓実に比べて拓実の彼女・千鶴の失踪事件の解決に奔走する竹美の方がよっぽど男らしいくらい。自分が時生だったら多分、腹が立って、情けなくて、愛想をつかして放り出してしまうと思います。
 最後に日本最大のあの事故が関わってくるのは驚き。
 後半はかなりグッとくる展開で、ページを捲る手が止まりませんでした。

⚪️国道食堂
 1st season

著者 小路幸也

【内容紹介】
 神奈川県の小田原から山梨県の甲府へ向かう国道沿いにある通称「国道食堂」。ドライブインというより、大衆食堂という感じだからか、そう呼ばれている。店の中にはプロレスのリングがある。店主が元プロレスラーだからだ。この店のメニューは、どれも素晴らしく美味い。近隣だけでなく、遠くからも客が来る。なかには、ちょっとワケありな客もいて…。

裏表紙より

【感想】
 国道517号線の途中にある昔でいうところのドライブイン、通称国道食堂には、プロレスやボクシングで使うリングがあります。なぜそんなものがあるのかというと店主の本橋十一が元プロレスラーだから。
 なんだか突飛な感じもしますが、この食堂とリングが少し辛い境遇にある老若男女の心を繋ぎ、優しく包んでくれます。
 最近はどこに行っても似たような店ばかりで、こういう感じの個人経営の店って本当に少なくなりましたね。
 登場人物が多めの全15編の連作短編集ですが、各話で主人公が異なるので混乱することはありません。
 昭和レトロ感漂う人情物語が好きな方におすすめの一冊です。

⚪️国道食堂
 2nd season

著者 小路幸也

【内容紹介】
 唐揚げや餃子カレー、どの料理も美味しく、地元の人々だけでなく、店の前を通るドライバーたちに愛され、「国道食堂」とも呼ばれている「ルート517」。店内にはプロレスのリングがあって、プロレスだけじゃなく、音楽ライブなど、色々なイベントをやっている。様々な人が集うこの店には、偶然か必然か、運命の悪戯ともいえる、とんでもない出来事が起こることがあって…。

裏表紙より

【感想】
 1st seasonから1年後。
 前作で中心人物の1人だった二方(兄)は役者としてデビュー。
 食堂の2階に住むことになった空くんは大学生に。
 機械メーカーの上司・部下だった篠塚・久田の歳の差カップルが国道食堂のリングで結婚式をすることになり…。
 そんないくつものエピソードの中心にいるのは元プロレスラーにして食堂の店主・本橋十一。彼はまさに人と人との縁を結ぶハブのような存在で、こういう人って現実世界でも時々見かけます。実は私のパートナーもそんな感じの人です。
 今回もたくさんの人たちが不思議な縁に導かれ結びついていきます。
 一番心に残ったのは、

「年寄りの役目は、若い人に、未来を作らせること」

本文より

 …こんな言葉が胸に沁みる年齢になりました。

 そうそう、1st seasonと合わせると登場人物がとんと増えてきてそれぞれの関係も複雑になってくるので、人物相関図が必要になってくるかも。
 何はともあれ、「東京バンドワゴン」シリーズのように、ずっと続いて欲しい物語です(まだ読んでないけど)。

⚪️逆ソクラテス

著者 伊坂幸太郎

【内容紹介】
 「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担任の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか!? 表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。

裏表紙より

【収録作品】
逆ソクラテス
スロウではない
非オプティマス
アンスポーツマンライク
逆ワシントン

【感想】
 2023年「夏の文庫フェア」はこの1冊からスタート!!
 3年前に読んでずっと文庫化を待っていた作品です。
 あの時は「僕はそうは思わない」というセリフのインパクトが強すぎて、他の話のことはほとんど忘れてしまっていたのですが、5編どれも甲乙つけ難く心に沁みます。
 肝心な時に躊躇して一歩を踏み出せない「アンスポーツマンライク」の歩くんの気持ちがよくわかる私。
 特に小学校の先生・磯憲の言葉

「小学校ではスポーツが出来る子、中学では格好いい子や面白い子、高校ではオシャレな子、大人になると金持ちがモテる。でも最後には威張らない奴が勝つ」

本文より

これが人生の真理だと子供たちに胸を張って伝えてあげられる大人でありたい。
 そして、「逆ワシントン」の最後に出てきた電気店の店員が、「アンスポーツマンライク」のあの人だったとは。

⚪️️あのSFはどこまで実現できるのか
 テクノロジー名作劇場

著者 米持幸寿

【内容紹介】
 漫画、アニメ、映画、テレビドラマー昭和から平成の時代、観る者の好奇心をくすぐり、あこがれの的となったSF作品たち。そこに描かれた夢のようなテクノロジーの数々を、2023年の科学技術はいったいどこまで実現できるのだろうか?ネットワークテクノロジー、自動運転化技術、AI技術、ロボット工学、太陽エネルギーの運用、音声認識技術など、テクノロジーの現在地を、名作を振り返りながら検証していく。

裏表紙より

【感想】
 システム情報科学博士で、現在は音声対話インターフェースを研究する著者が、バビル2世、ナイトライダー、わたしは真悟、火の鳥(未来編・復活編)、2001年宇宙の旅、ブレードランナー、人造人間キャシャーン、ターミネーター、そして攻殻機動隊のコンピューター技術について、2023年現在の科学テクノロジーでどのくらい実現可能かを解説した本。
 技術的なことは理解できない部分もありましたが、柳田理科雄さんの〝空想科学読本〟同様、この手の本が一冊あれば、ドンブリ飯3杯はおかわりできる私。
 私が改めて言うまでもありませんが、やはり手塚治虫さん、楳図かずおさんは偉大です!

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 今週は警察小説からヒューマンドラマ、ミステリー、SFファンタジーまでバラエティーに富んだラインナップとなりました。
 そしていよいよ始まった「夏の文庫フェア」。
 今年は気になる作品が多くて結構買い込みました。
 雨にも、湿気にも、夏の暑さにも、コロナにも負けぬ丈夫な体を持ち、一冊一冊味わいながら丁寧に読んでいきたいと思います。

 またよかったら、遊びに来てくださいね。

最後に、
 読書っていいよね。


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