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【読書記録】2023年11月26日〜12月2日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 とうとうというか、いよいよというか、やっとというか。
 12月に入りましたね。
 昨日と同じ今日、今日と同じ明日のはずなのに、「12月」や「師走」と聞いただけでなんだか急かされる感じがしますね。
 私は、若い頃に比べるとクリスマスに気を使わなくてよくなった分、多少気が楽になったような気がしますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

 さぁ、早速今週出会った本たちをご紹介します。

【2023年11月26日〜12月2日に出会った、再会した本たち】

⚪️鏡の国のアリス
  広瀬正小説全集・4

著者 広瀬正

【内容紹介】
 銭湯の湯舟でくつろいでいた青年は、ふと我に返って驚愕する。いつの間にか、そこは「女湯」に変わっていたのだ。何とか脱出した彼が目にした見慣れぬ町。左右が入れ替わったあべこべの世界に迷い込んでしまったらしい。青年は困惑しながら、新しい人生に踏み出そうとするがー。「鏡の国」を舞台に奇想天外な物語が展開される表題作ほか、短編三編を収録。伝説の天才が遺した名作品集。

裏表紙より

【呪録作品】
鏡の国のアリス
フォボスとディモス
遊覧バスは何を見た
おねえさんはあそこに

【感想】
 広瀬正全集の4冊目。中編1編と短編3編を収録。
 表題作の中編は主人公が銭湯の湯船に浸かっていたらいつのまにか女湯に変わっていて、実はその世界は左右逆転のいわゆる「鏡の世界」だったという話。
 読み始めはとても興味深く読み進められたものの、途中からとにかく私には難しい話でした。
 特に中盤で50ページ以上を費やして語られる「鏡の世界の捉え方」はもうついていくのが大変で何度読む手を止めたことか。この感覚は、東野圭吾さんの〝超理系殺人事件〟や、山本弘さんの〝神は沈黙せず〟以来かも。
 井上ひさしさんの解説もこれまた難解で…。「耐える読書」体験でした。

⚪️季節風 冬
 サンタ・エクスプレス

著者 重松清

【内容紹介】
 出産のために離れて暮らす母親のことを想う5歳の女の子の素敵なクリスマスを描いた『サンタ・エクスプレス』ほか、「ひとの“想い”を信じていなければ、小説は書けない気がする」という著者が、普通の人々の小さくて大きな世界を季節ごとに描き出す「季節風」シリーズの「冬」物語。寒い季節を暖かくしてくれる12篇を収録。

裏表紙より

【収録作品】
あっつあつの、ほっくほく
コーヒーもう一杯
冬の散歩道
サンタ・エクスプレス
ネコはコタツで
ごまめ
火の用心
その年の初雪
一陽来復
じゅんちゃんの北斗七星
バレンタイン・デビュー
サクラ、イツカ、サク

【感想】
 この本を初めて手に取ったのは六年前。その頃のレビューを見てみたら「他の3冊(季節風シリーズ)に比べなんだか物足りない」みたいなことを書いていて…。もう、あの頃の自分をグーで殴りつけたい!
 今年は季節が変わるごとにこのシリーズを一冊ずつ読み返してきました。
 今作は「冬」がテーマ。
 どの物語もやっぱりどこかうまくいかない、ちょっと生きるのに不器用な人たちが主人公。この不器用さがなんとも心に染みます。
 自分も田舎に親を残して上京してきた身なので、田舎から届くお餅の大きさの変化で、父が亡くなったことを実感する〝ネコはコタツで〟なんて、もう。
 発達障害の同級生との関係に悩む少年の話〝じゅんちゃんの北斗七星〟なんて、ああ。
 〝火の用心〟の小野さんのような、無神経なオヤジにだけはなるまいと心に誓い、ページを閉じた次第です。

⚪️みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎
 奥会津三泣き 因習の殺意

著者 相場英雄

【内容紹介】
 福島県会津地方の田子倉ダム湖畔で、大手ゼネコン鹿田建設の副社長・薗田幸四郎が他殺死体となって発見された。大和新聞会津若松支局に出向中の宮沢賢一郎は、薗田が疲弊する地方ゼネコンの実態を見かね業界の構造改革に着手、守旧派と対立していたことを知る。薗田の事件が解決せぬまま、さらに鹿田建設の経営企画部長・保科護が姿を消した。保科の先祖はかつて会津を治めた名奉行だという。宮沢は、誇り高い会津人の気質と事件が関連していることに気づき調査に乗り出す。歌謡曲と麺を愛する地方記者の活躍を描く新・旅情ミステリー。

裏表紙より

【感想】
 タイトルを見ると「火サス」か「土曜ワイド」的な(世代がわかっちゃうね)、愛憎劇中心の2時間ドラマ的な物語を想像してしまうけれど(まぁ、かるーく艶っぽい部分がないわけではないが)、地方の過疎化問題が根っこにあり、それに汚職や談合、癒着が絡んでくるあたりは、さすが相場英雄さん。
 この物語は全7作の第1巻で、舞台は福島県の会津地方。たくさんの地名が出てくるので、地元の人や会津出身の人はよりリアルにこの物語を堪能できると思います。
 それにしても主人公の記者・宮沢、黄色いオープンカーを乗り回す既婚のヤサ男なのに、なぜハマってる音楽が春日八郎なんだろう。
 それと無類の麺好きで麺には並々ならぬこだわりがあるのに、エピローグで食べていたのは「ソースカツ丼」という(汗)。

⚪️佐渡・酒田殺人航路
 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎

著者 相場英雄

【内容紹介】
 大和新聞東北総局遊軍記者の宮沢は、山形県酒田への異動を命じられる。北前船で栄えた港町だが、最近、連続不審火が発生していた。赴任早々、取材で訪れた老人ホームで殺人事件が起こる。同じ頃東京では、ある不動産開発業者の背任容疑が浮かんでいたー。江戸時代、廻船問屋などが数多く軒を連ね、「西の堺、東の酒田」と称された酒田と、世界一の金の産出量を誇った佐渡。風光明媚な街で起きる事件の真相に“麺食い”記者が迫る傑作旅情ミステリー。

裏表紙より

【感想】
 みちのく麺食い記者シリーズの第2弾。
 今回の舞台は山形県の酒田、そして新潟県の佐渡。酒田市内で起きる連続放火事件と、同じく酒田にある高級有料老人ホームのプライベートビーチに死体が打ち上げられた事件。
 この二つの事件を解決するキーアイテムはなんと、クラゲと天心麺。
 土地や建物だけじゃなくて、まさか高級老人ホームまで投資の対象になっていたとは。
 超高齢化社会を当て込んで、今や大手企業だけでなく外資系の証券会社までが鳴物入りで参入する介護業界。テレビやラジオでバンバンCMを流し入居者確保に必死ですが、もし経営が経ちいかなくなったら、老後の資金をすべて注ぎ込んで入居した高齢者は、いったいどうなるのか。この先がチラホラ見えてきた世代としては、何よりもそれが心配。まぁ、高級有料老人ホームに入居できるほどの貯えなんてないんですけど。
 何はともあれ今回のエンディングが最高!
 読了後無性にラーメンが食べたくなりました。

⚪️月の森に、カミよ眠れ

著者 上橋菜穂子

【内容紹介】
 月の森の蛇ガミをひたすら愛し、一生を森で送ったホウズキノヒメ。その息子である蛇ガミのタヤタに愛されながらも、カミとの契りを素直に受けいれられない娘、キシメ。神と人、自然と文明との関わりあいを描く古代ファンタジー。小学上級から。

「BOOK」データベースより

【感想】
 上橋菜穂子さんの初期作品。
 舞台は古代の日本。縄文時代から弥生時代へ、狩猟中心の生活から稲作中心の生活へ移行しようかという時期の物語です。
 読んでいて思い出すのが宮崎駿監督の〝もののけ姫〟。
 人は神と自然を崇め共存していくのか、それとも自然と真っ向から対立しねじ伏せる道を歩むのか…。
 「BOOK」データベースによれば、「小学上級から」と書かれていますが、この物語の深いところを理解するのは大人でも難しいかもしれません。
 そうそう、余談ですが「偕成社文庫」とありますが、いわゆる文庫本サイズの本ではありません。念の為。

⚪️日本人は何を食べてきたのか

監修 永山久夫

【内容紹介】
 日本の食文化は「米」だけでは語れない。食の系譜から日本史をひもとく発見の旅。

「BOOK」データベースより

【感想】
 タイトル通り縄文時代から現代に至るまで、日本人はどんなものを食べてきたのかをざっくり解説している本。
 メインは縄文・弥生から平安時代の話。米はもちろん肉、魚介類、野菜、お酒、調味料、香辛料から調理器具や調理法、箸の使い方などの食事の作法の話までを網羅しています。
 全部で190ページ弱なので詳しく知りたい人は巻末の参考文献を手に取ってみるといいかもしれません。
 驚いたのは縄文時代の食文化の豊かさ。そして麺類の起源がうどんやそばではなくてそうめんだったこと。
 「いただきます」や「ごちそうさま」という言葉の素晴らしさも再認識できました。

⚪️女ことはってなんなのかしら?
 「性別の美学」の日本語

著者 平野卿子

【内容紹介】
 日本語の「女ことば」-それは、日本人に根付く「性別の美学」の申し子である。翻訳家として西洋語に長年接してきた著者が、女ことばを産んだ土壌とその歴史的背景、およびそこから生じる日本の女と男の関係性を、西洋社会との比較を通して見つめなおす。なぜジェンダー格差はなくならないのか?日々の日本語を手がかりにして浮き彫りにされる、日本文化の実態。

裏表紙より

【感想】
 翻訳家の著者曰く、日本語は
 ①主語はいらない。
 ②主観的である。
 ③自動詞を好む。
 ④受け身を好む。
 ⑤遠回しに拒絶する。
 ⑥否定的な表現を避ける。
 ⑦罵倒語や悪態が少ない。
 ⑧命令形を避ける。
の8つの特徴があり、これはつまり「女性的」な言語であると。
 しかしこの女性的な言語、実は女性に対して差別的な言語なのだということが、様々な事例から紐解かれます。
 女性が使う「男ことば」に違和感を感じてしまう世代の私としては、正直目から鱗というよりは、「なんだか窮屈だなぁ」なんて思ってしまう部分もあったり…。
 本当に時代が変わったと感じたのは、最近の改訂であの「新解さん」の語釈が、ジェンダーやLGBTQに配慮したものに変わったという点。
 そうそう、この本で取り上げられていた松村栄子さんの小説〝僕はかぐや姫〟は探してみよう。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 先月11月は27冊のうち9冊が新書という、私にとっては珍しいラインナップになりました。読書を始めた頃は、まさか新書を手にするなんて思ってもみませんでしたが、いざ手に取ってみるとこれが面白い。特に私のような無教養者には「ジュニア向け」の新書がちょうどいい感じです。というかジュニア向けでも結構難しいんですけど。
 …で、今まで読んだ新書の傾向を探ってみると、「ことば」と「社会」に関するテーマが実に多いことに気がつきました。今度お気に入りの新書を紹介する記事でも書いてみようかな。
 もし、これから大学を選ぶとしたら、言語学か社会学を学べる大学がいいかな。
 行かないけど。

最後に
 読書っていいよね。


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