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【お悩み相談】「失恋女子」を救う! 必殺心理術

まず、ご相談内容からご紹介します。

石鹸の匂いを嗅ぐたびに、失恋相手がフラッシュバックして苦しいです。失恋相手を忘れ去り、穏やかさを取り戻す方法はありませんか?

女性の方ですね。なるほど、ふわっと香るそのせっけんの香りで彼のことを想い出してしまう。これは切ないですよね。実際、こういうことすごくあるんですよ。

心理学に『ブルースト効果』と呼ばれているものがあります。「特定の匂いがそこに結びつく記憶とか感情を呼び起こす現象」のことです。

どうして起こるかというと、嗅覚は五感で唯一、喜怒哀楽の感情をつかさどる大脳辺縁系に直接つながっているんですね。もっと細かくいうと、匂いをキャッチする嗅球を介して、大脳辺縁系に直接繋がっている。だから匂いは、記憶をガッと想い起こさせたり、その匂いによって行動を起こさせちゃったりするんです。

ちょっと話はズレますが、僕が実際に体験した、「言葉によって説得されなくても、匂いによって説得される」という事例をお話したいと思います。

僕の家の近くにコンビニがあるんですね。そのコンビニ、やたら声出しをするんですね。店員さんが。で、今年の丑の日に近いタイミングで、普通に牛乳やらコーヒーやら買いに行ったら、店員さんが

「はい、現在ウナギ弁当の予約を承っております、ウナギ弁当いかがですか?」

と、ずっと店内に叫んだりするんですよ。でもそういうこと言われても「俺ウナギ食いに行っているわけじゃないのに」とか「ウナギ弁当の予約とか要らないし、静かにしてよ。てか、そういうのコンビニに望んでいないから」とか思っちゃって、もちろんウナギの予約なんかせずに、そこコンビニを出たわけなんです。

実はそのコンビニの向かいが牛丼屋なんですね。で、その店のエアダクトがこちらに向かって出ています。はい、もうわかりますよね。ウナギの季節って結構ウナギを食べる人が多いじゃないですか。だからエアダクトからウナギを焼く匂いが漂ってくるわけです。すると「うっわ、ウナギ食いてぇ、てか食いに行くかな」となって、ウナギ食べに行っちゃったんです。

これ、どういうことかわかりますか?

「ウナギ弁当の予約いかかですか?」と言われたら「うぜぇな、ウナギなんて食いたくねぇよ」と思っていた僕が、ウナギの匂いを嗅いだ瞬間にそっちに気持ちを持っていかれて、ウナギを食べてしまう。それくらい行動を支配してくるんですよ、嗅覚って。

だから、ご相談者さんがせっけんの匂いを嗅いでしまって、それがガッと感情を揺らしてしまう、失恋相手のことが想い出されて悲しくなるのはよくわかります。

さらに、この匂いは、男女の差がすごくあるんです。

脳内を調べた研究で、嗅球、匂いを嗅ぎつける場所ですね、この嗅球のニューロン数を調べたところ、女性の方が男性よりも43%も多いということがわかったんです。

だから女性は匂いに敏感です。スメルハラスメントといわれるものもあってですね、もう僕なんて完全に加齢臭の域に入ってきているので、匂いには気をつけなきゃなと、本当に思っています。

女性に好かれたい男性諸君は、匂いには本当に気を付けた方が良いですよ。女性は男性より43%も嗅球のニューロン数が多いですからね。

僕の知り合いの女性に聞いたときも、男性を好きになるポイントとして匂いをあげる人はすごく多いかったですし、好きになった男性の匂いのするものを持っていて、その匂いで彼を想い出す女性もかなりの数いますので。本当に男性の方、匂いは気をつけた方が良いです。

ちょっと話が逸れてしまいましたが、上記のような理由で、ご相談者さんがせっけんの匂いで彼を想い出すのは、生理学的に無理からぬことがあるんです。それは「仕方がない」システムになっているんです、僕らの身体は。

じゃあどうするか、という話なんですが、僕はあなたにこういいます。

せっけんの匂いを嗅ぐたびに、何がなんでも失恋相手のことを想い出してください!

絶対想い出してください。もうこれ以上想い出せないレベルまで想い出してください。僕が相談者さんの隣にいるんだったら、石鹸の匂いを僕が嗅いだときに「彼を想い出した? いま想い出した? 想い出してないの? どうして? もっと想い出してよ!」といい続けます。

ここから先はちょっとネタバレになっちゃうんですけど、これは『裏腹アプローチ』という心理術を使っています。

『裏腹アプローチ』というのは僕が考えた名前ですので、検索しても出てこないものではあるんですけど、ベースは臨床の現場で『パラドキシカルアプローチ』を呼ばれているものです。

人の脳は「なんとかしちゃ駄目」ということを、禁止言葉を理解できません。だからたとえば、ダイエットをしてる人が自分に「食べちゃ駄目だよ」といったとしましょう。でも脳は禁止言葉を理解しないので、脳には「食べる」ことしか残らないんです。

「ダイエットしているから食べちゃ駄目だよ、私」「食べちゃ駄目だよ、俺」と言っても脳は食べるしか取らない。これがまず恐ろしいのですが、脳はさらに恐ろしいメカニズムをもっています。

脳の回路は、シナプスからシナプスへ線香花火のように広がる、性質を持っているんですね。だから一旦「食べる」というのが残ると、火花のように「食べたら美味しいよな」「これ食べたら幸せだよな」「食べたら本当快感だよな」と無限に「食べる」ことに対して、ポジティブな要素をボンボン引き出してきます。

しかも、この回路は通行を繰り返すことに太くなるんですよね。ということは、ダイエットしている人が「食べちゃ駄目だよ」と思えば思うほど、かえって食べたくなってしまう、というわけなんです。

この「ダメと考えれば考えるほど、ダメな方に行ってしまう」という悪循環に陥った人は、結構いるんじゃないでしょうか。まぁ、僕はしょっちゅう陥っていますけど……。

だから『裏腹アプローチ』なんです。
人の心には「高圧的に禁止されると自由が奪われたっていう風に感じて、いわれたことと逆の方向に態度を変える」というメカニズムも埋まっています。「やるなといわれればやりたくなる」「覗くなといわれたら覗きたくなる」という「天の邪鬼な心」です。これを利用するんです。

臨床の現場では、どうしてもダイエットしなきゃいけない人に、『裏腹アプローチ』が取られるケースもあります(特にアメリカにおいては)。

「毎日最低これくらい食べてください」
「もっと食べてください! なんで食べないんですか?もっともっと食べてくださいよ」
「僕が言っているじゃないですか、どうして食べれないんですか?!」

と高圧的に出ることによって

「そんなに言われるんだったら、私、食べたくない」

を引き出すわけです。

全然寝れない人に
「寝られないように努力してください、絶対寝ないでくださいね」
「寝ないでって言っているじゃないですか、なんで寝たんですか」

と言い続けることによって、相手の心には反発が生まれて「なんがなんでも寝てやる」となり、実際に眠ることができる……本当にこうした効果が生まれています。

だから、ご相談者さんへのお答えは、

せっけんの匂いを嗅ぐたびに、何がなんでも失恋相手のことを想い出してください!

です。

いいねやフォローをありがとうございます。この記事はVoicy 『聴くだけで「使える」心理学』から抜粋し、読むだけで使っていただける記事として掲載しています。本編音声はこちらから↓↓


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