冷凍庫の中でほっとかれているあれ。

冷凍庫の中で長らくほっとかれているものがある。それは弟が職場でもらったものらしい。その弟も数ヶ月前に家を出ていってしまった。

冷凍庫の中でほっとかれているあれについて母は、弟のものだから、手を付けちゃ駄目よと言った。そのため、冷凍庫のなかでほっとかれているあれは、このままずっと冷凍庫のなかでほっとかれたままになるのだろう。

そう考えたとき、ふと、年老いた両親が冷凍庫のなかでほっとかれているあれを取り出して「これはなんだったっけ?」とやっている姿が、脳裏に浮かんだ。

二十年くらい先の未来だろうか。両親は立派な老人になっていて、腰が曲がり、いやに小さくなったような感じがした。

その場にはぼくもいた。

二十年くらい先の未来だろうか。ぼくは、現在の両親とちょうど同じくらいの年齢の姿になっている。

今のまま、何も変わらずひきこもりニートとしてその場にいたので、ぼくはぞっとした。

七十歳の両親と、五十路を迎えたひきこもりニートの息子が、二十年ものあいだほっとかれていた冷蔵庫のなかのあれについて、話している。

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