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プロのように演奏する!モーツァルト『トルコ行進曲』3つのコツ (Part 1/3)

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おはようございます。「Hikaruのピアノ大学」学長のHikaruです。この有名な肖像画、モーツァルトを実際に見たことのない画家が想像で描いたものらしいです↑

ということで!記念すべき第1回目の記事はモーツァルト作曲『トルコ行進曲』についてです。こちらの曲ですね↓

簡単にモーツァルトとトルコ行進曲についての紹介を。モーツァルトは1756年、オーストリアの首都ウィーンより西に300km離れたザルツブルクという街に生まれました。J.S.バッハが亡くなった6年後に生まれ、ハイドンより24歳年下、ベートーヴェンよりは14歳年上です。幼少期から神童と称され、ウィーンやパリ、ロンドン、イタリア各地に演奏旅行をしに行きます。そして1791年、35歳の若さでこの世を去ります

トルコ行進曲は1883年、モーツァルトが27歳の頃、ドイツのマンハイム→パリを経てウィーンに戻ってきたときに書かれました。ちなみにトルコ行進曲は単独の作品ではなく、ソナタK.331(ピアノソナタ第11番)の第3楽章です。楽譜をお持ちの方はモーツァルト・ピアノソナタ集から探してみてください♪

それでは前置きはこのぐらいにして、さっそく内容に参りましょう♪

(この記事はピアノ中〜上級者の読者を対象に書かれています。ピアノの先生にはあまり教わらないけど「プロならきっと知っている」「本当は人に教えたくない」ことだけを書いていきます。細かなテクニックの話などは抜きにしてお話を進めますのでご了承ください。)

目次

①「トルコの楽器」を知る!

②モーツァルト作曲「もう1つのトルコ行進曲」を知る! (Part 2/3)

③「協奏曲のように弾く」奏法を知る! (Part 3/3)

この3つのラインナップで紹介していきます。①「トルコの楽器」ではベートーヴェンの“あの名曲”も登場します。そして特に③「協奏曲のように弾く」ではトルコ行進曲に限らず、モーツァルトの他の作品にも応用が効く内容となっておりますのでお楽しみに♫

①「トルコの楽器」を知る!

プロのように演奏するコツの1つ目は、トルコの楽器を知り、その音色をイメージしながら弾くことです。トルコとウィーンの歴史、トルコの楽器を軽く紹介した後に具体的な演奏法の提案をしていきますね。

そもそもなぜトルコ行進曲は”トルコ”という名前なのでしょう?

実はモーツァルトがこの曲を作る100年ほど前に、音楽の都ウィーンはトルコ(当時はオスマン帝国)によって2度にわたる包囲、攻撃を受けていました。戦争は長期に渡って繰り広げられましたが、ウィーン軍は中央ヨーロッパの国々の助けもあり、トルコ軍を撃退します。ちなみにこの時、敗走するトルコ軍の兵士が落としていった物のひとつが「コーヒー豆」で、ヨーロッパにコーヒー文化が広まるきっかけにもなったという説もあります。

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音楽とトルコ軍に何の関係があるの?と思われた方。実はトルコの軍隊の特徴として「メフテル」という音楽隊(鼓笛隊)の存在があります。鼓笛という文字通り、太鼓やラッパなどを鳴らしながら戦争に向かう兵士の士気を高めます。現在でいうところのマーチングバンドを想像していただくと良いでしょう。

その中でも特徴的なのが「ターキッシュクレセント」と呼ばれる楽器です。楽器というより鈴のついた杖ですね。この杖をついて行進のリズムを作り出します。「ターキッシュ」は”トルコ風”という意味ですが、「クレセント」はどこかで聞いたことはありませんか?そう「クロワッサン」です。トルコの国旗には昔から三日月が描かれており、ターキッシュクレセントの先にも三日月型の装飾がほどこされていました。ウィーン連合軍がトルコ軍に勝ったのを記念に、トルコの象徴である三日月をかたどったパンがクロワッサンとして広まったと言われています。

ここまでお話をして、ターキッシュクレセントなんて聞いたことないよ!イメージができない!という方がほとんどでしょう。でも実はこの楽器、あのベートーヴェンの第九のクライマックスで使われることもあるのです。

(動画では1:03:47からターキッシュクレセントが活躍します。1:04:26で1番左側に映っているのがターキッシュクレセントです)

このシャン!シャン!となっているのがターキッシュクレセントの音色です。なんだか緊張感が高まり、音楽が一気に華やかになりますね。

さてトルコの楽器について少しイメージがわきましたでしょうか?それでは具体的な演奏に落とし込みましょう。ここではトルコ行進曲の中の2つのシーンを取りあげます。

A.

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まず1つ目のシーン。こちらはトルコ行進曲の導入部の楽譜ですが、アポジャトゥーラと呼ばれる前打音(上の楽譜の赤丸部分)があります。最初の4つの音は「シ・ラ・ソ・ラ」と4つとも同じ長さで演奏します。ではなぜモーツァルトは16分音符4つで書かなかったのでしょうか?これについての疑問はあるセミナーで解決いたしましたので、以下引用させていただきます。

特に最初の前打音に関してはなぜ16分音符4つで書かなかったのかずっと疑問だったのですが、2020年5月に行われた、PTNA主宰の赤松林太郎先生オンライン音楽探求Vol.1「 行進する音楽」にて解説していただきました。先生によると最初のシの音を前打音として書いたのは鈴などの鳴り物楽器をイメージしていたからだそうです。ちなみに古い時代の楽器で演奏するときなどは「シラー・ソ・ラ」とシの前打音を短く弾く場合もあるそうです。

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そして2つ目のシーン。こちらはトルコ行進曲で最も華やかな部分。今度はバスの低い音にジャララン!という装飾が入っています。鈴に加え、シンバルや太鼓のような音色も加えると良いでしょう。まるでトルコの軍隊がザッザッザッと足並みを揃えながら行進しているようですね。

トルコ行進曲を弾いて、なんとなく行進曲の雰囲気を掴んでいる方はたくさんいらっしゃるでしょう。ですが当時の楽器の音色を知り、それを強くイメージすることで「トルコの」行進曲を自信を持って表現することができます。引き続きPart2やPart3の記事でも、皆さんがモーツァルトやトルコ行進曲をより一層魅力的に演奏できるような内容となっておりますのでぜひご覧ください♫

最後に、ウィーン式フォルテピアノで演奏されているトルコ行進曲の動画をご紹介します。こちらのピアノにはトルコペダルと呼ばれる、シンバルや太鼓の音を鳴らすことのできるペダルがついています。より鮮明にモーツァルトが思い描いていたトルコ行進曲の映像をイメージできるのではないでしょうか?

Part2へ続く。

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