かつての金曜夜に。

金曜 夜9時。
黒い男が画面越しに
映画のタイトルを知らせてくる。

テレビで団欒を取っていた時代。
子供であるわたしにとって
金曜夜9時に流れるこの曲がとても好きだった。

子供ながら、今日は何の映画だろうか。
1週間のご褒美のようにさえ感じていた。
8:59から9:00に変わった途端に始まるこのメロディ。
まるで映画館で映画を観る前のような
壮大さを与えてくれていた。

あの独特な世界観。今ではもうない。
滑舌のいい、整った声のナレーションが
時には映画の説明をし、放送が始まる。

こうやって昔のことを思い出すと
時代が変わっていっているのだと痛感する。

テレビの在り方も、リアルタイムで観る
映画の再放送への気持ちも変わってしまった。

誰しもが楽しみにしていたであろう
金曜夜の映画枠。
懐かしさを拭いきれず、
少し不気味な黒い男を思い浮かべながらこの曲を聴く。

『cinema nostalgia』


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