見出し画像

アメリカの特許を侵害してしまった!_知財法務百科>企業法務大百科

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社チャーミング製靴 社長 江藤 晴美(えとう はるみ、44歳)

相談内容: 
先生、海外から大変な手紙来たんです。
英語だったので、最初、何かしらと思ったんですが、海外の企業からで、
「Patent Infringement」
とか何とか書いてあって、辞書を引きながら読んでいくと、どうやら特許権侵害を理由に商品製造の差止めと賠償を要求する通知書だったんです。
当社は、一昨年から、ダンス用のシューズで、ポーズが決まる度に
「グー」
「グー」
という音が鳴る
「グーグーシューズ」
を発売しているのですが、通知書によると、この音が鳴る仕組みがアメリカの
「サリバン社」
が10年前に取得した特許権を侵害しているというんです。
何でこうなったのか調べたところ、サリバン社の社長が日本に遊びにきたときにたまたまグーグーシューズをみて、
「この商品で使われている技術は、わが社の特許権を真似ているだけではないか。
すぐに法的措置を取れ」
という話になったようなんです。
グーグーシューズを企画・開発した商品開発部の部長に聞いたところ、彼は、アメリカで売っていたサリバン社が販売していた商品で、手を上げる度
「コー」
「コー」
と奇音を出すおもちゃのブレスレットにヒントを得てつくったということなんです。
ですので、パクリといえば、パクリであり、当社としても悪いことをしたことに間違いありませんので、来週にでもサリバン社のところに菓子折り持参で謝りに行こうと思っているんです。
とはいえ、私と商品開発部長だけでは不安なので、先生もついてきてもらえませんか。
戦ってもらわなくて結構なんです。
ほんと、私が謝るので誠意が伝わるよう通訳してもらい、最後にみんなで一緒に土下座するのに付き合ってほしいんです。
きちんと報酬は払いますから。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:国際特許など存在しない
飲み屋等でよく、
「ウチの特許は国際特許だぞ」
などということを自慢気に語る中小企業の社長さんがいらっしゃいますが、
「世界万国通用する特許権」
などは存在しません。
そもそも、特許権については当該権利が取得された国の領域内においてしかその効力が認められません。
すなわち、ある国で取得された特許権は、登録等を行って別途権利化の手続を取らない限り、他国では特許権としての効力が認められないのです(特許権における属地主義の原則)。
無論、ある特許を簡易な出願手続で、複数の国で出願した扱いにする便宜的な方法は存在しますが、これは出願についての仕組であり、最終的に特許権を取得するには、特許権を取りたい国ごとに登録等の手続を行わなければなりません。・・・(以下、略)

以下、ご興味のある方は、

をご高覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?