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YU-KI(TRF)と大黒摩季が、NHKのTV番組で共演!

 TV番組『歌える!J-POP 黄金のヒットパレード決定版!』の再放送を、10月29日に、NHK BSプレミアムで観た。出演したのは、YU-KI(TRF)・大黒摩季・小比類巻かほるなど。今回は女性シンガーに特化した内容だった。

 最大のトピックはYU-KIと大黒摩季のコラボだろう。歌の披露の前に2人に話を訊く場面があったのだが、番組の司会進行役である、平野ノラと広瀬智美アナウンサーの女性2人も、明らかに表情が変わっていた。仕事中であっても、どうやら胸のときめきは隠しきれなかったようだ。見ているこちらもつられて期待が高まる。
 進行役の2人があまりに大きなリアクションを見せるので、YU-KIは自分と大黒摩季が一緒に歌うことの感想をDJ KOOに尋ねた。当事者の自分自身では実感できない感覚を、端から見ていたDJ KOOから得ようとしていた。
 DJ KOO は「リハーサルで涙が出てきた。」と言うほど、感動していたようだ。それほど、意外な組み合わせでレア度の高いコラボだ。

 大黒摩季はこう言う。TRFは撤収が早い。これまで挨拶に行こうと思ってもタイミングを逃してばかりで、たまに同じ現場になっても、なかなか話す機会がなかった。手を伸ばして「待って!」というジェスチャーをしながら、当時を振り返っていた。

 スペシャル・コラボの幕開けは、TRFのヒット曲『寒い夜だから…』からスタート。歌うのは大黒摩季だ。
 まず驚きだったのが、大黒摩季がDJブースの前に立っていること。こんな絵面はそうそう見られない。
 音程が高く上がる、「どんな言葉でもいい」の後に続く「よー」のパートで、彼女の発声の旨味を存分に味わえる。やっぱり特徴が出るなあ。
 TRFの立ち上げ当時の楽曲は、ダンス・ミュージックをいかに日本の音楽シーンに浸透させていくかということを念頭に作られている。ゆえに、ボーカリストに起用されたのは、歌を専門としていたわけではないが、ダンスの嗜みがあったYU-KIだった。YU-KIの歌声がダンス・ビートに乗ったときに生まれる心地よさは、彼女の経歴と無縁ではなかろう。
 ところが今回歌うのは、B'zのコーラスから下積みで這い上がり、最初から歌を本職にキャリアをスタートさせた大黒摩季。生粋のシンガーの解釈で、一度、ダンス・ミュージックとして世に広まった楽曲を、改めて捉え直した彼女なりのアプローチは、聴き応えたっぷりだった。
 こうなると、YU-KIが自身のキャリアやエッセンスを、どのように大黒摩季の歌に反映させていくのかにも、俄然興味が高まる。

TRF『寒い夜だから…』

 続いて披露されたのは、大黒摩季のヒット曲『DA.KA.RA』。歌うのはYU-KIだ。
 大黒摩季の楽曲ではあるが、バックにダンサーが登場。ここからは歌に加えて動きでもステージを盛り上げる。この絵面も新鮮に映った。本人のオリジナル曲でありながら、コーラス・パートを本人が生歌で担当するというミラクルが起きる。物まね番組でよく見る、2コーラス目からご本人登場というユルい企画ではない。観客を入れてのガチ歌唱だ。なんと贅沢なシチュエーションだろう。
 本人がコーラスを生歌で担当するなんていうのは、大黒摩季が2人いなければ実現しないこと。本人がいるのに主旋律パートを明け渡すということは、歌う側も大黒摩季が不機嫌にならないような、相応のボーカリストでなければならない。大黒摩季も自分の持ち歌で、自ら脇役パートを歌うのを楽しんでいるようにも見えた。
 TRFのレギュラー・ラジオ番組で、YU-KIはこの共演を振り返っている。共演を終えて、ラジオの収録を迎えるまで記憶に残っているほど印象的だったのだろう。筆者もどんなことが起きたのか、YU-KIの話で知っていたものの、実際にTVで映像を見てみると、身震いするほどの衝撃だった。当事者のYU-KIはそれ以上だったろう。
 YU-KIの歌唱は意識的にメリハリを効かせようとしているのが目に付いた。Aメロは、大黒摩季が若いときにレコーディングした音源よりも、意識的にゆったりと歌っているようで、それはマイクを持っていない方の手の仕草からも感じられた。サビとのコントラストを出そうとしていたのだろうか。

大黒摩季『DA.KA.RA』


 さらに『EZ DO DANCE』へと続く。ここでも大黒摩季がコーラスに回った。サビのフレーズの、2度目のEZ DO DANCE("君だけを見ている"の直前のパート)でYU-KIの表情がアップになるのだが、目の色が明らかに変わっていたのが分かった。
 小室哲哉によるレコーディング音源をただなぞったのではなく、大黒摩季なりの解釈によるコーラス・ラインだ。単にユニゾンで一緒に歌うよりも、パート別に分かれる方が、協力して楽曲を完成させている感覚は強いだろう。筆者も聴き慣れた曲のはずなのに、新たな驚きがあった。YU-KIも実際に合わせてみて、心に響くものがあったに違いない。
 
 ダンス・ミュージックなのにダンサーの手足がフレーム・アウトして、動きが感じ取れない撮影は好きではないのだが、ダンサーのモーションとシンガーの表情を天秤にかけてでも、YU-KIの目の輝きを察知してのカメラ・ワークなのだろうか。単にサビだから顔アップにしましたという、単純な撮影ではない気もする。こういう場合は、「どこを撮っているんだ!?」とは思わない。ナイス・カメラワークだ。

TRF『EZ DO DANCE -Version. 2023-』


 最後は大黒摩季のヒット曲『ら・ら・ら』。大勢で合唱できるヒット曲を持っているのは強みだ。
 単純に、みんなで歌えればよいというものではない。合唱向きの曲調であっても、高い集客力・認知度がなければ、観客の反応が伴わずに空回りしてしまう。こういう曲をリリースできる体制に持ち込むまでが一苦労だと思う。リリースから時を経ても忘れられずに支持を得続けているのが凄い。だから、観客も含めて一同、手を左右に振りながらの大団円で幕を閉じたのだ。

大黒摩季『ら・ら・ら』

 歌い終わったYU-KIと大黒摩季の2人が、最後は肩を組んで終了。YU-KIがステージに立っている3人の名を叫び、「Thank you!」の鋭い一言で締めくくった。「See you next groove」という言葉こそ、さすがに使わなかったものの、去り際はTRFのライブで出している雰囲気そのままだった。ここも大黒摩季のファンには新鮮に映ったのではないだろうか。


 接点のない2人だからこそ、つなぎ合わせたときのインパクトは大きかった。お互いに良い刺激を受けて、収穫のある共演だったことだろう。番組制作者にはこのような野心的な企画を、これからも実現させて欲しいところだ。

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