マーク・パンサー福岡公演

2019/08/17


8月11日に福岡市のLive House CBで開催されたマーク・パンサーのライブ・GLOBE GENERATION 〜ともし火は消さない〜 2nd SEASON 「GLOBISM」に行ってきた。

 ステージ中央にはマーク・パンサーのDJセット。前面には映像を映すスクリーンが設置されている。その脇を固めるのはドラム、キーボードにギター2人。この4人の生演奏に、録音されたKEIKOのボーカル・パートを乗せてglobeの楽曲を披露する。マーク・パンサーもデビュー当時とは違って、現在ではトラック・メイキングも手掛けるようになった。小室哲哉とKEIKOは不在ながらも、配信作品「deep JAZZ globe」を聴いて、今のマークなら必ず盛り上げてくれるに違いない!と思ったので出向いた。このライブでも全曲、大胆なリミックスが施されている。

 冒頭から「Feel Like dance」、「Joy to the love」、「SWEET PAIN」とたて続けに披露。「え、こんな露骨に順番通りでいいの?」と思っていたら、ここでマークのMCが入る。今回はあえて順を追って、これまでの楽曲を振り返っていく意向のようだ。となると次の曲は…?と煽りを入れて最大のヒット曲「DEPARTURES」が始まる。僕は、発売当時の世間の評価とは裏腹に、そこまで深くこの曲に肩入れしてはいなかったんだけど、今回のアレンジはアゲアゲで盛り上がった。まさか「DEPARTURES」でこんなにテンションが上がるとは。
 これが終わったら、「FACES PLACES」。ちょっと待て!曲、飛ばしてる!しかもしかも、globe全曲の中でも僕にとって最も重要なリード曲「FREEDOM」をやらないのか?何を考えとんのじゃあ〜っ!と発狂しかけたが、この後、無事ちゃんと披露された。さすがにカッチリキチキチにリリース順にはやらないか。ライブ全体の流れも意識して多少順番が前後することもあるが、おおよそ時系列に沿って演奏するようだ。でも今回の「FREEDOM」はミックスのバランスのせいか、ほとんどドラムだけで他の楽器の音が聴こえてこなかったなあ。なんだかドン、ドン、ドン、ドンってキックをメトロノーム代わりに鳴らしたその上に歌だけ乗っかってるみたいで、コード感がまるで感じられない。置いてけぼりを食らったかな。これは最初のアレンジやRemodeの方が良かった。 

 「Can't Stop Fallin' in Love」では、サビに移行する手前の「暮らせない」の部分を切り取って何度もリピート。「暮らせない〜暮らせない〜暮らせない〜」こんな感じで、サビに向かって打楽器の高速連打でガンガンにアゲていく手法で、ダンス・ミュージックさながらに盛り上がった。これは2番も同様にくるかなと思って、気持ちの準備をして待っていたんだけど、今度はアッサリ次のサビに移っちゃったんだよね。この辺はマークも上手くフェイントかますなぁと思った。それでも、フレーズ最後の言葉尻を連打で「私の方が必要だってエ・エ・エ・エ…」という細工を施していた。やってくれるよね。
 次のMCではアルバム「FACES PLACES」のレコーディングで渡米していた頃のエピソードを話していた。同じスタジオでエアロ・スミスやマイケル・ジャクソンなどの大物が利用する中、一番大きな部屋を押さえて作業していたというから驚きだ。

 「次はKEIKOちゃんに任せよう」と言い残して、ステージ中央にスタンドマイクを1本立ててマークが一旦退場する。そこからの「I'm still alone」。この曲だけは、これまでのダンス・リミックスではなく、原曲のイメージに沿ってピアノでしっとりと披露された。
 公演中にマークもMCで「奇跡を信じて、もう一度3人でglobeをやりたい」と言っていた。現状でできる範囲で、なんとかKEIKOの見せ場も作りたかったんだろう。個人名義の単独公演なのだから、やろうと思えば全編ノンストップDJミックス!という構成にもできるはずなのに、あえてこうするとは…誰もいないステージ中央から、KEIKOの録音された歌声が聴こえてくるだけなのは頭では理解できていても、ちょっとジーンときた。


 ここでマークがDJブースに戻る。続いては「Perfume of love」。ドラム・パートはシングル表題曲のバージョンを多分に継承していたが、テンポ自体がかなり上げてあったので、これだけでもかなり新鮮に感じられた。あと「SaYoNaRa」も、Aメロの切れ込むようなギターにサビで音数を増やすリズム・パートとの対比で、メリハリが効いた良いアレンジだった。日頃は箸休めに聴いているような曲なんだけど、この日は意外にも「SaYoNaRa」で盛り上がったな〜。

 バンドメンバー紹介では、ドラムの阿部薫のところで、「小さくて見えないから、立って!立っても見えないか」と言っていたけど、本当にDJブースに完全にマスキングされていて、ほとんど姿が確認できなかった。姿どころか、シンバルの端の方も見えなかったような。「じゃあ、今度はドラム真ん中に置いちゃう?ああもう客席に持っていこうか」ってな話の流れになったのは笑った。
 紹介をするときに「ギター・健ちゃん!」という言い方をしていたが、日常会話での呼び方ではなく、フルネームでキッチリ「ギター・木村健!」と言う方が場が締まるのに…僕は2000年代の中盤あたりに小室哲哉から浮気していて、クラブジャズ系のライブに頻繁に出向いていた。そこからポップスに戻ってきたからギャップを感じる。あそこでは、コールされたミュージシャンは得意げに「俺は上手いぜ〜」てな超絶フレーズをこれ見よがしに弾いていく。これも見せ場の一つだ。今回はファン層を考えても楽器隊がしゃしゃり出る必要はないと思うが、二度あるメンバー紹介の、締めの方だけでもカチッとやった方がいい。

 本編で一番カッコ良かったアレンジは「Love Again」だった。TMNの「Just Like Paradise」がリミックス盤・CLASSIXに収録された際に新たな音が追加されたが、アレ風なフレーズを押し出していた。「OVER THE RAINBOW」はスクリーンでも七色の円を移して楽曲を盛り上げていた。

 アンコールは「Get Wild」と「Many Classic Moments」。マークの生「It's your pain〜」が堪能できただけでも、ああ、今日来て良かったなと思った。しかもベスト盤やRemode2に収録されているラップパートとは節回しも変えてきている。これ初めて聴いたときは、あまりのアレンジの斬新さにひっくり返りそうになったもんな。Bメロの音程スッ飛ばしてラップにするのかあ〜…って。でも、globeならではのアプローチだよね。本当にもう、入手してからしばらくはコレばっかり聴いていた。

 これでもか!っな程、ベタな選曲に型通りな曲順だったけど、色々と試した上で、あえてこうしたのだろう。ベスト盤「15 YEARS-BEST HIT COLLECTION-」の一作を押さえておけば、知らない曲は出てこないような構成だった。なので、今回はやらなかったシングルを挙げた方が手っ取り早いぐらい。「Anytime smokin' cigarette」、「Wonderin' desteny」、「Sweet heart」、「Miss Your Body」、「とにかく無性に…」、「seize the light」、「garden」、「Don't Look Back」、「Try This Shoot」、「Stop! In The Name of Love」、「genesis of next」これら以外は大体やってる。
 マーク本人は、こんな現状でも今後も継続する気でいる。globeはまだ終わっていないという姿勢を見せてくれるだけでも十分。これからも頑張って欲しい。今回披露した「Get Wild」の別バージョンの方の歌詞をそのままマークに贈りたいぐらいだ。
「ひとりでも傷ついた夢を取り戻せる」


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