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20円ケチってひどい目に遭った|この教訓プライスレス

 20円と聞いて、安いと思うか。高いと思うか。節約家なら惜しむべきだし、浪費家なら気にならない金額だろう。一般的には、そこまで高い金額だとは思わないはずだ。

 しかし先日(というかこれを書く三十分前)に、20円を惜しんだせいで酷い目に遭った。本記事では、その学びを共有したい。

テリヤキバーガーかテリヤキチキンバーガーか

「お腹減ったな」

 ひと仕事を終えて、時計を見ると13時。ランチのピークタイムは過ぎた時分だ。安価なランチをそれほど待たずに食べられる。今日の昼食は奮発して、ランチメニューをテイクアウトしようと思った。

 そういえば、昨夜見た動画のせいで、マクドナルドのポテトが食べたいと思っていた。ランチタイムは通常時より安価なので、せっかくだからとマクドナルドに向かった。ちょうど雨も止んできたし、傘なしで往復できそうだ。

 歩きながら、メニューを考える。気分としてはテリヤキチキンバーガーだ。しかしテリヤキチキンバーガーは、テリヤキバーガーより少しだけ高い。
「どうせ食べたいのはテリヤキ味だし、だったらテリヤキバーガーでよくないか」

 そう思って、テリヤキバーガーセットのテイクアウトを頼んだ。もちろん午後の仕事に差し支えないよう、ポテトはSサイズにダウン。寒いのでホットコーヒーを選んだ。

こんな間違いある?


 受け取り口付近で待っていると、私の番号が呼ばれた。取りに行くと、トレイに商品が乗っている。どうみても店内飲食用だ。
「テイクアウトでお願いしたんですけど」
 私がレシートの番号を見せると、店員はあっという顔でレシートを見た。店員用のレシートには「店内飲食」と書かれていた。
「すぐにご用意します」
 ピークタイムは過ぎたとはいえ、店内はまだ混み合っている。先ほど店員が一人、休憩に入ったのを見ていた。詰めかえる手間がかかるし、私は別に店内で食べてもいい。
「このままでいいです」
 私がそういうと、困ったような、しかしホッとした顔で店員は商品を渡してくれた。

「こんなこともあるよな」
 なんて思いながら、席でポテトをパクリ。そしてある異変に気づく。ポテトが大きいのだ。どうみてもSサイズじゃない。いつも紙袋ではなく、赤い箱に入っている。レシートを見ると、ちゃんとSサイズでオーダーされている。提供スタッフの入れ間違いだろうか。
「今日は間違いまくりだな!」
 食べてしまったし、このまま食事を放置してレジに向かうのも気が引ける。帰り際に指摘して、差額を払おう。そう思って、先に食事を済ませることにした。

 待望のポテトとテリヤキ味は美味しすぎて、五分ほどで半分以上食べてしまった。
 話は変わるが、私はいつも店内で飲食する時、本やノートを持ち込んで勉強やネタ出しをする。でも今日はすぐ帰るつもりだったので、何も用意していない。コーヒーの残りを持って帰って、家で勉強しようと考えていた。つまり長居するつもりはなかった。

 そんなことを考えていると、店員がやってきた。私の顔と手元のレシートを交互に見ている。
「あの、352番のお客様ですよね」
「そうです」
 ポテトのサイズを確認した時、私はトレイの上にレシートを置いていた。それを店員に見せ、お互いに番号を確認する。
「こちらの商品、別のお客様のものなんです」
「ごめんなさい!」
 思わず立ち上がる私。
「いえ、そのままお召し上がりになってください」
 店員に抑えられて、私は再度座った。そして、あることを思い出した。
「あの、ポテトの差額を払ってないんですが」
「大丈夫です。そのまま召し上がってください」
 店員さんは笑顔で去った。取り残された私は、続きを食べるしかなかった。

 思えば、おかしなことばかり。テイクアウトなのに、店内飲食。SサイズのポテトがMサイズになってる。受け取る時にお互い番号を確認したから、単に商品と呼出番号を間違えただけだろうか。それにしたって、一度のオーダーでこれほど間違えるのか。気まずいのに、笑えてきた。

 もし私が頑としてテイクアウトにしていたら、今頃店員は困ったことだろう。352番のオーダー品が、いつまで経っても引き渡せないのだから。でも早々に帰っていたら、私は今、こんな肩身が狭い思いをせず昼食が食べられたはずである。どうせ交換する必要がないなら、不都合なことを知らないまま食べさせてほしかった。とにかく申し訳なくて、残りの食事は味わう間もなく、流すように食べた。

 これ以上残っていると、また次のトラブルが起きそうだ。飲み切れないMサイズのホットコーヒーは持ち帰って、早く店を出よう。しかし店外では小雨がパラリ。来た時は降っていなかったのに、今では傘が必要なレベルの雨だ。
 幸いにも家は近い。だが手元のコーヒーがこぼれると熱いので、走れない。仕方ないから競歩並みに早足で帰った。ずぶ濡れにはならなかったが、おかげでメガネが水滴まみれになった。

もし20円ケチっていなかったら…

 雨にうたれながら考えた。もし私がテリヤキチキンバーガーを注文していたら、このような事態にはならなかっただろう。

 まずバーガーが違うので、他のオーダーと間違えない。そして手早く家に持ち帰り、雨の音を聞きながらポテトを堪能できたはずだ。食べ過ぎて午後の仕事に支障が出なかっただろう。(まあ、注文時に「店内飲食」になっていたから、雨は避けられなかったけど)

 話は変わるが、スピリチュアルの世界では「高いものを買え」という言葉がある。
 2つ商品があったら、値段で選ぶなということだ。そして違いがないなら、高い方を選ぶべきとしている。安いものを選ぶと「自分は安い人間」「安いものがお似合いの人」という意識が、無自覚にも刻み込まれてしまう。そのため、なるべく高級なものを身近に置き、自分の価値を高めようという狙いがある。決して浪費を促す言葉ではないので、ご注意を。

 さて、今回の私は「テリヤキチキンバーガーが食べたい」という本音を押し殺し、20円安いテリヤキバーガーを選んだ。そして酷い目に遭った。もしテリヤキチキンバーガーを頼んでいたら、気まずい思いなどせず、よい気分で午後を過ごせただろう。

 だが別視点で考えてみると、20円で滅多にない体験ができたともいえる。

 まず一つ一つのミスはありがちだが、一度のオーダーで3つ重なるのはかなり珍しいのではないだろうか。次に傘をさすのが普通な中、雨に濡れるのもレアな経験だ。そして何より、今こうしてネタになっている。今回はエッセイにしているが、小説の小ネタにも使えそうだ。ケチることへの戒めも学べたし、20円以上の価値を得ている。

 だが、よく考えなければならない。結果として「ケチってよかった!」になっているが、不愉快な思いをしたことは事実。学びに転換できていなければ、今日一日が最悪になった可能性だってあるのだ。

 まあ、何が言いたいって「20円ケチってもいいことないよ」ということ。これからは本音を押し殺さず、好きなものを食べよう。私も、あなたもね。


こんなところまで読んでくださって、ありがとうございます!