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浅野屋というその蕎麦屋は、京浜東北線の上中里にあった

昨年から今年にかけてー

世情の変化に、どんな影響を受けたか

文学作品を語る表現活動は激変した。自主企画で多い時は100人規模の公演を打ってきたが、その一般的には小さくとも有難い営みはガイドラインという価値観の中に入らない。5000人とか、キャパの半分とか…物差しが違いすぎたり、「はい、赤字覚悟ね」みたいな枠でくくられても、身動き出来ない。助成金も、何か事を起こす人への制度であり、動けない者への施策ではない。

何が起こっても自己責任。当然の覚悟+低リスクな企画とは? 考え続けた。

理想は都会の仙人

とは言え、日常生活は激変でも無い。以前から、集団に毎日入っていく訳でも無し、定期的に友人と会合を持つでもない。ナレーションの仕事を有難く頂き、稽古、家事、走る、体操…日々淡々と過ごす。

地元を走ると入ってみたい店を見つける事もしばしば。2020年のヒットは上中里そば浅野屋。見つけた日に早速のれんをくぐる。「何だこれ、めっちゃ、蕎麦の味が濃い!」。

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The東京の二八蕎麦

上中里そば浅野屋は二代目ご夫婦が切り盛り。同世代というのも有難く、新顔も覚えて下さる対応、感染対策も丁寧。店内は和のテイストがバランスよく配され、小ざっぱりと気持ち良い。

蕎麦だけじゃない!日本酒、おつまみも最高に美味い!すぐ頂きたい。食べる前に画像を撮るのが苦手で画入りで紹介出来ないが「浅野屋さんのおつまみメニュー」を思いめぐらした。

・イカの塩こうじ漬

・稚鮎の天ぷら

・さつま揚げ

・牡蛎…

などなどキリがない。昼に行っても、やっぱり一品は頼んでランチビールしてしまう。

ご主人や奥様が忙しい中、声をかけて下さる。二代目がお店を継いだ経緯なども伺い、自分の活動を話すにつれ、湧きあがる企画があった。

ここで池波正太郎の蕎麦作品を語りたい!    

しかし、このご時勢。誰がウンと言ってくれよう。店の近くにある寄席は、現在、興行休止中。「常識を考えろ、常識を」、自分に言い聞かした。とは言え、芸人はやっぱりoutputしないと消化不良を起こす。正直、寸前だった。

駄目もとで、2月15日に池波正太郎作『正月四日の客』を上演する企画書を持参。いつも繁盛の営業日ははばかられるが、旧暦の正月四日にあたる2月15日は定休日…巡り合わせに賭けたかった。

「世情を見ながら暫定的に調整していこう」という、神の声に近い合意! 長い冬から芽吹きを迎えたような心持ちがした。

『正月四日の客』(角川文庫「にっぽん怪盗伝」)は、人知れぬ過去を持つ蕎麦屋の亭主と火付け盗賊改め方に追われる大泥棒に芽生えた親愛の情、人の心と食の結びつきが印象的な白浪物。池波正太郎が多くの作品に貫く、世の中、そして自分自身の理不尽と対峙する人間の姿が描かれる。

文庫表紙

語り+津軽三味線の和LIVE

町のお蕎麦屋さんで10名限定 

「寒い時にこそ、冷たい蕎麦を手繰ってほしい」ーこれが浅野屋さんの心意気。当日は物語の世界を彷彿とする〈おろし蕎麦〉を召上って頂く。

しかし、本番当日が…

準備を進めたが、本番当日が緊急事態宣言下となり、断腸の思いで延期を決めた。

改めて

お蕎麦とのコラボレーションは来年以降と腹を括り、2021年5月3日にLIVEのみ、西荻窪の登録有形文化財一欅庵で実施する。



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