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ヤマハ発動機ジュビロ☆初心者観戦記☆第7節〜この戦い、この日だけの戦いにあらず〜

1.ここは『ラグビー推しの街 ☆KUMAGAYA 』

4月10日 

東京駅 朝9時

クラシカルな駅舎の上に青空が広がっていた。しかし、丸ビル方向に向けて冷たい風が吹き抜けていく。

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私は夫と娘を連れて、これから【プチ旅行】に出かけることになっていた。

上越新幹線で30分 目的地は《熊谷》。

新幹線ホームは、終点『ガーラ湯沢』を目指すスノーボーダー達が、慣れた手つきでボードを担いでいた。

土曜ということもあって、新幹線は意外と混んでいる。まだスキーシーズンらしい。

熊谷

若い頃仕事でよく訪れた街。でもその記憶は全くない。

大宮を通過した。あの頃、駅前整備中でキラキラしていたこの街も、どこか古びてくたびれていた。

《翔んで埼玉》

この【さいたまディスり・てんこ盛り】の漫画&映画は、その昔『ダサいたま』といわれたこの自治体に再び光を当てた。

30年経っても、《さいたま》の中途半端感は好転しなかったらしい。

この映画の中で、

『熊谷は群馬よ!』というセリフがあったらしい。熊谷市民としては

《埼玉の端っこ》と揶揄されるよりいっそ群馬県民になりたい、と思っているのだろうか。いや、やはり《グンマ》は嫌なのか。

新幹線は定刻通り熊谷駅に到着した。

なぜか熊谷駅新幹線ホームからエスカレーターを降りた先には

『MY GUNMA』なるJR東日本のPRポスターが連なっている。

社的には『グンマ』扱いということか。

熊谷駅改札口には、雪崩を打つように人が押し寄せていた。新幹線と同時に、りんかい線も到着したのだろうか。

この日、ここに集う人々の向かう先はただ一つ、

熊谷ラグビー場

ここは、秩父宮、花園と並ぶラグビーの聖地だ。駅構内は、楕円球とブルー✖️ホワイトのストライプで占められていた。

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パナソニックワイルドナイツ

ラグビートップリーグの超強豪。今年も順調に白星を重ねていた。この《無敵艦隊》が、新リーグ発足を前に熊谷市をホームタウンとする事を発表していたのだ。

ブルーはワイルドナイツのチームカラー。

熊谷の街は

ラグビー推し、ワイルドナイツ推しの街

に姿を変えていた。

駅を出ると、予想以上に長蛇の列ができていた。ラグビー場行きの直行バス乗り場がどこにあるかもわからない。

到着早々途方に暮れたが、意外と列はスムーズに流れ座席にも着くことができた。密にならないように厳しく乗車人数は管理され、そこそこ乗ったところでバスの扉は閉まった。いわゆる『すし詰め』ではない。

しかしここからが長かった。熊谷市内の道路事情は知らないが、渋滞に長くハマり、ラグビー場に辿り着くまでに30分はかかっただろうか。時計は11時を回っている。

ようやくバスから降りると、広大な緑の空間が広がっていた。心地よい風が吹き抜けていく。そこに立つラグビー場。


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ラグビーW杯2019日本大会の試合会場となり全面改修されたこのラグビー場は、《聖地》の名に相応しい

【白亜の殿堂】

に生まれ変わっていた。

私はヤマハのチームテントを探したが、場外が狭い秩父宮とは違い、バックスタンド入り口からずいぶん離れているらしい。夫と娘をその場に待たせ私はチームテントに全力疾走した。

地図の示した場外の一番奥にチームテントがあった。定期に入れた会員証を見せてサイン入りカードをいただく。

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おお😳😳頼りになる男クワッガ・スミス選手‼️今日も頼みます🙏

Twitterの投稿も見せてチームカードも受け取り私は再び全力で入り口に戻った。せっかちの夫がイライラして待っていた。

2人に謝りつつ場内に入る。国立競技場と基本の造りは同じようだ。スタジアム内に入ると、そこには《別天地》が待っていた。

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瑞々しい芝生の緑

どこまでも続く空の青

日差しが眩しいスタジアムの白

空を見上げてきづく。

【地球は 丸いんだ、、】

冷たい風が時々頬に吹きつけるが、寒いほどではない。

絶好のラグビー日和だ。しかもこの美しい聖地で❗️

2.『○〇○ーを探せ⁉️@《KUMAGAYA》』

グラウンド内では、既にヤマハ発動機ジュビロの練習が始まっていた。ファンクラブ枠で取ったバックスタンドの席。

驚くほどグラウンドに近い‼️秩父宮より近い気がするぞ‼️

スタジアムとは不思議なものだ。グラウンドの大きさはルールで決まっているはずなのに、このスタジアムのグラウンドはとても広く見える。なのに、選手は手が届きそうなほど近くに見えるのだ。

その至近距離に見覚えのある男性が立っていた。

今や五郎丸選手と並ぶヤマハの顔 

慎さん、こと長谷川慎ハイパフォーマンスコーチだ。

少し離れた席に座る夫が興奮気味に飛んできた。

『おいおい、慎さん、慎さんがいるよ‼️』

秩父宮のNEC戦に夫はいなかった事を思い出した。

私はいつもの小さなデジカメを出し、試合風景を撮り始めた。もちろん最初の一枚は慎さんだ。

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慎さんは、少し枯れた低い声で、選手達に再三指示を出していた。なぜか、ドラマ『北の国から』を思い出した。慎さんの指導は、熱く、厳しく、そして暖かい。

程なく『あの方』が、《いつも》のスタイルで《いつも》のように現れた。

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大久保直弥HC。

《いつもありのままで》と訴えるような落ち着いた雰囲気には、同時に静かな迫力がある。この方の佇まいは、どこか映画【鉄道員】の《健さん》に似ている。

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さて、私の憧れ

『タッキーさん』こと堀川隆延GM兼監督

はどこにいるのだろう?

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この方?、、いや違う!

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では、この方?、、いや、この方も違うぞ!

なぜだろう?この日は、時間を追うごとにヤマハジャージが増えていく。

タッキーさんは、、一体、どこに?

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私にはこのグラウンドが、あの名作絵本に見えた。

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途方に暮れた私は、ひとまずタッキーさん撮影を諦め練習撮影に専念した。

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奥ではBK陣が練習していた。五郎丸さんやサムグリーン選手はどこだろう?、、、、いた‼️‼️

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コスタリカの山奥で、幻の鳥ケツァールに遭遇した動物カメラマンはこんな気持ちになるのだろうか。

左から2番目、たしかに、『この方』がタッキーさんだ😭😭😭😭

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大田尾さんが早大に去り、その仕事をも担うタッキーさんは、精力的に選手達に指示を出していた。

今日をどう戦うか なぜなら 今日の戦いは今日だけのためにある訳ではない。二週間後、プレーオフトーナメント二回戦が控える。相手はおそらく、、、。

この難しい問いに、今タッキーさんはどんな解を出しているのだろうか。

時間は刻々とすぎ、全体練習が始まった。タッキーさんは定位置のゴールポストの前に立つ。

?、、あれはなんだ⁉️

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腰に、ラグビーボールが挟まっている、、

練習は強度を高めつつ着々と進んでいった。

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タッキーさんはポスト前に立ったままじっと練習の進行を見ている。

、、、これはどういう事だろう⁉️いつの間に、、

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腰のラグビーボールが、、、増えてるぞ‼️

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♪ポケットを叩くと ビスケットが1つ

ポケットを叩くと ビスケットが2つ♪

昔娘が『おかあさんといっしょ』を見ながらこう歌っていた。でも、

ヤマハジャージのポケットは、ラグビーボールが入るほど大きくはない、、おそらく。

                        *  *   *

場内では早くもチーム紹介の映像が流れていた。

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磐田市は、静岡県西端。どの試合もそれなりの遠征になる。

それにしても

この日の選手紹介はなんだか耳慣れない。

『日本代表キャップ数』の紹介

があったからだ。代表戦でもないのになぜ?と思ったが、

ワイルドナイツには必要だったのだ。

故三遊亭円歌の創作落語『中沢家の人々』の一節を借りて言えば、

ワイルドナイツには『佃煮にするほど日本代表経験者がいる』のだから。

ホーム・ワイルドナイツの選手紹介は、アウェー・ヤマハへの威嚇にしか聞こえなかった。

とはいえ、この紹介ちょっと気になる、と思うのはワイルドナイツファンも同じだったらしい。

ホームアンドアウェー方式の伝統がない日本のラグビー。

良いプレーには拍手をしましょう、というアナウンスがある日本のラグビー。

いくら会場が熊谷だからといって、

《専らワイルドナイツ推し》

というパフォーマンスはまだ難しい。この放送にもどこか手探り感があった。

もちろん、好意的に見れば、今日まで日本代表の顔であった

五郎丸選手へのはなむけ

だったのかもしれない。もしかしたら今日が熊谷での最後のプレー。実際、彼の名前が呼ばれた時、会場は大きな拍手が沸き起こった。

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練習は終わり、選手スタッフは中に戻っていった。

この試合 この日だけの試合にあらず

ヤマハにとって難しい試合が始まろうとしていた。

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ここから先は、後日自宅で試合の録画を見ながら書き進めている。

3.前半

【試合経過】


パナソニック ワイルドナイツ 
竹山晃暉 トライ
1’
5-0
山沢拓也 ゴール成功
3’
7-0
ディラン・ライリー トライ
15’
12-0
山沢拓也 ゴール成功
16’
14-0
ハドレー・パークス トライ
28’
19-0
山沢拓也 ゴール成功
29’
21-0

35分                  
《五郎丸歩選手 サム・グリーン選手と交代》
37’
21-5
マロ・ツイタマ トライ
38’
21-5
サム・グリーン ゴール失敗
42’
21-10
マロ・ツイタマ トライ
43’
21-12
サム・グリーン ゴール成功
前半終了

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試合前半が始まった。

ノーホイッスルトライ、というらしい。

開始早々ワイルドナイツ山沢選手のキックから放たれたボールをツイタマ選手が取りおとす。落としたボールをそのまま《若き翼》竹山選手が拾って私達ヤマハファンの目の前を駆け抜けていった。

私はまだカメラの電源を入れていなかった。

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パナソニックは風上らしい。その後五郎丸選手もキックのキャッチに失敗した。

誰が入っても日本代表キャップのあるフロントローですからね

ワイルドナイツの強さを語る大西将太郎さんの解説は声が柔らかく聞きやすい。口跡のよい矢野武さんとのコンビで実況は進んでいく。

ヤマハボールのスクラムに場面は移る。

今年はマイボールスクラムの獲得率が低いヤマハ、、

矢野さんの解説が終わらぬうちに、ワイルドナイツペナルティー。ヤマハの一番山本選手は大きな雄叫びを何度も上げた。

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五郎丸選手のキックでワイルドナイツ陣内に入っていく。

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今年は、ヤマハ、キックの数少ないんですよね。ボールを回していくというスタイルで、、

大西さんの言葉を聞いても、ヤマハがスタイル変革の過渡期にあることがわかる。

しかし、ヤマハは攻めきれず、ワイルドナイツに陣地を挽回される。

屈強もしくは頑強

ワイルドナイツの選手は、もれなくこの形容詞がよくにあう。前から見ても横から見ても体格が一緒、といっても大袈裟にならない。速く強いタックルが、ジャッカルが、ヤマハを襲う。

そしてとにかくボールの回し方がうまい。オフロードあり、キックあり、巧みにヤマハのリズムを一歩二歩外してくる。

ヤマハ陣内でターンオーバーに成功したワイルドナイツは、ディラン・ライリー選手の変幻自在なランで二つ目のトライを決めた。

個人技もハンパないワイルドナイツ

オーストラリア出身の彼は日本代表候補らしい。

ここでテレビは、ワイルドナイツ監督ロビー・ディーンズさんを映し出した。

NZ出身61歳。元オーストラリア代表監督。ワイルドナイツを率いてなんと今季で7年目。

年齢といい、就任年数といい、日本のラグビー界に、今こういう日本人監督がなぜいないのだろう?日本人の最年長は、なんとまだ47歳のタッキーさんなのだ。

ヤマハもクワッガ・スミス選手を中心に攻めの形を作ろうとする。

ヤマハは、ボールを持っている選手も結構限られていて、クワッガスミス、ヘルウヴェ、両ウイング、マロツイタマとトゥイプロテゥ、この辺りがボールキャリー非常に多いので、彼らにどうボールを渡すかが大事になってきますね。

しかしボールはワイルドナイツにわたり、8番ベン・ガンター選手はヤマハ選手数人を引きちぎるように前進、オフロードでパス。何とかボールを奪い返したヤマハはタッチに逃れた。

ヤマハは本当に仕事分担がしっかりしている、ハッキリしているチームですよね。

ワイルドナイツはその逆らしい。『今のワイルドナイツ』だからこそできる戦術だと思うが。

その後、ボールを獲得したワイルドナイツは

堀江選手が、BK陣顔負けの見事なランの後オフロードパス、受けたハドレー・パークス選手はハンドオフでヤマハの選手を押し退けながら激走してトライ。

この時間のヤマハ選手は、先手先手を打つワイルドナイツの攻撃に防御がまるでついていけない。

3トライ目もあっという間の出来事だった。

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ここで選手交代のアナウンスが流れた。

五郎、ですか⁈

大西さん達は少々驚いたようだった。

五郎丸選手の右足太ももにはテーピングが見えた。

ボールを持っていない時の動きの幅ていうのがね、カバーできてると思いますし、彼が入ってさらに幅が、、

大西さんは、代わって入ったサム グリーン選手をそう評していた。単なるノックオンの判定にイライラと抗議の意思を見せるグリーン選手。昔はもっと感情の起伏が激しかったらしい。

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彼が入ってから、明らかにヤマハの攻撃のテンポは良くなった。ヤマハがゲームをコントロールしている、そんな時間が増えてきた。

ヤマハは、大物を入団させる、というよりも、チームに入って成長させる、傾向がありますからね。外国人だけでなく日本人も、、

ツイタマ選手の激しいタックルで選手が倒れている間、大西さんはサム・グリーン選手やツイタマ選手の経歴を披露しつつ、ヤマハの選手育成方針について触れていた。この日のヤマハCTBは2人とも日本人だった。

しかし、いい形で攻めていたヤマハは『瞬時』のジャッカルにあいボールを失う。

パナソニックの強みは、誰でもジャッカルできますし、強い、という、逆にヤマハは限られているんですよね

たしかに、この試合中少しでも隙を見せると、ワイルドナイツはボールを力で奪取してきた。

しかし、ヤマハはここで魅せる。

自陣深くに攻め込まれたヤマハは、ターンオーバーに成功、ここから白井→石塚選手を経て、ツイタマ→サム・グリーン選手と繋がる。倒される寸前サムグリーン選手の技ありオフロードパスでボールは再びツイタマ選手へ。

鮮やかに走り抜いてのトライ‼️

ウォーミングアップでメチャクチャ練習してましたけどね。

大西さん曰く、2人の見事な連携は練習の賜物らしい。気がつかなかった。

ヤマハ元気が出てきましたね

しかしワイルドナイツの防御は相変わらず厚い。大西さんはヤマハの攻撃スタイルに触れていた。

グランウドの幅を大きく使って相手、パナソニックのディフェンスを一人ずつ守る幅を広げて自分達で勝負していく、という、、

前半終了のホーンがなった。

大西さんが解説された通り、ヤマハは左右を大きく使いボールを動かしていく。もちろん、再三ジャッカルのピンチを凌ぎながら。

右から左に大きく動いたボールを、最後はツイタマ選手が余裕を持ってゴールラインを超えた。

今季計10トライ。この瞬間、ツイタマ選手は今季個人最多トライ選手となった。

26ー12

2トライ2ゴールで追いつける点差、攻撃リズムを掴みつつ、ワイルドナイツになんとか食いつく形で前半が終わった。

私は席を立ち通路に出た。

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ラグビーボールのモニュメントが立ち並ぶ奥には、若葉生い茂る緑の海が広がっていた。

4.後半

《試合経過》

ディラン・ライリー  トライ
6’
26-12
ヒーナンダニエル→ジョージ・クルーズ
6’
26-12
ヴァルアサエリ愛→平野翔平
6’
26-12
山沢拓也
8’
26-12
梶伊織→福岡堅樹
11’
26-12
山沢拓也 ゴール成功
13’
29-12

13’
29-12
山本幸輝→植木悠治
竹山晃暉 トライ
15’
34-12
クレイグ・ミラー→稲垣啓太
16’
34-12
布巻峻介→福井翔大
16’
34-12
山沢拓也 ゴール失敗
17’
34-12
ディラン・ライリー  トライ
18’
39-12
小山大輝→内田啓介
19’
39-12
山沢拓也 ゴール成功
19’
41-12
19’
41-12

吉沢文洋→矢富勇毅
19’
41-12
白井吾士矛→伊東力
20’
41-12
フレッド・ヒュートレル→パディ・バトラー
20’
41-12
粟田祥平→三浦駿平
堀江翔太→島根一磨
23’
41-12
野口竜司→松田力也
27’
41-12
30’
41-17
クワッガ・スミス トライ
31’
41-19
サム・グリーン ゴール成功
32’
41-19
平川隼也→江口晃平
ハドレー・パークス  トライ
36’
46-19
松田力也  ゴール成功
37’
48-19
福岡堅樹  トライ
39’
53-19
39’
53-19
山本幸輝→大塚健太
松田力也 ゴール成功
40’
55-19
ノーサイド

試合後半が始まった。

ヤマハの方が今シーズン前節終わった時点で77.3パーセント、マイボールキープ率、ちょっと不思議な感じがしますね。

矢野さんの口にしたデータに、ヤマハの不調の全てが集約されているようだった。

この、立方体の体、平野翔平登場です。178センチ120kg!

屈強なパナ選手の代表格か。ワイルドナイツはこの後次から次へと交代枠で大物を出してきた。

その後まもなく追加点を入れたワイルドナイツの走りは、パスを経る度加速する素晴らしいものだった。鮮やかにヤマハの防御を掻い潜るディラン・ライリー選手のコースどりも見事だった。

そして、今日のもう1人の主役が入ってきた。

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福岡堅樹選手

順天堂大学医学部一年生。

彼の勇姿はこれで見納めかもしれない。

観客席から一斉にカメラやスマホのシャッター音が聞こえた。

ところが、最初のプレーでトゥイプロテゥ選手と激突して倒れてしまう。

お医者さんになったら、間違いなく世界一足の速いお医者さんですよね

矢野さんのトークが妙にハマって面白い。

それにしても、防御から攻撃に転じたワイルドナイツの速さ、そして攻撃の多彩さに驚かされた。短いキック、長いパス、変則的なラン、次から次へと飛び出して、ヤマハを翻弄する。

後半15分竹山選手トライ。この時点で今日の勝負はついたと言っていい。この直後にもワイルドナイツはディラン・ライリー選手がトライを決めている。

福岡選手は脳震盪のチェックのため退いていた。

あっという間に41ー12 大差をつけられた。

リーグ戦なんですが、パナソニックは14点以上取られたことないんですよね。すごく失点の少ないチームですから。
パナソニックの取ったトライが35、一試合平均6トライ、失ったトライが合計7つ、1試合に1.2トライしか取られていない、という、、

破格の強さ。

苦笑するしかない。

ここでTVは無線で指示を送るタッキーさんの厳しい表情を映し出した。

矢富さんが少し肩を痛めたようだ。

ワイルドナイツは攻撃の手を緩めない。15番野口選手は体が強い。ヤマハの選手を振り解いて加速、この勢いをヤマハは止められない。そこからのパスは最後山沢選手につながり、余裕のトライ、かと思われたが、途中ノックオンがありノートライとなった。

ここで福岡選手が戻ってきた。しかも、たった今キレキレだった野口選手に代えて日本代表松田力也選手が入る。

ホントに《日本代表の佃煮》ができそうだ。

ヤマハは終盤ようやく反撃に転じた。

69分、ヤマハはペナルティーを得てスクラムを選ぶ。そしてクワッガ スミス選手が一気に走って押し込んだ。矢富選手からの技ありパスだった。

ゴールも成功41ー19

しかし、ワイルドナイツはここから2トライを決める。

まさに【技のデパート】

この前後、

ガンター選手と正面から衝突し地面に頭から倒れた平川選手は、手足を動かせるものの担架で運ばれていった。

やはり英語力ですよね。外国人の選手が納得しますよね。

平川選手の救護の間、解説のお二人はレフリーの久保さんについて話していた。今季は若手レフリーも積極的に試合に登用して育成しているらしい。その中で、W杯の笛も吹いた久保さんは、お若く見えるがベテランということになる。

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既に日本代表の稲垣選手が交代で入っていた。

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とにかく大きい。こんなに背が高く体格のいい方だったとは。日本人としては規格外に近い。

ゲームは終始ヤマハ陣内で攻防が繰り広げられた。

壮絶なボールの奪取戦はワイルドナイツが勝った。

ここでツイタマ選手が足を痛め退場する。

ワイルドナイツ最後のトライは、ヤマハ陣内近くでのボール奪取からだった。一度はノートライになったものの、その後のスクラムから最後は福岡選手がトライ。

松田選手がゴールを決めて試合は終わった。

55ー19

もっとね、もっとできる気がしますが。いい時間帯ね、すごくヤマハらしいアタックできてましたよね。その時間帯をどれだけ長くするか。そのためにもセットピース、セットプレー、自分たちの強み活かせる状況作りたいですね。

大西さんのヤマハに対する講評は、多くのファン同様、その覚醒を待つもどかしさにあふれていた。

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               *  *   *

天気もいいし歩いて行こうか。

夫は、余程行きの渋滞が疲れたのだろう。帰りは

スクマムロード 3.6km   徒歩50分

という、およそ歩く距離でも時間でもない道のりを歩いて熊谷駅に向かうことになった。

日差しは相変わらず強いが、時折吹く風は涼しく心地よい。

『あら、これライラック?珍しい。綺麗ね。』

後ろでご夫人の声が聞こえた。私は、この花の名を知らない。たしかに、咲き誇る紫色の花々は、初夏のスクマムロードに、爽やかな彩りを添えていた。

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                    *    *     *

翌日、ヤマハ発動機ジュビロ公式HPに掲載されたタッキーさんのコメントは実に潔くあっさりとしていた。

■堀川監督
今日は素晴らしいスタジアムで天候もよく、
多くの皆様の前でラグビーができたことに感謝したいと思います。
試合の内容は完敗です。自分たちのチャンスをチャンスにできず、
自分たちのミスから、やってはいけないことを自らやってしまったことが
今日の敗因です。
厳しい結果になりましたが、次のトーナメントに向けて、
もう一度自分たちに何か大切なのかを
選手たちとコミュニケーションをとって準備していきたいと思います。

この翌日、ヤマハBチームはワイルドナイツBチームと試合に臨み勝利している。

その結果とも合わせて、4月24日に向けた準備が既に始まっているだろう。

相手はレッドカンファレンス3位 クボタスピアーズ

勝てばエコパスタジアムが、ヤマハ戦士を待っている。


〜あとがき〜

『あっちの改札出れば八重洲だから。』そう言って立ち去った夫。

この実にいい加減な道案内のせいで、私と娘は『東海道新幹線乗り換え口』の前で途方に暮れていました。どう見ても、自動改札の向こうには新幹線ホームへのエスカレーターしか見えません。

とりあえず、パパの出た改札まで行こうか。

そう話しかけた時です。

『ママ、あの人達、あの人達‼️』

娘は何を驚いているのか、顔を上げた先に見えたのは、ネイビーのポロシャツを着た屈強な青年たちの列。

私達がスクマムロードを息絶え絶えに歩いている間、ヤマハ選手の皆さんは身支度を整え駅に向かい、同じ新幹線に乗っていたのです。

遠征とはこんなにハードなものなのか、と驚くばかりでした。呆然と立ち尽くしていた私と娘を、選手の皆さんは奇妙に思ったかもしれません。

こんなとき、『お疲れ様でした』と声をかけられたらどんなによかったか。でも今はそれが出来ません。このご時世、それは声ではなく、『飛沫』だからです。

江口選手と思われる方に軽く頭を下げてその場を去りました。精算窓口で、五郎丸選手らしき方が精算をされていました。

五郎丸さんもSuicaの精算とかするんだ

当たり前のことなのに当たり前に見えない。W杯2015からこの方が背負ってきたものの重さを改めて感じた光景でもありました。

それにしても、、

はるばる熊谷までやって来て、タッキーさんが見つからない😨というスリリングな事態になろうとは。

しかも、やっと見つけたタッキーさんは『腰にボールが挟まって、しかもボールが増えていく』というあまりにホラーな展開😨今回も秩父宮編に続き思いがけずコミカルな序章になってしまいました。

次の舞台は江戸川。サンゴリアス、ヴェルブリッツ相手に死闘を演じたスピアーズとの一戦。

面白い戦いになりそうです。

勝てばエコパが待っている、一戦必勝のトーナメント戦、必ず現地で応援したいと思っています。

タッキーさん、遠征続きでお疲れだったでしょう。くれぐれもご自愛ください。

熊谷は もう一度訪れたい 実に美しい聖地でした。


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