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『覇者』歩みを止めず『体育の伝道者』前を向け(後編)〜関東大学ラグビー早稲田対日体大を観ながら〜

1.覇者は勢いを止めず

後半開始に合わせて、両校3人ずつの選手交代が発表された。当然のことながら、早稲田の3人はレギュラーを奪取するチャンスだ。日体大の3人は試合の流れを変えられるだろうか。

試合後半40分は、日体大のキックから始まった。

早稲田はボールをキャッチ、ハイパントを上げる。それを日大がキャッチして前進、右へそして大きく左へ、しかし早稲田の防御に苦しみキックで打開を図る。早稲田はボールをキャッチすると右へ右へ、そして左へ。左にはスペースがある。

早稲田11番が走りこみ、今度は右へ。ここでキックを上げるが日体大キャッチ。

しかし、日体大にハイタックルのペナルティー。早稲田はボールを出して、後半早々、早くも日体大陣内深くに。

早稲田ボールのラインアウト。早稲田はモールで押し込んでいく。懸命にこらえる日体大。

と、ボールは早稲田9番から右へパス、受け取った17番はそのまま走り込んだ。

43分 早稲田トライ  コンバージョン成功

早稲田対日体大 42対0

後半も早稲田は覇者たる姿を見せそうだ。

早稲田のリスタートのキックを早稲田がキャッチ。左方向にキックするが今度は日体大がキャッチして右へとボールを進めていく。日体大はここで前方に軽く蹴り出す。早稲田がキャッチし再びキック。しかし、日体大は腕からボールがこぼれてしまう。

日体大ノックオンで、早稲田ポールのスクラムに。

あのキックもったいなかった。解説の方も半ばため息をついていらした。

なかなかスクラムのタイミングは合わない。ようやく組めたスクラムから、ボールは右へ右へと早稲田の選手に運ばれていく。

早稲田の選手がパスを受け取ったその時、日体大の強いタックルが襲う。しかし、寸前ボールは早稲田14番に渡っていた。

日体大は諦めない。14番の腕にあるボールに手をかけ奪取する。日体大はキックで自陣からボールを出した。

早稲田ボールのラインアウト

ボールをキャッチした早稲田は左へ攻撃を進める。ここで、またも日体大がボールを奪取!しかし、早稲田の再反撃にあう。

日体大 ノットリリースザボール のペナルティー

早稲田は再び大きくボールを蹴り出して、日体大陣内に深く入ってきた。早稲田ボールのラインアウト

ボールをキャッチした後、早稲田はモールを組んで前進を始めたが、その時、

早稲田9番は防御手薄な左側に柔らかくボールを蹴り込んだ。同時に走り込んでゴールライン内で待ち構えた早稲田12番は、そのままボールを押さえた。

49分 早稲田トライ コンバージョン成功

早稲田対日体大 49対0

事前に決めたサインプレーだったのか。その連携は滑らかで芸術的ですらあった。

リスタートの日体大のキックをキャッチした早稲田は、勢いを増してボールを左に動かす。早稲田8番が抜け出し9番→10番と素早くボールは渡る。ここで日体大はハイタックルのペナルティー。

アドバンテージを確認した早稲田10番はボールを前方に蹴り出した。しかし功を奏さず。

早稲田はボールを出し、日体大陣内でラインアウト。

ボールをキャッチした早稲田はモールを組むが、日体大はボールに絡み奪取。左へ長いパスを送る。しかし、ここでキックしたボールを早稲田がキャッチ、早稲田10番から左へ右へと前進しながら日体大を揺さぶる。と、またもや早稲田の選手はボールに絡まれる。早稲田ペナルティー。

日体大の、ヴァイレアくんを始めとした『個の身体の強さ』が徐々に発揮されてきた。

日体大のキックしたボールは早稲田がキャッチ。

ここから早稲田は左へ右へ縦横無尽に、当たり、走り、日体大を翻弄する。細かいステップも駆使し、遂に大外右から左へ、受け取った早稲田17番は4番にパス、そのまま走り抜けた。

57分 早稲田トライ コンバージョン成功

早稲田対日体大 56-0

残り時間はあと約20分

2.伝道者達は諦めない

リスタートの日体大のキックを早稲田は取りこぼしてしまう。

ボールを獲得した日体大は右へ力強く前進しながらボールを運んでいく。左へ右へ、そしてスペースが空いている左へボールはパスされた。しかし、日体大の選手は追いつかない。何とか奪取して早稲田に絡まれつつも右へ右へ。『強い個の力』は輝きを放ち始めた。

日体大はキックで打開を図り、8番ヴァイレアくんがキャッチ、左大外から右へ大きくボールを飛ばして日体大23番へ。

ゴールラインは目前だ!日体大チャンス!

23番は左の15番に鋭くパス、前は空いている!

しかし、彼は落としてしまった。

日体大ペナルティー。

早稲田は大きく蹴り出して自陣を脱出。ボールもキャッチし前進を図るが、ここで早稲田がスローフォワードのペナルティー。

日体大ボールのスクラム。スクラム最後尾には8番ヴァイレアくんがいる。

彼は素早くボールを受け取ると力強く前方に走り込んだ。そしてボールを左へ。左は空いている!

しかし、左大外にいた選手はボールキャッチに手間取り、その間に早稲田が迫っていた。彼はボールごと外に押し出されてしまった。

早稲田ボールとなり、早稲田はキックで自陣脱出。ボールをキャッチした日体大は右へと反撃を開始するが、ここでまたもペナルティー。ボールは再び早稲田のものとなった。

これもサインプレーだったのだろうか。

早稲田はすぐに攻撃再開、前に緩く蹴り出したボールを待っていた早稲田11番がキャッチ、そのまま余裕を持って走り抜けた。

64分 早稲田トライ コンバージョン成功

早稲田対日体大 63-0

日体大よ、このまま終わってはいけないぞ!

私も含めた観客の誰もが、ブルー×ネイビーのジャージに声にならない激励を送っていた。

リスタートの日体大のキック、ボールをキャッチした早稲田は左へ、大きく左へ攻撃を仕掛ける。そして、大小のパスを織り交ぜて右へ左へ自在にボールをコントロールした。早稲田2番の華麗なステップで大きく前進、キックしたボールはしかし日体大8番がキャッチ。左前方へ、柔らかなステップで走り込む。

ここから日体大は速い攻撃で、左へ、右へ、そして日体大5番が抜け出し前方へ真っ直ぐ駆け上がった。

早稲田はたまらずペナルティー。

日体大ボールのラインアウト

この日の日体大はラインアウト獲得数わずか3、しかも一回しかボールを獲得できていない。

早稲田陣内ゴールライン手前

日体大、チャンスを逃すな!!

日体大は、ラインアウトのボールを無事キャッチ。まずFW陣が当たって前進を図る。這うようにジリジリと進む日体大。

ここで、ボールは日体大8番ヴァイレアくんに。

彼は前方に駆け出し、早稲田9番を手で振り払った。そして、そのままゴールラインに飛び込んだ。

71分 遂に日体大トライ!コンバージョンは失敗

早稲田対日体大 63-5

トライを決めたヴァイレア君の表情はほとんど動かなかった。眉間に微かな皺を寄せたその精悍な面差しは

WWEの元スーパースター『ザ・ロック』に似ていた。

3.安堵と落胆と、そしてノーサイド

熊谷が、どこか安堵のため息に満たされたようだった。

リスタートの早稲田のキックを日体大は獲得できず早稲田がボールを支配する。

速いテンポで、右右、左左、とボールは前進していく。左は空いていた、が、ここで早稲田はボールを落としてしまう。

日体大ボールのスクラム、またも噛み合わない中ようやくスクラムを組む。ボールはまた8番に。

8番は、力強い足取りで前へ、そして左へパス。左へ左へ、ボールは勢いよく鋭く選手に繋がれていく。そして今度は右へ右へ。

ここで早稲田ペナルティー。

日体大はボールを出して深く敵陣内へ。またもチャンスだ!

日体大ボールのラインアウト

しかし、ここで日体大痛恨、ノットストレートのペナルティー

早稲田ボールのスクラムに変わり、早稲田は自陣を脱出する。

そして、早稲田ボールのラインアウト

選手も気合を入れ直したのか、素早く左へ左へ、選手は体をスピンさせながらボールをパスしていく。そして、右に方向を変え、走り込んできた早稲田19番にパス、しかしボールに絡まれ

早稲田ペナルティー

この後日体大は反撃を試みるがすぐにノックオン。

早稲田ボールのスクラムは、日体大にペナルティーの判定。早稲田は敵陣内に深く侵入してきた。

早稲田ボールのラインアウト

ボールをキャッチした早稲田はモールを組んで前進、そしてボールは右へ右へ、早稲田10番の手に。彼は体を反転させながら細かいステップで駆け上がりそのまま飛び込んだ。

早稲田トライ コンバージョンも成功

早稲田対日体大 70-5

ここでノーサイドの笛が鳴った。

早稲田の選手たちは、一様に安堵の笑みを浮かべていた。

日体大の選手たちは、整列するまでほとんど表情は動かなかった。

整列し、互いの健闘を讃えあった後、両者は入り混じって軽い握手を交わしていた。

日体大の選手達もようやく顔を綻ばせた。

奮闘したヴァイレアくんも晴れやかな笑顔を見せていた。それは眉間に皺寄せ虚空を見つめる『ザ・ロック』ではなく、どこにでもいる爽やかな青年の顔だった。









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