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【生理中は体育の授業、休んでたよね?】

「私には、そんな経験はないですね」

「私たちの学生時代には、そうした人はいなかったと思いますよ」

あぁ、また時代の差なのか。いや、「それはお前の勝手な思い込みに外ならない」と同世代の男性諸氏からも叱責を受けるのかもしれない。しかし、ボクの記憶では、体育の時間、体操服に着替えることなく授業を見学している女子が毎時間少なからずいた・・・気がする。女子たちは、こうして体育の授業を受けることが出来ない“時期”があるのだなと勝手に思っていた。
そこは、何も聞かず「あぁそうか」と理解ある男子でいることがモテる秘訣だと当時は思っていた。
しかし、違うのか。

「月経中であっても、運動しても問題ないと言われています」

「月経中は、子宮収縮を促すため血管が収縮します。そのため血流がちょっと悪くなってしまったりします。冷えてしまうとより悪くなってしまうので、そう言った意味からすると、運動をして血液循環を促すと言うのはいいと思います。気分転換にもなるし」

そう答えてくれたのは「出産のまえもあとも全ての女性のためのピラティススタジオ・maemo atomo studio」の西山夏実さんと井上麻里子さん。
ともに助産師でもあり、医学的に妊娠中の運動について研究を行なっている。生理中は、運動は控えるべきものだと思っていたボクの思い込みを一撃で砕く。

(写真左:井上麻里子さん 右:西山夏実さん)

「体育の授業を休むとしたら、生理痛の重い人か、貧血予防の意味合いがあったのかも。しかし、正常な女性であれば生理の出血ぐらいで貧血状態になるかと言うと、そんなに多いケースとは思えないし・・・」

「もちろん一日目二日目とかで生理が重い時に無理して動く必要はないんですけど、そうでないときには、動いた方がいいかなと思いますね」

そうなのか。生理中は運動してはダメと言うのはオジサンの思い込みだったのか?と尋ねると、アハハハと笑って、「そうですね!」と答える。
あぁ、どこでどう間違ったのだろうか。
生理中にも運動が必要な理由を、もう少し詳しく解説してくれた。

「生理中はプロスタグランジンと言うホルモンが出て子宮収縮を促すんですよね、子宮内膜の経血排出を促すために。それが、血管を収縮させるので血液循環が悪くなるんです。なので適度な運動が必要になるわけです。特に、生理前のPMSには運動が重要と言われています。経血の排出を促す必要があるのに加えて、メンタル不調に備えるには副交感神経を優位にしておいたほうがいいと言われています。」

なるほど。では、どんな運動がよいのだろう?

「ガツガツ動く運動ではなく、緩めてあげる、リラックスさせるような運動が良いのではと思われます。締める運動ではなく、ストレッチ系の運動、例えば骨盤底筋を緩めるような動きが良いのではないでしょうか」

なるほど。確かにイライラが収まりそうだ。
一方、生理後は力強い運動がむいていると言う。

「生理後7日前後の卵胞期には、ウェイトトレーニングに向いている時期と言われます。と言うのもこの時期は女性ホルモンの一つエストロゲンの分泌量が増し、筋肉を作るのに向いているからです」

エストロゲンには、筋たんぱくの分解を抑える役割があると言う。そのため更年期に入りエストロゲンの分泌が減ると筋たんぱくの分解が進み、そのため筋力が著しく低下すると聞く。なるほど。ならば、エストロゲンの分泌が活発な時に筋トレをしておくと言うのは理にかなっているわけだ。
月経周期と運動の関係面白いじゃないか。いずれにせよ、生理中は運動を控えるように、と言う話は出て来なかった。
そう言えば・・・。
実は、このスタジオでの取材は二度目。一回目は、このスタジオ開設の狙いを聞いた。彼女たちは助産師として多くの出産に立ち会ってこられたのだけれど、その経験から妊婦も適度な運動が必要と実感され、このピラティスのスタジオを開いたとのことだった。実際、今言われているのは妊娠中も週に150分以上、すなわち一日に20分から30分程度、早歩きやこうしたピラティスなどの中程度の運動が必要だと言うことらしい。妊婦でそうであるなら、生理中に運動を控える必要など確かにないであろう。
もっと早く気づけよ、自分!
「生理中、運動をしてはならない」と言うのは、完全なる思い違いか記憶間違いであった。いやはや。しかし、今一度、念のために尋ねる。
「学生時代の運動部での部活くらいなら、生理でもあっても問題はないんですよね?」

「強豪校とかでなく、普通の部活レベルであれば全然問題ないと思います。生理中に無理して運動する必要はないとは思いますが、正常な月経で体調も問題ないのであれば大丈夫ですよ」

しかし、この後、一拍置いてから西山さんは「但し」と続けられた。
「但し?」

「そう、但し、アスリートなど激しい運動を行う際には気をつけないといけないこともあります」

アスリートは別?さて、その訳は?

「強度の高い運動をすると生理が止まっちゃう、いわゆる無月経になる可能性があります。そうなると骨粗しょう症のリスクが高まり、疲労骨折も起こりやすくなります。未だに月経がないほうがいいと思っている選手やコーチもいます。それどころか、月経で練習を休むのは根性で負けていると言う指導する人もいるくらいです。そこは改善していかねばならないでしょうね。そうでないと、後々不妊の原因にもなりかねないのですから」

なるほど。新たな取材テーマを提示された気がした。
さて、最後に改めて職場で、特に男性上司に向かって伝えておきたいことはないかと聞いた。

「月経のサイクルって、その時期によってホルモンのバランスや量も違いますし、身体の変化の仕方も違う。それは分かっておいてもらっていたほうがいいと思います。メンタルの不調もあるし。」

そして、運動に関しては・・・

「体調に問題がなければ動いてもいいし、動いた方がいい場合もある。ただ仕事面で言うと、月経の前とかは集中力が落ちる、あるいは落ちやすくなるので、創造的な仕事がやりにくい。私はそうです。0や1から何かを産み出していくと言うよりかは、事務作業の方が向いていたりしますね。海外のアスリートの話にはなりますが、月経周期をアプリケーションなどで管理して、その人の月経周期に合わせたアプローチとかトレーニングを組んだりします。日常生活の中でそうした管理は難しいかもしれませんが、時期に応じてそうしたことがあることは、男女にかかわらず知っておいて欲しいですね。女性も意外と知らない人が多いので、知識として持っておくことは大事かと思います。」

やはり、知ることが重要なのだ。
しかし、西山さんも井上さんも、揃ってこう付け加えた。

「過度に心配されると言うのも違うのよね」

ですよね。それは取材を重ねるにつれ理解、とまではいかないかもしれないが、それは違うんだろうなと感じ始めた。
まずはクールに知識を積み上げていくべきなんだろうなと思った。

参考:maemo atomo studio
maemo atomo studio|出産のまえもあとも助産師・理学療法士によるピラティススタジオ (maemo-atomo-studio.com)

 

 

 

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